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港町
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「雪翔相手にするな……昼飯に行くぞ」
「私の分は?」
「無い」
すぐに用意せよと執事の人に言ったと思ったら、すぐさま後ろに回り込んで車椅子を押してくれる。本当はいい人なのかな?と思っていたら、すぐに那智が車椅子を取り返している。
「重次さん」
「はい」
「那智さん達仲悪いの?」
「悪いと言いますか……そっくりと言いますか……」
「そっくり?そうかなぁ……」
二人の言い合いを無視して重次に押してもらって食堂へと移動し、椅子に座り直してふたりが来るのを待つ。
「酷いよ雪翔君、ジイジが押そうと思ってたのに」
「だって、二人共うるさいんだもん!」
「す、すまん」と那智が言うと、素直にジイジも謝る。
似てる……この二人そっくりだ!
食事が並べられ、ナイフとフォークが置かれたが、マナーなど知らないと思っていたら、気にしないで食べろと言われたので、お肉を切って口に入れる。
「美味しい」
「だろう?それは肉に見えるけど魚なんだよ。この辺りではよく食べられる食材の一つでね、南の海にしか生息してないんだ」
「ほんとに魚なの?お肉かと思った」
「捌いてから叩いて、形を整えて焼くだけなんだけど、色々な料理に使われてるよ」
「へぇ」
「ところで、那智」
「何だ?」
「今日はここに泊まるのか?」
「そのつもりだ」
「何日くらいこっちにいるつもりだね?」
「一週間て所だな。それがどうかしたか?」
オカマのような喋り方は、ご機嫌取りの時だけのようで、普通に話しているとスーツの良く似合う紳士にしか見えない。
「東の話は聞いたか?」
「いや?」
「北に近い東の外れなんだが……最近野狐の群れが居着いてるようで、かなり悪さをしているらしい」
「捕まえたら終わりだろう?」
「それが、捕まえようとすると場所を変えて逃げるらしくてタチが悪いそうだ」
「南には来てないのか?」
「まだ聞かないが一応注意しておいた方がいい。群れができると大抵各地で同じことが起こるからね」
「悪い人たち?」
「何も無ければ大人しいんだが、作物を荒らして町まで降りてくるようになると手がつけられん」
「この時期に出るとはな……島はどうだ?」
「あの爺様が まだ住み着いてるが、なかなかこっちに来ないから、たまに船乗りが見に行ってる。平和なものだ」
「明日島に行く」
「それは構わんが……街の観光でなくていいのか?」
「それは最後だな」
那智達が話している間にご飯を食べ終わって、オレンジジュースをもらって飲んでいると、じーっとこっちを那智の父が見てくる。
「えっと……」
「雪翔君」
「はい」
「冬弥との生活はどうだね?」
「楽しいです」
「なら良かった。話だけは聞いていたんだが、天狐の親族であるとあまり触れ回れないので何も出来ずに申し訳なかった」
「いえ……那智さんには沢山助けてもらいました。僕も、この前知ってびっくりして」
「これからはなんでも言ってきておくれ。私も雪翔のジイジなんだから」
「ありがとうございます」
その後もじーっと見てくるので、「ジイジ」と付け足すと満足げにニコニコとお茶を飲んでいる。
「那智さん、家の中案内してもらってきてもいい?」
「構わん、重次がうちの結界内を全部知ってるから、境界線内だけにしておいてくれ」
車椅子を押してもらって、一階から順番に案内してもらい、二階にある書庫の大きさに驚く。外に出ると、やはり潮風が気持ち良く、ついお昼寝にいい場所かもと木陰を指さす。
「私の分は?」
「無い」
すぐに用意せよと執事の人に言ったと思ったら、すぐさま後ろに回り込んで車椅子を押してくれる。本当はいい人なのかな?と思っていたら、すぐに那智が車椅子を取り返している。
「重次さん」
「はい」
「那智さん達仲悪いの?」
「悪いと言いますか……そっくりと言いますか……」
「そっくり?そうかなぁ……」
二人の言い合いを無視して重次に押してもらって食堂へと移動し、椅子に座り直してふたりが来るのを待つ。
「酷いよ雪翔君、ジイジが押そうと思ってたのに」
「だって、二人共うるさいんだもん!」
「す、すまん」と那智が言うと、素直にジイジも謝る。
似てる……この二人そっくりだ!
食事が並べられ、ナイフとフォークが置かれたが、マナーなど知らないと思っていたら、気にしないで食べろと言われたので、お肉を切って口に入れる。
「美味しい」
「だろう?それは肉に見えるけど魚なんだよ。この辺りではよく食べられる食材の一つでね、南の海にしか生息してないんだ」
「ほんとに魚なの?お肉かと思った」
「捌いてから叩いて、形を整えて焼くだけなんだけど、色々な料理に使われてるよ」
「へぇ」
「ところで、那智」
「何だ?」
「今日はここに泊まるのか?」
「そのつもりだ」
「何日くらいこっちにいるつもりだね?」
「一週間て所だな。それがどうかしたか?」
オカマのような喋り方は、ご機嫌取りの時だけのようで、普通に話しているとスーツの良く似合う紳士にしか見えない。
「東の話は聞いたか?」
「いや?」
「北に近い東の外れなんだが……最近野狐の群れが居着いてるようで、かなり悪さをしているらしい」
「捕まえたら終わりだろう?」
「それが、捕まえようとすると場所を変えて逃げるらしくてタチが悪いそうだ」
「南には来てないのか?」
「まだ聞かないが一応注意しておいた方がいい。群れができると大抵各地で同じことが起こるからね」
「悪い人たち?」
「何も無ければ大人しいんだが、作物を荒らして町まで降りてくるようになると手がつけられん」
「この時期に出るとはな……島はどうだ?」
「あの爺様が まだ住み着いてるが、なかなかこっちに来ないから、たまに船乗りが見に行ってる。平和なものだ」
「明日島に行く」
「それは構わんが……街の観光でなくていいのか?」
「それは最後だな」
那智達が話している間にご飯を食べ終わって、オレンジジュースをもらって飲んでいると、じーっとこっちを那智の父が見てくる。
「えっと……」
「雪翔君」
「はい」
「冬弥との生活はどうだね?」
「楽しいです」
「なら良かった。話だけは聞いていたんだが、天狐の親族であるとあまり触れ回れないので何も出来ずに申し訳なかった」
「いえ……那智さんには沢山助けてもらいました。僕も、この前知ってびっくりして」
「これからはなんでも言ってきておくれ。私も雪翔のジイジなんだから」
「ありがとうございます」
その後もじーっと見てくるので、「ジイジ」と付け足すと満足げにニコニコとお茶を飲んでいる。
「那智さん、家の中案内してもらってきてもいい?」
「構わん、重次がうちの結界内を全部知ってるから、境界線内だけにしておいてくれ」
車椅子を押してもらって、一階から順番に案内してもらい、二階にある書庫の大きさに驚く。外に出ると、やはり潮風が気持ち良く、ついお昼寝にいい場所かもと木陰を指さす。
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