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#9 温泉

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「ただいま。リヒトさんは?」
「まだ起きそうにない。タオルは変えたんだけど」
「貰えるだけ貰って来たけど、アギルさんが帰って来るまで何もできないな」
「これも、俺の……せいなのかな」
「何言ってるんだ! そんな訳ないだろう! お前が気にすることはない!」
 テオはそう言ってくれるが、話を聞いて温泉まで来た以上絶対ではなくとも少しは責任を感じる。
 しかも、リヒトはテオの元上司。俺より心配だろうに、気を使わせて悪いなとか、あの日古書堂にもし自分が立ち入らなかったら等、悪い方悪い方へと考えてしまう。
 コンコン——
 そっと開けられた襖からアギルが顔を出し、「どんな感じですか?」と聞かれたので、テオが医者から聞いた事をそのまま伝え、更にうじうじと悩んでいる俺のことまで事細かに話してしまう。
 そこは黙っててくれよ!
「まず、倒れていた者たちは死神協会でちゃんと身元確認できました。なので病院に連れて行ってもらいました。問題は派遣された三人は本当にこちらへの派遣要請できたそうでして……。改めて、特殊警邏隊の中で僕の知っている信頼のできる人六名に来てもらいました」
「六人も?」
「せっかく悠一君とテオ君を温泉に連れて来たんですから、せめてお風呂などは楽しんでもらいたかったので。二人で行動づるときに二名付けます。外に三名。部屋に一名です」
「部屋の方少なくないっすか?」
 テオの言うように怪我をしているリヒトがいる以上ここに一名は不安すぎる。その事を言うと、「僕がいるじゃないですかー」と相変わらずのアギル節になり、少し気持ちが楽になる。
 普段は適当な人だなと思っていたのだが、今日の出来事で結構アギルを見直した。 
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