49 / 171
第3部『Chaos Surrounding the World(世界を取り巻く混沌)』
第22話『Reversal like the crashing waves(打ち寄せる波の如き逆転劇)』 A Part
しおりを挟む
ラオを日暮れ以降に襲撃する巨人相手を想定していたローダ一行とラオ守備隊。
よもや昼間を暗雲で覆い尽くし夜の暗がりへ転化させた上、聴覚を奪ったばかりか守備隊の命すら散らした蒼きツインテールの少女、ザラレノ・ウィニゲスタ。
生存者達が味方の死へ哀悼の意を与える余裕さえ奪う不条理。
耳を押え苦悶の表情で蹲る者、中には耳から血を垂れ流す輩も。
然も地震が如く振動続ける地上。三半規管を同時にやられ、起き上がるのさえままならぬ。
「あ、貴女風使い……。風で皆の鼓膜を無理矢理振動させた」
ルシア、咄嗟の判断で耳押えて自らが送り込んだ風の精霊を反響させ、たった独り難を逃れた。
かなり無理した荒療治。新手が送り込んだ風と外耳に於いて争えば耳の痛みから逃れられない自衛手段。
「へぇ……アンタ風見える人なんだぁ。見た感じ耳長じゃなさそうだけど」
耳を押えた金髪の女へ、赤く緩んだ視線を向けたザラレノ。
腰回りのライン流れる長いパンツのポケットへ両手を収めた姿、勝負仕掛ける緊張感は微塵も受けない。
▷▷リイナッ! 近場の誰でも良いから生命之泉で耳治してあげて!
ザラレノに気取れる覚悟で風の精霊術、言の葉をルシアがリイナに飛ばす。
言の葉は伝えたい相手の脳へ術者の意志を直に届ける。故に聴覚を狂わせられたリイナ相手に意志を伝えられる唯一の手段。
「え、戦の女神よ、この者にどうか貴女様の御慈悲を。湧き出よ──『生命之泉』」
自分の声が不明瞭な状態で正確無比な詠唱を遂げるは難儀と言えよう。それでもリイナ、必死に如何にかやり遂げた。近場の相手がローダであった偶然。
「うぅ……耳が治った?」
「か、風の精霊達よ。リイナの周囲を護って御願い!」
状況が飲み込めぬローダが頭を振りながらゆるりと立ち上がる。
回復出来たのがローダであった事実にルシアは運が向いて来たと見極めた。
嘗て暴走したローダはルシアと争った際、彼女と同等の風を起こした試しがある。
ルシアとの争いの最中、ローダは風の使い手としての素養を少なからず見出したのだと決めつけた。
依って彼に風の護りは不要。唯一の回復役、リイナの守備固めを最優先だと咄嗟に判断した。
「ふぅん……少しはやれそうじゃないか。アンタも」
敵の風使い、ルシア主導の巻き返しに於ける手際の良さに少し驚いた様子のザラレノ。さりとて敵の行動を黙認してる辺り、未だ平然を保っている模様。
「あの人達の死因は恐らく貴女が風に運ばせた針。隙間に刺せば防具も意味成さないって処かしら? 可愛い顔なのに恐ろしいやり口よね」
顔振りながら如何にかザラレノの聴覚封印から復帰出来た様子のルシア。今度はラオ守備隊が暗殺された奇術の種を暴露した。
「御名答、だけど風の仕込みはそんだけじゃないからさぁ」
相も変わらず争いの構えらしい態度を取らないザラレノ余裕の言い草。
ビュゥゥゥッ!!
「へぇ……面白いお姉ちゃんだ。僕とサシでやる気かい?」
「──舐めてると痛い目見るよ御嬢ちゃん」
ルシアがザラレノに砂嵐をぶつける牽制。風量で使い手の実力差に於けるハッタリを見せた。
肌をべとつかせた潮風を言われた通り舐めるザラレノ。あからさまに引いた桜色の唇。戦場へ気軽を持ち込んだ風体。
年増の女を煽るザラレノのしたり顔。
対して真っ向勝負を挑むルシアは、険しい視線で睨み付ける。加えて彼女特有なる猫の目の様な瞳孔を暗がりの最中大きく開いた。
「か、彼女は風使いじゃなくて大気使いです!」
苦心しながら敵の鼓膜封じより如何にか逃れたリイナ。苦さ溢れる蒼い目線を同世代へ送る。
昼間を夜に転じた暗雲を呼び込んだ相手だ、風だけで終わる道理がない必然を案じた。
──ウィニゲスタ……何処かで聞いた覚えが。
リイナは14歳とは思えぬ博識な自分の頭を機能させる。出身地のみならず世界の歴史に明るい彼女。
「問題ない、ルシアが扱うのは風だけじゃないんだ。俺達は地震の相手……!」
ズバーンッ!!
「クッ!?」
未知なる敵と相対するルシアについて真顔で語ろうとしたローダを止めた頼れる味方の反撃。ザラレノの足元で爆発物が弾けた様な破裂音。
ルシアとザラレノの距離。
試合巧者なルシアの仕掛。普段通り風の精霊術に頼り切り縮地を繰り出す悪手は講じぬ。
ルシアは囁き声で風の精霊術に依る詠唱を繰り出していた。
例え周囲の騒めきがあろうともザラレノの聴覚を誤魔化せやしない。
それは相手を惑わす嘘の詠唱。代わりに飛び込んだのは投擲とは思えぬほど直進した蒼い槍。
「へッ! 俺様の前で距離を取るとか見え透いてるぜ嬢ちゃんッ!」
真実に仕掛けたるはランチア団長の類稀なる投槍。
ザラレノは足元に火薬を忍ばせていた。
初見な女同士のやり取りに於ける面白味をランチア・ラオ・ポルテガは青く迷いのない瞳で決して見逃さなかった。
ルシアから事前打合せを受けたが如きランチアの嗅覚。本来在り得ない連携が華開く。
「ハァッ!!」
間髪入れず本命が右脚を出し、見えぬ翼を用い敵の根元へ滑り込む。またしても砂を飛び散らせザラレノに浴びせ掛ける不快を絡めた反撃。
ザバァッ!!
「えッ!? な、何ぃ!」
「こんな展開ッ! 僕の楽な仕事を邪魔したなッ!」
驚天動地、両者驚きに次ぐ衝撃。今度はルシア側が緑の瞳を仰天せざるを得ない番。
旧世紀時代の最先端を着込んだ巨人。砂地に潜んだ震源地の元凶がルシアの征く手を阻んだ。
されどザラレノとて着飾った唇を噛む愚策。本来なら数に勝る敵を7番目が引き付けた後、地中深く落とす役目を担わせる腹積もりであったのだ。
よもや昼間を暗雲で覆い尽くし夜の暗がりへ転化させた上、聴覚を奪ったばかりか守備隊の命すら散らした蒼きツインテールの少女、ザラレノ・ウィニゲスタ。
生存者達が味方の死へ哀悼の意を与える余裕さえ奪う不条理。
耳を押え苦悶の表情で蹲る者、中には耳から血を垂れ流す輩も。
然も地震が如く振動続ける地上。三半規管を同時にやられ、起き上がるのさえままならぬ。
「あ、貴女風使い……。風で皆の鼓膜を無理矢理振動させた」
ルシア、咄嗟の判断で耳押えて自らが送り込んだ風の精霊を反響させ、たった独り難を逃れた。
かなり無理した荒療治。新手が送り込んだ風と外耳に於いて争えば耳の痛みから逃れられない自衛手段。
「へぇ……アンタ風見える人なんだぁ。見た感じ耳長じゃなさそうだけど」
耳を押えた金髪の女へ、赤く緩んだ視線を向けたザラレノ。
腰回りのライン流れる長いパンツのポケットへ両手を収めた姿、勝負仕掛ける緊張感は微塵も受けない。
▷▷リイナッ! 近場の誰でも良いから生命之泉で耳治してあげて!
ザラレノに気取れる覚悟で風の精霊術、言の葉をルシアがリイナに飛ばす。
言の葉は伝えたい相手の脳へ術者の意志を直に届ける。故に聴覚を狂わせられたリイナ相手に意志を伝えられる唯一の手段。
「え、戦の女神よ、この者にどうか貴女様の御慈悲を。湧き出よ──『生命之泉』」
自分の声が不明瞭な状態で正確無比な詠唱を遂げるは難儀と言えよう。それでもリイナ、必死に如何にかやり遂げた。近場の相手がローダであった偶然。
「うぅ……耳が治った?」
「か、風の精霊達よ。リイナの周囲を護って御願い!」
状況が飲み込めぬローダが頭を振りながらゆるりと立ち上がる。
回復出来たのがローダであった事実にルシアは運が向いて来たと見極めた。
嘗て暴走したローダはルシアと争った際、彼女と同等の風を起こした試しがある。
ルシアとの争いの最中、ローダは風の使い手としての素養を少なからず見出したのだと決めつけた。
依って彼に風の護りは不要。唯一の回復役、リイナの守備固めを最優先だと咄嗟に判断した。
「ふぅん……少しはやれそうじゃないか。アンタも」
敵の風使い、ルシア主導の巻き返しに於ける手際の良さに少し驚いた様子のザラレノ。さりとて敵の行動を黙認してる辺り、未だ平然を保っている模様。
「あの人達の死因は恐らく貴女が風に運ばせた針。隙間に刺せば防具も意味成さないって処かしら? 可愛い顔なのに恐ろしいやり口よね」
顔振りながら如何にかザラレノの聴覚封印から復帰出来た様子のルシア。今度はラオ守備隊が暗殺された奇術の種を暴露した。
「御名答、だけど風の仕込みはそんだけじゃないからさぁ」
相も変わらず争いの構えらしい態度を取らないザラレノ余裕の言い草。
ビュゥゥゥッ!!
「へぇ……面白いお姉ちゃんだ。僕とサシでやる気かい?」
「──舐めてると痛い目見るよ御嬢ちゃん」
ルシアがザラレノに砂嵐をぶつける牽制。風量で使い手の実力差に於けるハッタリを見せた。
肌をべとつかせた潮風を言われた通り舐めるザラレノ。あからさまに引いた桜色の唇。戦場へ気軽を持ち込んだ風体。
年増の女を煽るザラレノのしたり顔。
対して真っ向勝負を挑むルシアは、険しい視線で睨み付ける。加えて彼女特有なる猫の目の様な瞳孔を暗がりの最中大きく開いた。
「か、彼女は風使いじゃなくて大気使いです!」
苦心しながら敵の鼓膜封じより如何にか逃れたリイナ。苦さ溢れる蒼い目線を同世代へ送る。
昼間を夜に転じた暗雲を呼び込んだ相手だ、風だけで終わる道理がない必然を案じた。
──ウィニゲスタ……何処かで聞いた覚えが。
リイナは14歳とは思えぬ博識な自分の頭を機能させる。出身地のみならず世界の歴史に明るい彼女。
「問題ない、ルシアが扱うのは風だけじゃないんだ。俺達は地震の相手……!」
ズバーンッ!!
「クッ!?」
未知なる敵と相対するルシアについて真顔で語ろうとしたローダを止めた頼れる味方の反撃。ザラレノの足元で爆発物が弾けた様な破裂音。
ルシアとザラレノの距離。
試合巧者なルシアの仕掛。普段通り風の精霊術に頼り切り縮地を繰り出す悪手は講じぬ。
ルシアは囁き声で風の精霊術に依る詠唱を繰り出していた。
例え周囲の騒めきがあろうともザラレノの聴覚を誤魔化せやしない。
それは相手を惑わす嘘の詠唱。代わりに飛び込んだのは投擲とは思えぬほど直進した蒼い槍。
「へッ! 俺様の前で距離を取るとか見え透いてるぜ嬢ちゃんッ!」
真実に仕掛けたるはランチア団長の類稀なる投槍。
ザラレノは足元に火薬を忍ばせていた。
初見な女同士のやり取りに於ける面白味をランチア・ラオ・ポルテガは青く迷いのない瞳で決して見逃さなかった。
ルシアから事前打合せを受けたが如きランチアの嗅覚。本来在り得ない連携が華開く。
「ハァッ!!」
間髪入れず本命が右脚を出し、見えぬ翼を用い敵の根元へ滑り込む。またしても砂を飛び散らせザラレノに浴びせ掛ける不快を絡めた反撃。
ザバァッ!!
「えッ!? な、何ぃ!」
「こんな展開ッ! 僕の楽な仕事を邪魔したなッ!」
驚天動地、両者驚きに次ぐ衝撃。今度はルシア側が緑の瞳を仰天せざるを得ない番。
旧世紀時代の最先端を着込んだ巨人。砂地に潜んだ震源地の元凶がルシアの征く手を阻んだ。
されどザラレノとて着飾った唇を噛む愚策。本来なら数に勝る敵を7番目が引き付けた後、地中深く落とす役目を担わせる腹積もりであったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる