妖古書堂のグルメな店主

浅井 ことは

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#9 温泉

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「マルコさんの分は?」
「自分の事は気にしないでください。任務中は携帯食料を持って来てますので」
 

でも、折角兄弟が揃ったんだからと思っていると、テオも任務中は仕方がないというので、席に着く。
目の前にはお造りに鍋。鍋は肉のしゃぶしゃぶのようで、横にお肉と野菜が用意され、三つ並べられた小鉢には、煮物や海老など色とりどりに飾られていて食べるのが勿体ないくらいだ。

「こちらは死海でとれた死魔海老の焼き物でございます。まだ生きておりますので、跳ねる場合がありますのでお気を付けください」
 

見た目は普通の海老。
色がちょっと紫がかっていてはいるが、伊勢海老に似ているから大丈夫だろう。

「さぁさぁ、食べましょうかぁー」

「ちょっと待て! リヒトさんのご飯どうするんだよ!」

「マルコさーん、おねがいしますぅ」
 
  それだけ言うと、仲居さんが鍋に火をつけてくれたので、お刺身から食べる。

「美味い。身がプリプリしてる」

「ですよねぇ。僕、ここのお刺身好きなんですよぉ。この煮物なんかももう僕好みで……あ、海老。跳ねてますよぉー。テオ君も気にせずに食べてください」
 

  気にしないわけではないが、食べた側から片付けられ、また新しい料理が出てくるので、食べるのに必死。でも時折振り向くと、マルコが側でお粥をお椀によそい、蓮華でリヒトに食べさせていたので安心し、焼けてきた海老の殻を剥いていく。

 先に器用に剥いて、豪快に口に入れたアギルは旅館の中で、しかも仲居さんがいる前で、「ふわぁぁぁぁー、で・り・しゃー・すっ!」とほっぺたを赤くしながらご満悦。

 結構恥ずかしいんだが、仲居さんたちも慣れているのか、ニコニコとしているだけ。

 初めての旅行なのにこれでいいのか!

 その日の夜遅く、マルコと同じグレーのコートを着た人が数人部屋に来て、リヒトを寝かせていた布団事宙に浮かして運んでいく。

 心配そうなテオに、「大丈夫です。迎えに来たのは王宮の者たちですし、すぐに王族医師に診せてくれますから安心してください」

 明日はここを出発するからもう寝なさいと言われ布団に入るが、ウトウトとしただけで朝を迎えてしまった。

 なのに、朝風呂に朝ごはんと最後まで堪能していたのはアギル。
 
 俺とテオが気にしているからあえて元気に振舞って、気にしないようにさせてくれているんだと思いたかったが、朝っぱらからのデリシャスと言う咆哮に、きっとご飯の事しか考えていないと考えを改め、来た道とは違いまともな舗装のしてある道を、旅館の人に車で送ってもらう事になった。

「車で来れるのに、何であんな道で行かなきゃいけなかったんだよ」

「近道だったんですぅー」
車で三時間ほどで街に着き、一旦アギルの自宅……王様の住む家の方へ行くこととなった。
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