🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第3部『Chaos Surrounding the World(世界を取り巻く混沌)』

第25話『Stars shining on the earth(地上に輝く星々)』 A Part

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 リイナが唱え、死した母が力を与え背中を押して成し得た不死の巨人退治。
 黄泉へ旅立った妻を刹那せつなとはいえ呼び戻したのは夫の絶叫なのか。

 何れにせよアルベェラータ家族一丸で終わりストラーダ・なき旅路インフィニータ具現化ぐげんかした。

 禁じられた奇跡を成し得たリイナ、卒倒そっとうしそうな処をローダが如何どうにか支え事無きを得た。

「大丈夫、気を失ってはいるが」
「あ、嗚呼……す、済まないローダ」

 意識を失った時点で『大丈夫』と言い切るのを躊躇いためらいながら、リイナの小さな身体を父へとあずけるローダ。真実に問題ないかなど他人の物差しで測るべきでない。

 ローダから愛娘まなむすめを受け取り寝顔を覗きのぞき込むジェリドの憂鬱ゆううつ。娘が神への供物くもつに落ち往く覚悟をさせた自分の不甲斐ふがいなさと娘の安堵あんどに於ける心の揺らぎが混じり合う。

「ん……」

 それでも腕の中、寝息を立て胸を上下させる温もりをリイナから感じ取り、取り合えず胸撫で下ろすジェリド。巨人退治はこうして終結を迎えた。

 残った問題──大気の使い手。ザラレノ・ウィニゲスタとルシア・ロットレン、二人っきりによる争いの始末。
 誰も邪魔に入れぬ激烈げきれつ極まる戦い。

 されども例えザラレノが一騎当千いっきとうせんなるつわものであろうと、生き残った敵軍へ単騎たんき挑むいどむのは流石に無謀むぼうに思えた。

 ▷▷──ザラレノ、君は実に良く働いてくれた。素晴らしい成果結果得られた観られた。後は撤退してくれたまえ。

 再び風の精霊術、言の葉風の便りによる愛すべき男の声が少女ザラレノの意識へ届いた。

「だ、だけど……クッ!」

 敬愛けいあいする主様と応答の最中であろうとも容赦なく走るルシアの燃える拳。
 意識を二重化マルチタスクで対応するには重過ぎる一撃。風纏うまとう左肘ひだりひじの防御と擦れこすれ合い嫌な匂い煙り鼻をつく。

 ▷▷僕が君を失いたくないのだよ。承諾しょうだくしてくれると嬉しい。

 愛の告白めいたマーダルイスからの提案。ザラレノの想い愛情を知った上での選択肢与えぬ台詞。

「……了解COPY

 当然相手に届かぬ言葉を恭しくうやうやしく返答したザラレノ。
 普段軽いノリの彼女とは一線画す応答。此処は愛する男に対する返事よりも、敬愛する神を敬ううやまう気分を優先した。

 さらに加え軍属の如き答え方COPY、彼女自身が軍関係者なのか? 或いあるいは近しい者でも居るのだろうか。

 現世で最高峰と想い縋るすがる男の言葉は無論喜悦きえつ
 されど巨人は何とも意味不明瞭ふめいりょうな力の前に塵芥ちりあくたと成り果て、自身も良好ぶりを示せたとは言い難い。苦虫噛んだ顔で戦場を後にした。

 ビュゥゥゥ……。
 自らを台風の目と成して巻き起こした風と共に去るザラレノ、彼女と共に失せる暗雲。遂に勝敗は決した。

「ふぅ……」

 僅かわずか宙に浮いてた身体を砂地へ腰から降ろしたルシア、海水染みる砂の不快より緊張抜けた疲労が打ち勝ち思わず溜息。
 狂戦士バーサーカー化したローダを押さえつけた程の彼女のみせる緩みが、この争いの壮絶さを物語った。

 ◇◇

 パチパチパチ……。

「いやあ、実に素晴らしいものが観られた」

 さも満足げ、そして戦場を観劇と履きはき違えてるかの様なマーダルイス様の笑顔と拍手。

からだの透けた女性、間違いなくあの古惚ジェリド・けた騎士アルベェラータが呼び出した存在奇跡だね。また新たな異能者が生まれた」

 ──異能者? 私の魔法ディセデイオネと斬り結んだあの侍ガロウと同じだと言うの?

 新たな脅威敵兵が増えたというのに心底喜び満ち足りた感じの主様。
 妖し過ぎるその発言に未だ白無垢なシーツ一枚のフォウがエドナ村でやられた侍風情ふぜいの大笑を思い出す。

「……何を今さら。私と亮一が世界中にばらいた人工知性体自由意志のあるAIひそんでない人間なぞ最早もはやこの世におらなんだ。異能者なんぞ幾らいくらでも増える」

 白髪しらがきながら興味湧かぬ顔でマーダルイスの発言を切って捨てるサイガン・ロットレン。

 21世紀前半、吉野亮一よしのりょういち共々意志を持った人工知能の元に繋がる礎プログラムを密かに開発。
 人から人へ渡り歩く様同時製作したナノマシンへOSと共にそれを載せ、ワクチンだと偽り全世界の人間達へ接種し続けたのがこの男の大罪。

 ウイルスは生物間を移動し、適合するべく常識外れの加速度で進化し続ける。ただのエンジニアがそれに目を付けた。己と技術力のみで真の意志を持つAIは創造出来ない。

 されどウイルス進化の理論ゲノムさえ作れれば勝手に躍進やくしんすると結論付けた。倫理観りんりかんは置き去りに野望だけで突き進んだ。

 意志──そもそも在処ありかは?

 そんな哲学論などかなぐり捨て、人へ潜り込んだナノマシン達は、数多あまたの人々から意識毎収集積み重ねる。その上、彼等は飛沫感染ひまつかんせん剰えあまつさえ交配し合い狙い通り約50年……。

 斯くかくしてナノマシン達は進化をげ、真なる意識を勝ち得た。
 こうして生まれた世界最初の人工的意識をアンドロイドに積んだInstallした最初の人造人間ファーストロットがマーダである。

 そのマーダが真実の人間を乗っ取り乗り換え続け300年もの間、生き続けて来たのが今の姿──だが話はこれだけで終わらなかった。

 依り代よりしろである人間の意志と自由意志を積んだナノマシン達が共存、進化の一途いっと辿りたどり始めたのを知る。

 これは発案者サイガン製作者吉野亮一も然り、想定の範疇はんちゅうを越えていた。本来なら互いの意志を潰し合い身体毎果てるか、何れかが生き残り終結する。

 人同士なら完璧に判り合う同調するなど夢物語。どうやらナノマシン人工知性体側が寄生している人間依り代を潰さぬよう譲歩じょうほの道を歩んだ結実らしい。

 知恵の実を喰らった人類、自らの末裔まつえいが創造した新たな意志すら喰らった強欲。
 さりとて甘美かんび味わえる人類はほんの一握り──初めて口にする食物とは、大抵猛毒との闘争越えねばならぬ。

 ──この道筋、進化と云うより淘汰とうた

 人と意志秘めたAIが繋がる際、互いの矛盾意志増長ぞうちょう、精神が崩壊ほうかいする最悪の末路も後を絶たなかった。

 それでも先端せんたん届き成し得た人類は夢を見るのだ。己の望んだ力を具現化成し得る夢を。

 それが異能者──を開いた者達。ジェリド・アルベェラータが黄泉よみから引き寄せた妻の姿ホーリィーンとて、これが正体。

 当人達は己の絶望・欲に縋りすがり抜いただけに過ぎない。っていつの間にか得られた力、それ以上を知らぬ。祈りや研鑽けんさんが呼び込んだ未知の力だと思い込むのだ。

「今、戦い抜いたあの娘とて同じむじなであろう? 300年前の貴様が成した者のではないか」

 この白髪の老人に取ってそんな異能者なぞ既に予測通りの検証結果に過ぎぬ。
 渇望かつぼうするが故、300年もの惰眠の道だみんのみちを選んだ。
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