天満堂へようこそ 2

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
2 / 63
一年後

.

しおりを挟む
「おいこら、ムーも早く手伝えよ!」

「やってるよぅ。でも雑巾がけ進まないんだもん」

「ムーはそれしなくていいから……ほら、この袋出してきて。大きくないから持てるだろ?」

「あ、こっちか!」

全くもう……

天満堂店主、天満結月が居なくなってから丁度1年。何とか店もやってこれて、この冬休みが終わったらもうすぐ高校の卒業式。
もちろん就職先はここ。
薬屋 天満堂。

一月の半ばから自由登校になるので、そこからは朝から閉店まで店の事をしなければならない。

事務に人外の人も居てくれるので、裏の薬屋の在庫も売りきったし、今は普通の薬局と処方箋薬局とやっている。

ここまでやれたのは弁護士さんが上手く取り計らってくれたからだ。

開店準備を終え、遅れると連絡のあったパートさんを待つ。

「おかえりムー。パートさんと薬剤師さんが来たら、俺買い物行くんだけどなにか欲しいものある?」

「んー。プリン!後はあの丸いの!」

「ボーロか?」

「そう。あれ美味しいんだよー!」

「でもお前ちっこいからなぁ……もっとご飯赤ちゃん用も混ぜてやろうか?」

「僕もう大人だもんね!尻尾も見て。立派でしょ?」

「はいはい。丸々してて可愛いですよ。スーパーの帰りに買ってくるよ」

「カボチャにしてね?」

「三種類入だ!好き嫌いすんなよな」

パートさんが来たので店を任せ買い物へ出る。

3日分の買い物をし部屋の冷蔵庫に入れて、回しておいた洗濯を干す。
10時までに終わらせるのがこの1年の習慣になっている。

事務所と部屋の掃除機かけや空気の入れ替えなどはたまにしているが、一年前を思い出すので中々最初は部屋にも入れないでいた。

結月の部屋の掃除は週二回。仕事が終わってからしていたので、そのまま店に出る。

「ムー、はいこれ」とジャーキーを渡す。

「食べていいの?」

「今度一緒に来てくださいって店員さんがくれたんだ」

「やったー!」

ムーを撫でていると、処方箋の事務の人鈴木さんが話しかけてくる。
鈴木ってまた簡単な名前付けたなと思って聞いたら、日本に多い名前と聞いたのでと教えて貰ったことがある。
見た目は40代に見えるが本当は幾つなんだろう?

「お弁当、冷蔵庫に入れておきましたので」

「いつも有り難うございます」

最初は断っていたのだが、結月が居なくなってから、食事が夜以外ファーストフードになってしまったため、ユーリから食事の世話も頼まれたらしく、お昼にお弁当を作ってきてくれる。
しおりを挟む

処理中です...