天満堂へようこそ 3

浅井 ことは

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自分はどのくらい寝ていたのか、いつ来たのかを聞き、この城の場所や方角なども聞く。

「紙に書きましょう」と大きな紙を出してきて中心に丸を書く。

「ここがお城です、そこから四つのエリアに分かれていて、端にいくほど街ではなく村、森などがあり、天界・魔界・人間界の境目になっていますので、魔物や幻獣なども出ます。東はこちら、ここからぐるっと一周まわって城に帰ろうかと思います」

「ノアも来てくれるの?」

「勿論です」

「でもさ、かなり広いんでしょ?歩いて行くの?」

「いえ、馬車で行きます。馬車と言っても荷馬車になりますが……荷物も積んであるので、夜は簡易天幕での寝泊まりになりますが……」

「精神を鍛えるとか言われたけど」

「一周すればわかると思いますよ?」

少し動きたいと言い、城の中を案内して貰う。

所々に絵が飾られ、誰か聞くと歴代の王の肖像画と教えられた。
近衛兵の訓練所ではみんなが剣の練習をしており、ノアを見つけると「手合わせを」と言ってくる者もいる。

「ノア有名なんだ」

「剣だけですが……あちらでは弓の鍛錬をしてます。やってみますか?」

「いいの?」

一人の人に代わってもらい、弓を持つ。
言われた通りに構えて矢を放つが、全然飛ばないので、何度かチャレンジしたが、腕が筋肉痛になりそうだと数回やって諦めた。

「こればかりは練習ですが、今回自分の食事は狩りをして手に入れないといけません。当面のパンと水はありますが……」

「嘘?」

「本当です。お金もないので毛皮などを売り、パンなど調達もしなければいけませんので」

「聞いてないよ……」

「こちらに」と案内されたのは、鍛治職人のところだった。

「ほうほう、この子かえ」いきなりそう言い体をペタペタ触られる。

一言ふむと言い、沢山ある剣の中から一振りの刀を持ってくる。

「ノア殿、これは如何かな?」

「ええ、良いと思いますが、良いのですか?」

「良いも何も、この剣がこの子を選んだのじゃから使ってやってくれ」

「有難く」

「何の話?」

「この鍛冶職人は剣と話すと言われています。そしてこの剣が奏太様を選んだと。持ってみてください」

持つと思っていたよりも軽い。鞘から抜くとそれ程切れ味がいいようには見えないのだが、剣の事は全くわからないので、そのまま鞘にしまってお礼を言う。

「その剣はそなたの思う通りになる。切りたくないと思えばその様に。じゃが、身の危険を感じた時には助けにもなるであろう」

「はい……」
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