妖古書堂のグルメな店主

＃１３ 狭間の世界

．

「ルイ、ミラ。死の偽装に魂の集団化。何故そんなことをしたんですか。罪の重さは分かりますよねぇ。しかも、人である悠一君の誘拐にも疑問があります」

「ハハッ。兄上ともあろう人が何故と聞くの？　なんでって今までの死神界に疑問が山ほどあったからだよ」

「私たちは任務中にたまたまここを見つけたの。そして調べるうちにこの場所では攻撃力も上がる。意思を持つ者の意識もはっきりとして良い戦力として育てる事が出来ると分かったのよ。報告しようと思ったわ。でも、後継者がアギル兄様と聞いて、私たちは代替わりの時に堕落した王なんかの下で命を預けたくなかった。それならば私達が死神界の王になればいいって考えたの。なのに今頃総司令官？　ふざけるんじゃないわよ」

　感情的に一気に話したミラの眼には少し涙が溜まっていたが、アギルの体たらくぶりは知っている。でも、総司令としてみんなを見ていたアギルは凛としていて、実力も確か。それがまた悔しいのだろうが、俺を攫った理由を話せ！

「まぁ、確かに僕には王としての資質は無いかもしれません。ですが、総司令となり部隊を率いる者として、隊員一人一人の命は僕が預かっています。その責任を負う覚悟で今回来ました。王はまだ健在です。なので正当後継者が変わる場合も……まさか！」

「この狭間の地の王に三住悠一。彼を選んだんだよ。こちらのスパイを入れて探ってたんだ。彼はたまたま死神の能力を持ち、たまたま三界の中心にいたから、こちらの空気でも会う体質って事はわかってた。ここで提案。その子僕たちに頂戴」

「彼は人です。そして、僕のお店の従業員です」

　パチンと指が鳴ったと思ったら、ホルン達がさらに囲みこみ、横にいたはずのテオがリングの武器で二人を縛り上げている。

「いつの間に……」

「彼は俊敏ですから。それより三住さん」

　それこそいつの間に？　と聞きそうになったが、もう何を驚いていいのかさえ分からない。