天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
19 / 71
風の地

.

しおりを挟む
「あー!美味しかった。俺夜もこれでいいかも」

「ですが、もう夕方には町に入りますよ?」

「もう?」

「結構境目にいたので。ですのでこれは凍らせておきます。そしたらまた食べれますので」

「こっちには保存容器とかないの?」

「まず、冷蔵庫がないですし、取っておくことがほとんど無いですね」

「幻界も同じです。冬の場ならば寒いのでスープ位はとっておけますが」

「そうなんだ。町には何の位いるの?」

「まずは1日。前より大きい町と言っても何も無いので。それにここではこの先の街、奏太様が覚えている街について少々聞いて回りたいくらいなので、私は夜に町の酒場で話を聞いてきます」

「結構路銀も使いましたが、売れますか?他の物の皮は……」

「一つゴリラ見たいな魔獣の皮が高値で取引されますので、大丈夫です」

「ゴリラ?そんなのとも戦ったの?」

「はい。見た目はゴリラのようでしたが、毛むくじゃらで気持ち悪かったです……」

「クキョッ?」

ジャガイモをつついていたブランが、キョロキョロと周りを見ている。

「どうした?」

「なんでもないと思う」

そう言ってまた食べているが、目では確認出来なかったから言わなかったのだろう。

犬車に乗ってからも時折外を見ては、変な鳴き声を出している。

「なぁ、何かいるのか?俺、お化けとか苦手なんだよ」

「臭いがしたからなにかいると思ったけど、見えないから分かんない」

「そっか……まだそんな感じする?」

「今はないよ?」

「いたら教えてくれよ?見えてないのが一番嫌だけど」

「うん、僕達は戦わないから、いつも逃げるんだ。だから音や匂いには敏感なんだけど……」

「見えないから分からないんだろ?」

そう言ってごろっと寝転んで天井を見ると変な形にへこんでいる。
ブランをつつき、頭上を指さすと小さくなりポケットに逃げ込んできた。

「ノア、ニコルさん」と頭で話しかけ天井に何かいると話す。

返事はなく、代わりに悲鳴が聞こえてきたので、慌てて御者台に移動する。

幌の真上で一人の男が降参と手を挙げていて、ニコルが話を聞くと、歩くのが面倒だったので、姿を消し屋根に乗っていただけと言う。

一旦犬車を止めて、男を引きずり下ろす二人の姿が怖い……
剣を向けたまま、気配まで消して乗るのは敵のスパイと思われても仕方ないと言い、そのままそこに男を拘束したまま出発する。

「いいの?放ってきて」

「あれは身なりはそれなりでしたが、盗賊のよく使う手です。一人が監視し、離れた隙に馬車事盗むのは結構多いので。それにさしていた刀でも盗賊だとわかりました」

「他にも仲間がいたのかな?」

「近くにはいたでしょう。あのように偵察できるものは、魔力が使えるので後々厄介です」

「そうなんだ。ブランが気づいたんだ」

「お手柄です」とみんなに褒められ、荷台で走り回っている。よほど嬉しかったのだろう。

町が見えてきたと言うので、幌を少し開けて前を見ると、結構大きな町が見えていた。

門から中に入り、犬車のまま町を進む。

途中で狩ったものを売り、緑のコイン二つのところに泊まる事になり、必要なものを持って部屋に入る。
今回は個室だったので、早速浴槽に湯を張りゆっくり浸かる。
しおりを挟む

処理中です...