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お客
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えっと……ユーリさんの部屋にお客さん用のベッドがあるから、そこに泊まるんだよな?
俺の部屋だとまた布団だし。
それに、観察って何を観察されるんだろう?
そんなことを思っていると、玄関が開き、トテテテテッとムーの足音がした。
「ルーカスさんだ!」そう言い勢いよく飛びかかったと思ったら、無防備な足にガブリッ!
「よし!よく出来た!」と満足気な結月。
「何をしてんですか!」
「だって姫が着いたら噛めって……」
「結月さんも毎回やめてくださいよ!固まってますよ?ルーカスさん」
「反応がないとはまた珍しいな」
「……あー!痛かった。お前の遊びにいちいち付き合ってられるか。で、俺は奏太の部屋に泊まるのでいいんだな?」
「あ?ユーリの部屋だ!」
「何でだよ!」
「客用の部屋も用意したからな。残念だったなー!ハーッハッハッハ!」
「あっそ」
「朝食と夕食は奏太さんの部屋で。魔界の方もたまには召し上がると聞いておりますので。しばらくは奏太さんは店。ルーカスさんと姫は事務所での仕事となります」
「なんでもいいけど、俺も働くわけ?」
「当たり前だ!なんだ?チラシ配りがやりたいのか?」
「ごめんなさい」
「まぁ、その内リアムも来るんじゃないか?来たら来たで儲かるが。じゃ、事務所に来てくれ」
「俺も?」
「そうだ」
あまり行きたくなかったがごねるとうるさそうだったので、隣の事務所にみんなで行く。
入ってすぐ、帳簿と売りきった薬の確認をさせられ、結月は何やら考えていたが、全く意味がわからない。
「奏太、金額覚えているか?」
「えっと、そこに書いてある値段表通りに売ったから、500万近くあったと思うけど。買いに来た人の記録も挟んである」
「妖精と、ゴブリンに閻魔の使い?あぁ、あの疲れきった顔した奴か……で?なんだこいつは。ろくろ首に一つ目小僧、玉藻前?何しに来たんだこいつは!歯の痛み止め?馬鹿か!」また変なのがいっぱい来たなと楽しそうに笑っているが、そのときの俺は心臓が止まるかと思うほど焦っていたとは絶対に言えない。
「そうだな、約500だ。お前ここにいろよ?」と電話をかけ出す。
話しからするともちろんあの弁護士にだった。
「すぐに来る。ユーリあれを用意しておけ」
「畏まりました」
そう言いコーヒーの準備をしに作業部屋へ行く。
「おい、あれってなんだ?」
「後でわかる。よく見ておけ」
30分ほどで弁護士が事務所にやって来て、最初に店の権利やその他の手続きを行い全て元通りに戻す。
それが終わった所でコーヒーが出てきた。
「あ、有難うございます」
「でだ、この薬の売上はどこに行った?」
「もちろん銀行に」
「入ってないんだが?」
「え?まさか……坊ちゃんからお預かりして、あ、忘れておりましたー。事務所の金庫にそれはもう大事に」とひたすら汗を拭いている。
その後コーヒーを飲み、ふぅーっと1つため息をついた時に見せた結月のニヤッニヤッとした顔は忘れられない。
「店の売上もおかしいんだがな?」
「それは坊ちゃんに……」パラッ
「ほう?奏太は発注が主な仕事で会計士に任せてた筈なんだがおかしいな」
「ええ、そうですね、会計士に……」パラパラパラ
汗を拭く度、動く度に抜けて行く髪。
フサフサの髪はもう薄い髪に変わっていた。
俺の部屋だとまた布団だし。
それに、観察って何を観察されるんだろう?
そんなことを思っていると、玄関が開き、トテテテテッとムーの足音がした。
「ルーカスさんだ!」そう言い勢いよく飛びかかったと思ったら、無防備な足にガブリッ!
「よし!よく出来た!」と満足気な結月。
「何をしてんですか!」
「だって姫が着いたら噛めって……」
「結月さんも毎回やめてくださいよ!固まってますよ?ルーカスさん」
「反応がないとはまた珍しいな」
「……あー!痛かった。お前の遊びにいちいち付き合ってられるか。で、俺は奏太の部屋に泊まるのでいいんだな?」
「あ?ユーリの部屋だ!」
「何でだよ!」
「客用の部屋も用意したからな。残念だったなー!ハーッハッハッハ!」
「あっそ」
「朝食と夕食は奏太さんの部屋で。魔界の方もたまには召し上がると聞いておりますので。しばらくは奏太さんは店。ルーカスさんと姫は事務所での仕事となります」
「なんでもいいけど、俺も働くわけ?」
「当たり前だ!なんだ?チラシ配りがやりたいのか?」
「ごめんなさい」
「まぁ、その内リアムも来るんじゃないか?来たら来たで儲かるが。じゃ、事務所に来てくれ」
「俺も?」
「そうだ」
あまり行きたくなかったがごねるとうるさそうだったので、隣の事務所にみんなで行く。
入ってすぐ、帳簿と売りきった薬の確認をさせられ、結月は何やら考えていたが、全く意味がわからない。
「奏太、金額覚えているか?」
「えっと、そこに書いてある値段表通りに売ったから、500万近くあったと思うけど。買いに来た人の記録も挟んである」
「妖精と、ゴブリンに閻魔の使い?あぁ、あの疲れきった顔した奴か……で?なんだこいつは。ろくろ首に一つ目小僧、玉藻前?何しに来たんだこいつは!歯の痛み止め?馬鹿か!」また変なのがいっぱい来たなと楽しそうに笑っているが、そのときの俺は心臓が止まるかと思うほど焦っていたとは絶対に言えない。
「そうだな、約500だ。お前ここにいろよ?」と電話をかけ出す。
話しからするともちろんあの弁護士にだった。
「すぐに来る。ユーリあれを用意しておけ」
「畏まりました」
そう言いコーヒーの準備をしに作業部屋へ行く。
「おい、あれってなんだ?」
「後でわかる。よく見ておけ」
30分ほどで弁護士が事務所にやって来て、最初に店の権利やその他の手続きを行い全て元通りに戻す。
それが終わった所でコーヒーが出てきた。
「あ、有難うございます」
「でだ、この薬の売上はどこに行った?」
「もちろん銀行に」
「入ってないんだが?」
「え?まさか……坊ちゃんからお預かりして、あ、忘れておりましたー。事務所の金庫にそれはもう大事に」とひたすら汗を拭いている。
その後コーヒーを飲み、ふぅーっと1つため息をついた時に見せた結月のニヤッニヤッとした顔は忘れられない。
「店の売上もおかしいんだがな?」
「それは坊ちゃんに……」パラッ
「ほう?奏太は発注が主な仕事で会計士に任せてた筈なんだがおかしいな」
「ええ、そうですね、会計士に……」パラパラパラ
汗を拭く度、動く度に抜けて行く髪。
フサフサの髪はもう薄い髪に変わっていた。
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