天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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天幻界の血

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「姫は知らなかったようですが?」

「入れ違いだよ。俺が家にいるときに親父から連絡があったんだ。それで、言わないとと思ってたんだけど、すっかり忘れてしまって今に至る」

「やはり馬鹿です」

「兄さん、それで何か困ることでも?」

「ルーカス様が色気が出てきたと言っていたでしょう?あまり言いたくないのですが、リアムさんを思い出しませんか?」

「リアムだと?」

「ええ、ノアは会ったことは無いのでわからないと思うのですが、人や動物に好かれ、誰にでも優しい所、王の血が濃くなったからか分かりませんが、そこに色気が出たら……ルーカス様お分かりですよね?」

「思い出したくもないが、にっこり微笑めばみんな素直に言うことは聞くし。あれを天使の微笑みって言うんだと思ったことは認めるが……だが、俺は認めんぞ?奏太があんなリアムそっくりになるのは!」

「兄さん、各界にも似たのはありますよね?魔界では有名なルーカス様の魅惑の微笑み。どのようなものでも従えてしまう魔の微笑みと聞きますが。姫様に至ってはあの笑い方ですのでなんと言えば良いのか分かりませんが」

「破壊の大笑いと思ってますよ?あの奇声だけは耳栓していても来るんですよ。頭に……姫様は幻界では笑うことは殆ど無かったのです。変な大笑いはしていましたが。幻王様に一度お聞きしたことがあるのですが」

またみんな湯に浸かり、ユーリの先の言葉をまっている。

「あの、そんなに見られましても」

「早く!俺だって知らないんだから」

「深淵の微笑みと」

「魔界じゃないんだから……」

「でもルーカス様、姫様は魔界とのハーフですし、魔力の底知れ無さから深淵とも言えるのでは?」

「まぁな。でも幻界だぞ?もっと言い方ってものがあるだろう?」

「どうも、幼き頃より一人で過ごされることがお好きだったようで、大図書館に入り浸っているか、部屋で本を読んだり研究していることが多く、身の回りの世話をするもの以外はあまり側にも寄せなかったのだとか。そして高魔力でしたので、周りが余計に恐れ、孤独の深淵との名から取られたのだとか」

「そんなことがあったのですか」

「魔界の血のが濃いと言うことでしょうか?」

「ノアはどうみますか?同じ幻界のものとして」

「私は、姫様は口は悪いですが、人に優しい方だと思います」

「そうなのです。そのような名が付けられても、その微笑みは怪我をした兵士達をも癒したと聞いています」

「では、やはり噂は本当だったのですね?」

「なんだニコル?噂って」

「王子のが付き合いが長いのに知らないんですか?姫様の膨大な魔力で各施設の病人が一瞬で治ってしまった話ですよ!何でもお見舞いにと各地を回られていた時に、笑わないわけにもいかず、挨拶程度で微笑んだらみんな回復したとか」
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