天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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風の地

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「奏太ー!」

「はい!」

行くとただのお代わり。目の前にあるから自分でしてほしいなどと言えるわけもなく、おかわりを渡し自分も食べる。

「ブランも食べよ。お前氷の地に入ってからあまり食べてないだろ?」

「僕、眠くて……あの人は僕で遊ぶから……」

「明日になったらゆっくりできるから、もう少し我慢して」

大好きだというジャガイモをお皿に乗せて、食べるんだよと暖かい火のそばにブランを置いて自分も早く食べる。

睡眠時間も寒さで短く、体力は限界だった。

それに対し、ニコルとノアは毎朝寒いのに上半身裸で稽古を欠かさずにしていたのには驚きだった。

「奏太、あの2人はいつも稽古をしているの?」

「してます。見ているといつも真剣勝負に見えてしまうのですが……」

「ニコルの動きはまだ遊びね。ノアと言ったかしら……あちらも相当な腕だけど、かなり力を抜いているのが分かるわ」

「アグナさんも剣を扱えるんですか?」

「剣舞と言うのを知ってる?踊り子は皆とまではいかずとも、それなりに扱えるの。ニコル!」

「何ですか?」

「ノアとやらも剣舞は?」

「出来ますが、幻界のものなので、魔界のものはわかりません」

「いい。私が合わせるから。奏太見ていなさい」

立ち上がってみんなの真ん中に行くと、太鼓と笛の音がし、3人が音に合わせて舞う。

流れる水のような動きがだんだん激しさを増していった。まるで急流から滝へ行く様に。
ニコルの魔界の剣舞にノアの幻界の剣舞。その間に中間の様にうまく組み合わされるアグナの剣舞が混ざり、護衛までもが食事をしながら見入っていた。

踊りの最中、後から地響きのような音がなり、何かと思い振り向くと大小様々なマンモスのような体躯の魔獣が出たが、音楽は鳴り止まず3人が舞いながら倒して行くのをただ見ていた……

ひときわ大きな音がし、牙も体も大きな魔獣が出たので、ブランをマントの中に入れ、3人を盾で覆うと同時に鎌鼬を放つ。
いくつかの攻撃で少しぐらついた所を舞いながら三人が倒し、音楽と共に最後を飾ると、どこからとも無く拍手が沸き上がる。

「ノア……」

「はい。皮を剥ぎに行きましょう。沢山いるのでかなり売れると思います」

「それもあるけど、踊りながらって……」

「幻界でも似たようなものがあります。大抵剣舞の際、魔獣と闘いながらと言うのも見せ場であるので……」

「遊んでるのかと思った。アグナさんも凄かったし」

「女性としてはかなりの実力が無いと出来ませんから、本来は護衛などいらないくらいお強いと思います」

「か弱い女を前に何を言ってるの?」

「今更可愛く言われても……」

ゴン!と頭を叩かれ、さっさと仕事をしてこいと言われる。
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