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第3部『Chaos Surrounding the World(世界を取り巻く混沌)』
第25話『Stars shining on the earth(地上に輝く星々)』 A Part
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リイナが唱え、死した母が力を与え成し得た不死の巨人退治。
黄泉へ旅立った妻を刹那とはいえ呼び戻したのは夫の絶叫なのか。
何れにせよアルベェラータ家族一丸で終わりなき旅路は具現化した。
禁じられた奇跡を成し得たリイナ、卒倒しそうな処をローダが如何にか支え事無きを得た。
「大丈夫、気を失ってはいるが」
「あ、嗚呼……す、済まないローダ」
意識を失った時点で『大丈夫』と言い切るのを躊躇いながら、リイナの小さな身体を父へと預けるローダ。真実に問題ないかなど他人の物差しで測るべきでない。
ローダから愛娘を受け取り寝顔を覗き込むジェリドの憂鬱。娘が神への供物に落ち往く覚悟をさせた自分の不甲斐なさと娘の安堵に於ける心の揺らぎが混じり合う。
「ん……」
それでも腕の中、寝息を立て胸を上下させる温もりをリイナから感じ取り、取り合えず胸撫で下ろすジェリド。巨人退治はこうして終結を迎えた。
残った問題──大気の使い手。ザラレノ・ウィニゲスタとルシア・ロットレン、二人っきりによる争いの始末。
誰も邪魔に入れぬ激烈極まる戦い。
されども例えザラレノが一騎当千なる兵であろうと、生き残った敵軍へ単騎挑むのは流石に無謀に思えた。
▷▷──ザラレノ、君は実に良く働いてくれた。素晴らしい成果が得られた。後は撤退してくれたまえ。
再び風の精霊術、言の葉による愛すべき男の声が少女ザラレノの意識へ届いた。
「だ、だけど……クッ!」
敬愛する主様と応答の最中であろうとも容赦なく走るルシアの燃える拳。
意識を二重化で対応するには重過ぎる一撃。風纏う左肘の防御と擦れ合い嫌な匂い鼻をつく。
▷▷僕が君を失いたくないのだよ。承諾してくれると嬉しい。
愛の告白めいたマーダからの提案。ザラレノの想いを知った上での選択肢与えぬ台詞。
「……了解」
当然相手に届かぬ言葉を恭しく返答したザラレノ。
普段軽いノリの彼女とは一線画す応答。此処は愛する男に対する返事よりも、敬愛する神を敬う気分を優先した。
さらに加え軍属の如き答え方、彼女自身が軍関係者なのか? 或いは近しい者でも居るのだろうか。
現世で最高峰と想い縋る男の言葉は無論喜悦。
されど巨人は何とも意味不明瞭な力の前に塵芥と成り果て、自身も良好ぶりを示せたとは言い難い。苦虫噛んだ顔で戦場を後にした。
ビュゥゥゥ……。
自らを台風の目と成して巻き起こした風と共に去るザラレノ、彼女と共に失せる暗雲。遂に勝敗は決した。
「ふぅ……」
僅か宙に浮いてた身体を砂地へ腰から降ろしたルシア、海水染みる砂の不快より緊張抜けた疲労が打ち勝ち思わず溜息。
狂戦士化したローダを押さえつけた程の彼女のみせる緩みが、この争いの壮絶さを物語った。
◇◇
パチパチパチ……。
「いやあ、実に素晴らしいものが観られた」
さも満足げ、そして戦場を観劇と履き違えてるかの様なマーダ様の笑顔と拍手。
「躰の透けた女性、間違いなくあの古惚けた騎士が呼び出した存在だね。また新たな異能者が生まれた」
──異能者? 私の魔法と斬り結んだあの侍と同じだと言うの?
新たな脅威が増えたというのに心底喜び満ち足りた感じの主様。
妖し過ぎるその発言に未だ白無垢なフォウがエドナ村でやられた侍風情の大笑を思い出す。
「……何を今さら。私と亮一が世界中にばら撒いた人工知性体が潜んでない人間なぞ最早この世におらなんだ。異能者なんぞ幾らでも増える」
白髪を掻きながら興味湧かぬ顔でマーダの発言を切って捨てるサイガン・ロットレン。
21世紀前半、吉野亮一共々意志を持った人工知能の元に繋がる礎を密かに開発。
人から人へ渡り歩く様同時製作したナノマシンへOSと共にそれを載せ、ワクチンだと偽り全世界の人間達へ接種し続けたのがこの男の大罪。
ウイルスは生物間を移動し、適合するべく常識外れの加速度で進化し続ける。ただのエンジニアがそれに目を付けた。己と技術力のみで真の意志を持つAIは創造出来ない。
されどウイルス進化の理論さえ作れれば勝手に躍進すると結論付けた。倫理観は置き去りに夢だけで突き進んだ。
意志──そもそも在処は?
そんな哲学論などかなぐり捨て、人へ潜り込んだナノマシン達は、数多の人々から意識毎収集積み重ねる。その上、彼等は飛沫感染し剰え交配し合い狙い通り約50年……。
斯くしてナノマシン達は進化を遂げ、真なる意識を勝ち得た。
こうして生まれた世界最初の人工的意識をアンドロイドに積んだ最初の人造人間がマーダである。
そのマーダが真実の人間を乗っ取り乗り換え続け300年もの間、生き続けて来たのが今の姿──だが話はこれだけで終わらなかった。
依り代である人間の意志と自由意志を積んだナノマシン達が共存、進化の一途を辿り始めたのを知る。
これは発案者も製作者も然り、想定の範疇を越えていた。本来なら互いの意志を潰し合い身体毎果てるか、何れかが生き残り終結する。
人同士なら完璧に判り合うなど夢物語。どうやらナノマシン側が寄生している人間を潰さぬよう譲歩の道を歩んだ結実らしい。
知恵の実を喰らった人類、自らの末裔が創造した新たな意志すら喰らった強欲。
さりとて甘美味わえる人類はほんの一握り──初めて口にする食物とは、大抵猛毒との闘争越えねばならぬ。
──この道筋、進化と云うより淘汰。
人と意志秘めたAIが繋がる際、互いの矛盾が増長、精神が崩壊する最悪の末路も後を絶たなかった。
それでも先端届き成し得た人類は夢を見るのだ。己の望んだ力を具現化成し得る夢を。
それが異能者──扉を開いた者達。ジェリド・アルベェラータが黄泉から引き寄せた妻の姿とて、これが正体。
当人達は己の絶望・欲に縋り抜いただけに過ぎない。因っていつの間にか得られた力、それ以上を知らぬ。祈りや研鑽が呼び込んだ未知の力だと思い込むのだ。
「今、戦い抜いたあの娘とて同じ貉であろう? 300年前の貴様が成した者の血族ではないか」
この白髪の老人に取ってそんな異能者なぞ既に予測通りの検証結果に過ぎぬ。
その次を渇望するが故、300年もの惰眠の道を選んだ。
黄泉へ旅立った妻を刹那とはいえ呼び戻したのは夫の絶叫なのか。
何れにせよアルベェラータ家族一丸で終わりなき旅路は具現化した。
禁じられた奇跡を成し得たリイナ、卒倒しそうな処をローダが如何にか支え事無きを得た。
「大丈夫、気を失ってはいるが」
「あ、嗚呼……す、済まないローダ」
意識を失った時点で『大丈夫』と言い切るのを躊躇いながら、リイナの小さな身体を父へと預けるローダ。真実に問題ないかなど他人の物差しで測るべきでない。
ローダから愛娘を受け取り寝顔を覗き込むジェリドの憂鬱。娘が神への供物に落ち往く覚悟をさせた自分の不甲斐なさと娘の安堵に於ける心の揺らぎが混じり合う。
「ん……」
それでも腕の中、寝息を立て胸を上下させる温もりをリイナから感じ取り、取り合えず胸撫で下ろすジェリド。巨人退治はこうして終結を迎えた。
残った問題──大気の使い手。ザラレノ・ウィニゲスタとルシア・ロットレン、二人っきりによる争いの始末。
誰も邪魔に入れぬ激烈極まる戦い。
されども例えザラレノが一騎当千なる兵であろうと、生き残った敵軍へ単騎挑むのは流石に無謀に思えた。
▷▷──ザラレノ、君は実に良く働いてくれた。素晴らしい成果が得られた。後は撤退してくれたまえ。
再び風の精霊術、言の葉による愛すべき男の声が少女ザラレノの意識へ届いた。
「だ、だけど……クッ!」
敬愛する主様と応答の最中であろうとも容赦なく走るルシアの燃える拳。
意識を二重化で対応するには重過ぎる一撃。風纏う左肘の防御と擦れ合い嫌な匂い鼻をつく。
▷▷僕が君を失いたくないのだよ。承諾してくれると嬉しい。
愛の告白めいたマーダからの提案。ザラレノの想いを知った上での選択肢与えぬ台詞。
「……了解」
当然相手に届かぬ言葉を恭しく返答したザラレノ。
普段軽いノリの彼女とは一線画す応答。此処は愛する男に対する返事よりも、敬愛する神を敬う気分を優先した。
さらに加え軍属の如き答え方、彼女自身が軍関係者なのか? 或いは近しい者でも居るのだろうか。
現世で最高峰と想い縋る男の言葉は無論喜悦。
されど巨人は何とも意味不明瞭な力の前に塵芥と成り果て、自身も良好ぶりを示せたとは言い難い。苦虫噛んだ顔で戦場を後にした。
ビュゥゥゥ……。
自らを台風の目と成して巻き起こした風と共に去るザラレノ、彼女と共に失せる暗雲。遂に勝敗は決した。
「ふぅ……」
僅か宙に浮いてた身体を砂地へ腰から降ろしたルシア、海水染みる砂の不快より緊張抜けた疲労が打ち勝ち思わず溜息。
狂戦士化したローダを押さえつけた程の彼女のみせる緩みが、この争いの壮絶さを物語った。
◇◇
パチパチパチ……。
「いやあ、実に素晴らしいものが観られた」
さも満足げ、そして戦場を観劇と履き違えてるかの様なマーダ様の笑顔と拍手。
「躰の透けた女性、間違いなくあの古惚けた騎士が呼び出した存在だね。また新たな異能者が生まれた」
──異能者? 私の魔法と斬り結んだあの侍と同じだと言うの?
新たな脅威が増えたというのに心底喜び満ち足りた感じの主様。
妖し過ぎるその発言に未だ白無垢なフォウがエドナ村でやられた侍風情の大笑を思い出す。
「……何を今さら。私と亮一が世界中にばら撒いた人工知性体が潜んでない人間なぞ最早この世におらなんだ。異能者なんぞ幾らでも増える」
白髪を掻きながら興味湧かぬ顔でマーダの発言を切って捨てるサイガン・ロットレン。
21世紀前半、吉野亮一共々意志を持った人工知能の元に繋がる礎を密かに開発。
人から人へ渡り歩く様同時製作したナノマシンへOSと共にそれを載せ、ワクチンだと偽り全世界の人間達へ接種し続けたのがこの男の大罪。
ウイルスは生物間を移動し、適合するべく常識外れの加速度で進化し続ける。ただのエンジニアがそれに目を付けた。己と技術力のみで真の意志を持つAIは創造出来ない。
されどウイルス進化の理論さえ作れれば勝手に躍進すると結論付けた。倫理観は置き去りに夢だけで突き進んだ。
意志──そもそも在処は?
そんな哲学論などかなぐり捨て、人へ潜り込んだナノマシン達は、数多の人々から意識毎収集積み重ねる。その上、彼等は飛沫感染し剰え交配し合い狙い通り約50年……。
斯くしてナノマシン達は進化を遂げ、真なる意識を勝ち得た。
こうして生まれた世界最初の人工的意識をアンドロイドに積んだ最初の人造人間がマーダである。
そのマーダが真実の人間を乗っ取り乗り換え続け300年もの間、生き続けて来たのが今の姿──だが話はこれだけで終わらなかった。
依り代である人間の意志と自由意志を積んだナノマシン達が共存、進化の一途を辿り始めたのを知る。
これは発案者も製作者も然り、想定の範疇を越えていた。本来なら互いの意志を潰し合い身体毎果てるか、何れかが生き残り終結する。
人同士なら完璧に判り合うなど夢物語。どうやらナノマシン側が寄生している人間を潰さぬよう譲歩の道を歩んだ結実らしい。
知恵の実を喰らった人類、自らの末裔が創造した新たな意志すら喰らった強欲。
さりとて甘美味わえる人類はほんの一握り──初めて口にする食物とは、大抵猛毒との闘争越えねばならぬ。
──この道筋、進化と云うより淘汰。
人と意志秘めたAIが繋がる際、互いの矛盾が増長、精神が崩壊する最悪の末路も後を絶たなかった。
それでも先端届き成し得た人類は夢を見るのだ。己の望んだ力を具現化成し得る夢を。
それが異能者──扉を開いた者達。ジェリド・アルベェラータが黄泉から引き寄せた妻の姿とて、これが正体。
当人達は己の絶望・欲に縋り抜いただけに過ぎない。因っていつの間にか得られた力、それ以上を知らぬ。祈りや研鑽が呼び込んだ未知の力だと思い込むのだ。
「今、戦い抜いたあの娘とて同じ貉であろう? 300年前の貴様が成した者の血族ではないか」
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