🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第3部『Chaos Surrounding the World(世界を取り巻く混沌)』

第22話『Reversal like the crashing waves(打ち寄せる波の如き逆転劇)』 A Part

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 ラオを日暮れひぐれ以降に襲撃する巨人相手を想定していたローダ一行とラオ守備隊。

 よもや昼間を暗雲で覆いおおい尽くし夜の暗がりへ転化させた上、聴覚を奪ったばかりか守備隊の命すら散らした蒼きツインテールの少女、ザラレノ・ウィニゲスタ。

 生存者達が味方の死へ哀悼あいとうの意を与える余裕慈悲さえ奪ううばう不条理ふじょうり
 耳を押え苦悶くもんの表情で蹲るうずくまる者、中には耳から血を垂れたれ流すやからも。
 然も地震が如く振動続ける地上。三半規管さんはんきかんを同時にやられ、起き上がるのさえままならぬ。

「あ、貴女風使い……。風で皆の鼓膜こまくを無理矢理振動させた」

 ルシア、咄嗟とっさの判断で耳押えて自らが送り込んだ風の精霊を反響させ、たった独り難を逃れた。
 かなり無理した荒療治防御手段新手ザラレノが送り込んだ風と外耳がいじに於いて争えば耳の痛みから逃れられない自衛手段。

「へぇ……アンタ人なんだぁ。見た感じ耳長エルフじゃなさそうだけど」

 耳を押えた金髪の女へ、赤く緩んだ視線を向けたザラレノ。
 腰回りのライン流れる長いパンツのポケットへ両手を収めた姿余裕、勝負仕掛ける緊張感は微塵みじんも受けない。

 ▷▷リイナッ! 近場の誰でも良いから生命之泉プリマベラで耳治してあげて!

 ザラレノに気取けどられる覚悟で風の精霊術、言の葉風の便りをルシアがリイナに飛ばす。
 言の葉風の便りは伝えたい相手の脳へ術者の意志をじかに届ける。故に聴覚を狂わせられたリイナ相手に意志を伝えられる唯一の手段。

「え、戦の女神エディウス神よ、この者にどうか貴女様の御慈悲ごじひを。湧き出よ──『生命之泉プリマベラ』」

 自分の声が不明瞭ふめいりょうな状態で正確無比な詠唱えいしょうげるは難儀なんぎと言えよう。それでもリイナ、必死に如何どうにかやり遂げた。近場の相手がローダであった偶然活路

「うぅ……耳が治った?」
「か、風の精霊達よ。リイナの周囲をまもって御願い!」

 状況が飲み込めぬローダが頭を振りながらゆるりと立ち上がる。
 回復出来たのがローダであった事実にルシアは運が向いて来たと見極みきわめた。

 嘗てかつて暴走したローダはルシアと争った際、彼女と同等の風を起こした試しがある。
 ルシアとの争いの最中、ローダは風の使い手としての素養そようを少なからず見出したのだと決めつけた。
 依って彼に風の護りは不要。唯一の回復役ヒーラー、リイナの守備固めを最優先だと咄嗟とっさに判断した。

「ふぅん……少しはやれそうじゃないか。アンタも」

 敵の風使い、ルシア主導の巻き返しに於ける手際てぎわの良さに少し驚いた様子のザラレノ。さりとて敵の行動を黙認もくにんしてる辺り、未だ平然を保っている模様。

あの人ラオの兵士達の死因しいんは恐らく貴女が風に運ばせた針。隙間すきまに刺せば防具も意味成さないって処かしら? 可愛い顔なのに恐ろしいやり口よね」

 顔振りながら如何どうにかザラレノの聴覚封印から復帰出来た様子のルシア。今度はラオ守備隊が暗殺された奇術Magic答え暴露ばくろした。

「御名答、だけど風の仕込みはそんだけじゃないからさぁ」

 相も変わらず争いの構えらしい態度を取らないザラレノ余裕の言い草。

 ビュゥゥゥッ!!

「へぇ……面白いだ。僕とサシ独りやる気抑える気かい?」
「──めてると痛い目見るよ

 ルシアがザラレノに砂嵐をぶつける牽制けんせい。風量で使い手の実力差に於けるを見せた。
 肌をべとつかせた潮風を言われた通りザラレノ。あからさまに引いた桜色の唇ルージュ。戦場へ気軽遊びを持ち込んだ風体ふうてい

 煽るあおるザラレノのしたり顔。
 対して真っ向勝負を挑むいどむルシアは、けわしい視線で睨み付ける跳ね除ける。加えて彼女特有なる猫の目の様な瞳孔どうこうを暗がりの最中さなか大きく開いた。

「か、彼女は風使いじゃなくて大気使いです!」

 苦心しながら敵の鼓膜こまく封じより如何どうにかのがれたリイナ。苦さあふれる蒼い目線を同世代ザラレノへ送る。
 昼間を夜に転じた暗雲を呼び込んだ相手だ、風だけで終わる道理がない必然を案じた。

 ──ウィニゲスタ……何処かで聞いた覚えが。

 リイナは14歳とは思えぬ博識はくしきな自分の頭を機能させる。出身地アドノス島のみならず世界の歴史に明るい彼女。

「問題ない、ルシアが扱うのは風だけじゃないんだ。俺達は地震巨人の相手……!」

 ズバーンッ!!

「クッ!?」

 未知なる敵と相対あいたいするルシアについて真顔で語ろうとしたローダを止めた頼れる味方の反撃。ザラレノの足元で爆発物がはじけた様な破裂音はれつおん

 ルシアとザラレノの距離。
 試合巧者こうしゃなルシアの仕掛。普段通り風の精霊術に頼り切り縮地を繰り宙を駆け出す悪手あくしゅこうじぬ。

 ルシアは囁きささやき声で風の精霊術に依る詠唱を繰り出していた。
 例え周囲の騒めきざわめきがあろうともザラレノの聴覚を誤魔化ごまかせやしない。

 それは相手をまどわす嘘の詠唱仕掛け。代わりに飛び込んだのは投擲とうてきとは思えぬほど直進した

「へッ! 俺様の前で距離を取るとか見え透いてるぜ嬢ちゃんッ!」

 真実に仕掛けたるはランチア団長の類稀たぐいまれなる投槍ジャベリン
 ザラレノは足元に火薬地雷しのばせていた。

 初見な女同士のやり取りに於ける面白味をランチア・ラオ・ポルテガは青く迷いのない瞳で決して見逃さなかった。
 ルシアから事前打合せを受けたが如きランチアの嗅覚きゅうかく。本来在り得ない連携がはな開く。

「ハァッ!!」

 間髪かんぱつ入れず本命ルシアが右脚を出し、見えぬ翼風の精霊術を用い敵の根元へ滑り込む。またしても砂を飛び散らせザラレノに浴びせ掛ける不快をからめた反撃。

 ザバァッ!!

「えッ!? な、何ぃ!」
「こんな展開ッ! 僕のを邪魔したなッ!」

 驚天動地きょうてんどうち、両者驚きに次ぐ衝撃。今度はルシア側が緑の瞳を仰天ぎょうてんせざるを得ないターン
 旧世紀22世紀時代の最先端Technologyを着込んだ巨人。砂地に潜んだがルシアの征くゆく手をはばんだ。

 されどザラレノとて着飾った唇引いたルージュ噛むかむ。本来なら数に勝る敵を7番目ザラレノが引き付けたのち、地中深く落とす役目をになわせる腹積もりであったのだ。
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