ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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今夜

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車で帰れた後、アロンは部屋の中までついてこようとするエルヴィスとエルドを外に閉め出してため息をついた。

「帰ってくるだけなのに疲れた」

「お帰りっすか?」

「は?」

部屋の中にもう1人の声が響いた。顔を向けた瞬間そうだったと思い出す。

フィンジャーがいたのである。クラックとイアンを怖がってフィンジャーが何がなんでもアロンと同じ部屋に住むと駄々をこねるので、折れたクラックは部屋の隅にテープで囲んだ場所をフィンジャーの犬小屋とした。

立つと座るしかできなさそうな小さい空間だが、なんと、その空間から出るとテープに貼り付けたセンサーが反応し、フィンジャーの首にある輪っかから電撃が流れるらしい。

そのせいか、さすがに見ていられなかったアロンが活動場所を増やした。立つと座るしかできなかったスペースが今じゃ寝転べるほどに広がり、アロンが部屋にいない間は好きに移動できるようにした。

クラックとイアンは賛成的ではなかったが、アロンは特に盗まれるようなものもないと大丈夫だと言った。

そもそも、フィンジャーが何か不埒を働いたとして無事でいられない気がする。それは本人もよくわかっているのだろう。

そして適応能力が高いためか犬としての生活をたった数日で受け入れた。エルヴィスが何やら調教したらしいのでそれが関係しているのかもしれない。

「そうだった…まだお前がいるんだった」

「酷いっすよアロンさん。こんなに聞き分けのいいわんちゃんなかなかいないっしょ。もっと可愛がってくれてもいいのに」

「うるせぇよ……お前本当に何者だよ。慣れすぎだろ」

「受け入れないと死ぬか豚箱なんすから、そりゃ選ぶなら今のほうがマシってもんですよ」

「……おかしいのが自分のほうな気がしてきた」

「そんな悲しいこと言わんとしてくださいよ~。それより外にいるの誰っすか?なんだかめちゃくちゃ聞き覚えのある声なんだけど……」

「エルヴィスとエルド。エルヴィスがお前の調教?したって話だろ?」

それを聞いた瞬間フィンジャーの笑顔が固まった。

そして寝転んだ姿勢から一転して四つん這いになり涙を浮かべながら突然「わんっ!わんっ!」と鳴き始めた。

「………な、何やってんだ………」

その突然すぎる光景にアロンが目を瞬かせた。

「ちゃんと犬やってます俺!!わんっ!!」

「殺さんといてください!!わんわん!!」

「俺はアロンさんの犬ですわんわんわんっ!!」

涙を撒き散らしながら必死に鳴いている姿にアロンのほうが焦りそうになった。

「いや落ち着けよお前ッ!!」

いったい何をされたのか、フィンジャーの怖がりようは尋常じゃなかった。

アロンが目をすがめながらまだドアの外にいるだろうエルヴィスを見やる。

あいつ、本当に何したんだ……。

「アロンさぁん!助けてください!!俺ちゃんと犬やってましたよね!!」

「知らねぇよ!泣くな!」

だが恐怖心で首の輪っかのことを忘れたのか、フィンジャーがテープから身を半分乗り出した途端、ビリビリと電撃が流れた。

「ひんぎぃゃあああああ"ッ!!!」

ドサッとその場に倒れたフィンジャーは震えながらなんとかテープ内に戻ろうとした。

話によると、アロンが部屋にいる場合センサーで電撃流されたあと、20秒以内に戻らないともう一度パワーアップした電撃が流されるらしい。

しかし、一度目の電撃に死にかけのフィンジャーはなんとか半身をテープ内に戻そうとしているが、なかなかうまく戻れないらしい。

仕方なくアロンがひと足蹴って戻してあげた。

「……あ、あざっす……」

「そんな死にかけの声で言われてもな……とりあえずお前はここでおとなしくしろ!」

「……あい…」

その時である、部屋のドアが開かれた。その向こうにはやはりというべきかエルヴィスとエルドが立っている。

「なんで入ってくるんだ!」

アロンが怒っている一方でフィンジャーが疲れ気味の目を向けた。入ってくるふたりの人影にてっきりクラックとイアンかと思っていたが、よく見ると悪夢にも出てきていた人物がいた。

「ふぉおおおおああ!!?」

フィンジャーは壁に張り付いて震えた。そんなフィンジャーを一瞥するとエルヴィスは心配げな顔でアロンを見た。

「さっきの叫び声うるさくなかった?発声源返すべき場所に返そうか?」

「別にいいって」

ちらりと震えるフィンジャーを見る。あの姿を見ているとさすがにかわいそうに見え、少し庇いたくもなる。

「お前達は出ていけ!今日は疲れた!」

「しかし!」

「しかしじゃねぇよ!」

まだ居残り続けたいエルヴィスといまだに仮面をつけて何考えているかわからないエルドの背中を押して部屋から追い出そうとした。

部屋から出たところでエルドが振り返って言う。

「また今夜」

「今夜?」

聞き返すも、返されたのは頬へのキスのみで、本人はそそくさと離れていった。エルヴィスもキスしようとしたが警戒心ができたアロンに顔を押し返されて、最後はあきらめて手のひらにキスをすると怒られる前にシュッと逃げた。

「あいつら好きにしやがって!」

「アロンさぁぁあん!!」

「なんだ!」

「一生犬になるんで庇ってください!!」

フィンジャーがアロンに飛びつこうとしたがテープを飛び出した瞬間電撃に見舞われた。








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