下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

文字の大きさ
16 / 102
学校

.

しおりを挟む
入った病室は二人部屋だったが、隣には誰もいなかったので大人数が来ても入れたが、来たのが担任と校長、三人の母親と那智に栞。

「まさか、本当にこんな大怪我だとは……」一人の上品そうな母親が首謀者の親ではないことは、顔も違うし泣いているのですぐにわかった。

ツンとして、態度の大きい人が首謀者の親だろうと思い、大人達の話を黙って聞いておくことにした。

「それで医者はなんと?」と校長が聞くので、隆弘が「暴行による内蔵の損傷に近い状態です」

嘘だ!と思いながら、淡々と話す隆弘は弁護士を目指しているだけあって口が上手い。

「お話した通り、肋骨・左腕・右膝に肩甲骨等骨折とヒビが入っています。この状態では日常生活にも支障が出ますし、今後リハビリも必要とのことです。それでもお子様は何もしていないと言われますか?」と那智が言うと、首謀者の母親が「証拠がないでしょう?」と平然と言う。

「校長、私は診断書をもって傷害事件として提出してきます。学校でもお話した通り、この方々と話してもきりがありませんので」と那智が出て行ってしまう。

コソッと紫狐に付いて行って後で教えてと言い、オロオロする栞に飲み物が欲しいと頼んで、先生達の話を聞く。

「早乙女君はまずは怪我をしっかり治すように。学校はそれからでもいいから」

「あの、僕中間テスト受けたいんですけど」

「何言ってるんだね!大怪我じゃないか」

「会議室でも何処でもいいです」

「なんとかお願いできませんか?」と隆弘が助け舟を出してくれると「職員会議で決まり次第連絡します」と校長が折れてくれ、三人の母親たちは早く帰りたいとソワソワしだしていた。

そこに担当の先生が入ってきて、腹部など診察を受け、点滴をつけられる。

「食事は少しずつから始めましょう。まだ熱があるので、大勢での面会は控えてください」そう言って出ていくと、大袈裟だわと母親のうち二人が言い出した。

担任は黙ったままで校長が取り成していたが、「後で警察から連絡が行くと思うので、今日はもうお引き取り願えますか?」と言ってくれた。

その後、隆弘が栞を連れて着替えを取りに行ってくれている間に少し眠り、起きるともう夕方だった。

「起こしちゃった?」

「いえ……栞さんだけ?」

「隆弘君と交代で、堀内さんが乗せて来てくれたの。今飲み物買いに行ってくれてるわ」

「また入院て、僕迷惑ばかりかけてごめんなさい」

「前は病気、今回はあっちが悪いのよ。だから気にしないで」

「そうだぞ?」

「堀内さん」

「聞いた時は驚いたよ。話せるってことは元気な証拠。はい、水だけど口から摂取した方がいいから」

「ありがとうございます。仕事は?」

「落ち着いてるよ。時間も結構余裕が出来たし、定期的に休みも決まりそうなんだ」

「良かったですね」

「まあね。話は聞いたけど、食べれるようになって熱が引いたら退院出来るって」

「何の位かかるのかな?」

「テストの心配はいらないと思うよ?確か、そう言った措置があるはずだから」

「インフルエンザとかみたいに?」

「そう。長期入院じゃなければだけど。僕もインフルエンザが治ってから、会議室でテスト受けたことがあるよ」

「そうなんですか……でも普通に受けたいな」

「テストいつ?」

「10日後」

「ギリギリ行けるかもね。あの学校二日間にわたってするだろ?それも午前だけなら、外出で行ける可能性はあるよ?もちろん熱が引いたらの話だけど」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...