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夏休み~狐の国の異邦人
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数人の女中が周りを囲みだし、みんな鍋の沸騰と共に入れられる芋に、自分の切った玉ねぎときゅうりをどうするのか不思議そうに見られ、栞に至ってはお腹が大きくなってきいているので、何をするのにも「あぶのうございます」と言われ、台所はお祭り騒ぎのようになっていた。
「えーと、すりぼうあります?」
そう冬弥が言うとすぐに用意され、半分はそのままに。半分はつぶしてきゅうりと玉ねぎと和え、卵黄と油で作った即席マヨネーズで和えてから細かく切った燻製肉を散らす。
「ここには胡椒はないの?」
女中に聞くとないとのことだったが、バジルに似た葉があるとのことだったので、それを細かく切り、盛り付けた器に散らすと、撫で撫で撫で撫で撫で……とかなり高い位置から撫でられる。
「だれ?」
横には冬弥も栞もいるし、祖父母ならば何か声をかけてくると思って聞いたのだが、振り向くと全く知らない女の人だった。
「初めましてじゃのう」
「あ、初めまして」
そう言いながら冬弥を見ると、眉間に皺を寄せ「何しに来てるんです?」と聞いている。
「前は御簾の中からじゃったから、こうして会いに来た。妾がおるのは不思議か?」
「うちの子いじめたじゃぁありませんか」
「爺共の前で妾が何を言っても聞かぬじゃろう?今日はそのお詫びも兼ねて訪ねてきたのじゃが……この食べ物はなんじゃ?」
「芋のサラダですよ」
「そちに聞いておらぬ。雪翔と言うたの。これはそなたも作ったのか?」
「僕はきゅうりと玉ねぎを切っただけです。ここに居るみんなで作ったんですけど」
と言うと、女中達は三人で作ったと言い張る。
「だって、材料持ってきてくれたし……」
「ほほほ。そなたはやはり面白い!先の謁見では守ってやれずに申し訳なかったねぇ」
「いえ、僕も怒ってごめんなさい」
「よいよい。して、報告のあった異国の男の子はどこじゃ?」
「居ませんよ?昴さんが連れていったので」
「間が悪いのぅ。いつ帰ってくるのじゃ?」
「さぁ?」
冬弥と知らない女性との会話を聞きながらも、味見していい?と栞に声をかけ、お箸でちょっとだけ食べ、なかなかうまく出来てると一人満足していたら、小皿がたくさん用意されたので栞と盛り付けていく。
「あの、良かったら……」
「どれ?妾は味にうるさ……ん?これは本当に芋なのかえ?」
「じゃがいもですよ。潰して即席マヨネーズであえただけです」
「この、マヨネーズとやらは珍味よのぅ……」
そう言いながらもお代わりとばかりに小皿が出てくるので、また少し盛り付けて渡す。
「そうじゃ、忘れておった!文弥がここにおるじゃろう?少し借りていくが構わぬか?」
「父上でしたら滝のそばにいます。ちゃんと戻してくださいよ?私も明日あちらに戻るので、雪翔が可哀想でしょう?」
「なに、いつもの用事じゃ。夜には終わるであろうが、菫が居ればなんとでもなるであろう?」
「家族で過ごしたいんです!」
「まぁ良い。早く行けば早く終わるで、連れていく」
言うだけ言って、ふらっと出ていったと思ったらもう姿がなく、結局天狐のひとりとしか分からなかった。
「えーと、すりぼうあります?」
そう冬弥が言うとすぐに用意され、半分はそのままに。半分はつぶしてきゅうりと玉ねぎと和え、卵黄と油で作った即席マヨネーズで和えてから細かく切った燻製肉を散らす。
「ここには胡椒はないの?」
女中に聞くとないとのことだったが、バジルに似た葉があるとのことだったので、それを細かく切り、盛り付けた器に散らすと、撫で撫で撫で撫で撫で……とかなり高い位置から撫でられる。
「だれ?」
横には冬弥も栞もいるし、祖父母ならば何か声をかけてくると思って聞いたのだが、振り向くと全く知らない女の人だった。
「初めましてじゃのう」
「あ、初めまして」
そう言いながら冬弥を見ると、眉間に皺を寄せ「何しに来てるんです?」と聞いている。
「前は御簾の中からじゃったから、こうして会いに来た。妾がおるのは不思議か?」
「うちの子いじめたじゃぁありませんか」
「爺共の前で妾が何を言っても聞かぬじゃろう?今日はそのお詫びも兼ねて訪ねてきたのじゃが……この食べ物はなんじゃ?」
「芋のサラダですよ」
「そちに聞いておらぬ。雪翔と言うたの。これはそなたも作ったのか?」
「僕はきゅうりと玉ねぎを切っただけです。ここに居るみんなで作ったんですけど」
と言うと、女中達は三人で作ったと言い張る。
「だって、材料持ってきてくれたし……」
「ほほほ。そなたはやはり面白い!先の謁見では守ってやれずに申し訳なかったねぇ」
「いえ、僕も怒ってごめんなさい」
「よいよい。して、報告のあった異国の男の子はどこじゃ?」
「居ませんよ?昴さんが連れていったので」
「間が悪いのぅ。いつ帰ってくるのじゃ?」
「さぁ?」
冬弥と知らない女性との会話を聞きながらも、味見していい?と栞に声をかけ、お箸でちょっとだけ食べ、なかなかうまく出来てると一人満足していたら、小皿がたくさん用意されたので栞と盛り付けていく。
「あの、良かったら……」
「どれ?妾は味にうるさ……ん?これは本当に芋なのかえ?」
「じゃがいもですよ。潰して即席マヨネーズであえただけです」
「この、マヨネーズとやらは珍味よのぅ……」
そう言いながらもお代わりとばかりに小皿が出てくるので、また少し盛り付けて渡す。
「そうじゃ、忘れておった!文弥がここにおるじゃろう?少し借りていくが構わぬか?」
「父上でしたら滝のそばにいます。ちゃんと戻してくださいよ?私も明日あちらに戻るので、雪翔が可哀想でしょう?」
「なに、いつもの用事じゃ。夜には終わるであろうが、菫が居ればなんとでもなるであろう?」
「家族で過ごしたいんです!」
「まぁ良い。早く行けば早く終わるで、連れていく」
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