天満堂へようこそ 3

浅井 ことは

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変化

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「その時誰か居なかったか?」

『ムーちゃんだけでしたけど?スルッと門を抜けてあっちの方に行ったので、お散歩かなって思っただけ……』

「ありがとう!」そう言い、妖精の指さした方に向かって走る。
後ろで奏太と聞こえたが、探していた反対方向だとわかれば、行ってみるしかない。

門を出て左に曲がると、大きな屋敷が並ぶ住宅街となっていて、1軒ずつ聞いて回るのもどうかと思い、ひたすら走っムーの気配にだけ集中する。

「奏太様!」

「何?」

「これ、動物の毛でしょうか?」

ノアの見つけた抜け毛のような小さな束には毛根もついており、臭いをかぐとムーの匂いがした。

「これって、むしり取られたのかな?」

「少し固まっているところがありますので、自分でしたのかも知れません」

「他にも落ちてるかも。なんで気づかなかったんだろ」

「時間もたっていますので……」

そのまま道路を良く探し、所々に落ちている毛を頼りに進む。

その毛を頼りに少し走るのをやめて進んでいく。
最初の毛は多かったがだんだんと少なくなり、最後に見つけた場所の目の前には立派な屋敷がたっていた。

「ノア……ここは?」

「私も会社と屋敷の往復だけでしたのでこの辺りの事は……申し訳ありません」

「ここにいるのかな?」

「奏太様は嗅覚も耳も優れております。多分ですが姫様よりも。他にも軽い変化で見ただけなのですが、跳躍もあるかと思います。チーターは我々の幻界には居ない動物です。何かご存じの事はありませんか?」

「素早いのと、走るのは動物のなかで一番早いとか。木の上にも軽々登れるとかかな?」

「そこの大きな木に登ることは可能ですか?」

やってみる、そう言い少し飛び上がると、自分が思っていた以上に飛んでしまい木の枝に頭をぶつけてしまった。

「奏太様、姫と連絡がとれました。ここで待つようにと」

「でも……」

「……わかりました」

そう言い、ノアも木の上に登る。

「今から1つ魔法をかけます。姿を消す魔法です。ただ兄や姫様のように長くは持たないかもしれません」

「うん、いいよそれで」

そう言いノアに魔法をかけてもらい屋敷の中に入る。

「これって声聞こえるのかな?」

「姿が見えないだけですので、申し訳ございません」

「そんなこと無いよ!凄いよ!」

そのまま庭から中へ入ると少しだけムーの血の臭いがした。

思わず手で鼻を覆ってしまう。
隣を見るとノアも気づいたのだろう。口許を手で隠している。
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