天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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仕事復帰

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「だよなー。でもムーって毛並みがいいからつい触りたくなるんだよ」

「奏太くんや、お家の人は撫で撫でしてくれるの気持ちいいからいいの。背中とか頭とかなら。なんでみんな尻尾つかむのか分かんない!」

「カットする時と洗う時は俺も掴むじゃん」

「それは別なのー!」

「ムーさんは姫様にはあまり触られていないようですが?」

「そんな事ないよ?結月ちゃんいきなり僕のお手々掴むし、首もって移動するし……」

「それダメじゃん」

「僕も大変なんだからね?毎日お手伝いもしてるのに、たまにプリン買うの忘れたって変なお薬飲まされるし」

「薬?」

「えっとね、天満茶って言う便秘に効くお薬だって。びよー?だいえ……何とかのお茶」

「飲んだんだ」

「お腹痛くて大変だったんだ。ずっとおトイレの前にいたこともあるんだよ?」

それは可愛そうと思いつつも、犬にまで実験台にしてしまう結月にはやめてもらわないといけない。
今度話しておくねと約束して、首にリードをつける。

「ムー、着いたから降りるけど、ぷるぷるプリンのために頑張れよ」と言うと、元気な返事が返ってきた。

「おまたせしました」と先についていた撮影の関係者に言い、小型犬用のドッグランまで歩いていく。

着いてからは可愛い犬用の洋服に着替えて、遊んでおいでとムーを離す。

いってきまーす!と元気に走り出すが、写真を撮るカメラマンは特別に中に入れてもらったのだろう。
ムーを追いかけながらもうまく写真を撮っているが、足元には他の犬が群がって来ていたので、中々早くは動けないでいた。

3着ほど着替え、最後にお散歩用品を身につけて、歩いたり座ったりとポーズをとり、撮影が終了した途端、いつものドッグカフェまで走って行ってしまった。

「あ、ムー待て!」

「良いですよ。撮影も終わりましたし、あのカフェの商品の宣伝用でもありましたから」

「え?」

「あそこの商品のプリンありますよね?カフェ的には小さいのですが、ドッグランとカフェを全国にチェーン展開しているんですよ。最近ブームですし」

「へぇ。知らなかったです。ムーはいつもあそこでかぼちゃプリン食べるのが好きで……」

「それも聞いてますよ。早速もらってるみたいですね!これからは宅配でご自宅まで、毎月送ってくれるそうですよ?後、ここに来た時には無料だと私達も聞いてます」

「何だか悪い気がするけど……」

「ワンチャンの報酬はこのような形が結構多いのですが、通販雑誌にも載るのでムーくんだけでもかなりの収入になると思います」

「ノア知ってた?」

「私も初耳です。姫様の笑い声がここまで響いてくるような気さえするのですが……」

「俺もだよ。ムーは喜んでるからいいけど」

そのままお店に行ってお礼を言うと、お土産だと袋いっぱいのプリンと野菜ボーロをくれた。

ムーも店員さんの顔を憶えているのか、尻尾をふりふりして愛想良くしている。

「良いんですか?こんなに」

「よく来てくれてますし、今日頑張って走ってるの見えてましたよ!この子はお利口さんですね」と店員のお姉さんに頭を撫でられて御機嫌だった。
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