天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
50 / 71
氷の地

.

しおりを挟む
片付けが終ってから出発して数時間。思っていたよりも時間が掛かったが、町につき宿屋に連れていかれる。
看板は赤の金縁コイン5の高級宿屋。
見張り以外は散らばっているが、犬車は全部修理に出している。

「じゃぁ俺は少し野暮用に行ってくる」と姿を消したのでニコルに聞くがニコルもあまり知らないと何故か誤魔化しているようにも見える。

町を散歩していると、聞きなれた声と赤ちゃんの鳴き声が聞こえてくるのでつい覗いてしまう。


最初は見守るだけと言って隠れてみていたが、綺麗な女性が赤ちゃんを抱き、その横でルーカスが赤ちゃんの世話をし、女性ともかなり親密なようだ。

「まさか……」とニコルを見ると、「報告はないのですが、ルーカス様が父親に見えないでもないですね……」

見られてるともしらず赤子を大事に抱っこしているのは親としか感じられない。

あまり見ているのもと思いながらもついつい見てしまっていると、「げっ!」と変な声を出してこちらを見るルーカスと目が合ってしまった。

「いつから見てたんだ?」

「いや……たまたまなんだけど」

「まぁいい。付いてこい」と言われて後を付いていくと、公園の近くにある一軒家の中に「入れ」と呼ばれてしまった。

女性が紅茶を入れてくれ、ルーカスが赤ん坊を女性に渡し何か言って下がらせる。

「まずだが、あのこの父親は俺ではない」

「説得力に欠けすぎです」

「お前なぁちょっとくらい主人を信じろよ」

「あーはいはい。で、先程の方は?」

「あれは、まぁ美人だったし……大人の関係だが、子供は違う」

「王子の子なら城へ……」

「違うって言ってんだろ?あまりでかい声出すと起きちまう!」

「言えない理由でもあるのですか?」

「ノア……プライベートな事なんだからさ」

「いえ、本当に違うのであればニコルさんもここまで言いません。隠すと言うことはやはり……と考えるのは当たり前なので」

「あーもう!最初は俺も疑ったんだよ。髪の色もくせっ毛なところも俺に似て男前なところも似てるからな」

「あの赤子の方が賢そうですけど?」

「煩い!とにかく父親は違うんだ。俺の影武者だった奴が三ヶ月ほど前にこの戦争で巻き込まれて死んだ。そいつの子供だ」

「え?」

珍しく驚いているところを見ると、ニコルも知らされていなかったらしい。
コソッとノアに聞くと、影武者は王族の中では王と王子・姫に変わって誰かいるらしく、同じような教育がされているらしい。
見た目だけではバレてしまうので教養もいるし、戦闘訓練もかなり厳しいものだという。

「婚姻関係は?」

「無かったらしい。あれば国からちゃんと資金が出る。働かずとも大きくなるまで苦労はない程度に……」
しおりを挟む

処理中です...