🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第4部『Spinning world(回る世界)』

第38話『Rebirth of the Obsidian Queen(復刻,漆黒の女神)』B Part

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 壊れた──黒猫RaviNeroラヴィネロから零れこぼれ落ちた
 亡霊の様な少女ルヴァエル。落差ある異形いぎょうに思わず怯えおびえ感ずるローダとルシア。此処から真実の争い始まる劣悪れつあくを想像、気が削がれる思いに駆られた。

 ヴァロウズからの助っ人、二丁拳銃使いのレイだけはらしく片時なる味方の震えに銀髪の首を傾げた。

 一方、ヴァロウズ3番目の倭刀わとう使いトレノ。
 Resistance民衆軍の実質的リーダー格、髭面ひげづらの剣士ガロウ・チュウマが一騎討ちは激化の一途辿る伯仲はくちゅう

 両者一歩足りとも退かぬ剣戟けんげき、水滴るしたたるトレノの刃。落ちたしずくがガロウの膝へと染み渡る

「グッ!──熱か剣じゃ。じゃっどんだけどもそげなそんな虚仮威しこけおどし。かえって血がたぐっど滾るぞ!」

 またしてもただの水滴に非ずあらず混じる水がガロウの服毎肌溶かす焼いた痛々しき烙印らくいん刻むきざむ
 されど心地好き雨粒浴びた様なガロウの蛮勇ばんゆう硫酸りゅうさんさえ涼しき打ち水が如しごとし顔つき。

「減らず口を……」

 腹立たしいトレノ、痛い脇腹わきばらを突かれた気分。
 この桜陽旧日本の侍『に頼らず成し得た小賢しき剣』とあおられた己の在り様。
 滾るたぎる刃のみ非ず──灼熱しゃくねつ抱えた二刀が滴りしたたり落ち往く自体を蒸発させんと盛りさかりく。

 悔やむ気持ちを地面へ刻みきざみ間合いを開いたトレノ。

 得意の左斜め下段から刃と云うより流れる水そのものを振り上げ勇猛ゆうもうだと認めた剣士へ投げる飛ばす
 続けざま、上段下段とを絵に描いたトレノの変遷へんせん。彼の動き、岩肌すら削る川の渓流けいりゅう示すと共に白き流れの美しさを体現たいげんしていた。

 ──へッ!

 ガロウ向けて襲い来る酸帯びた濁流だくりゅう。滝登り赦さぬ様相ようそう、津波の如し理不尽。
 さりとて髭面の笑顔ついえず。敵と同じく刃を下段に構え、討ち出すべく砂地踏み抜く。

示現我狼じげんがろう──『櫻道おうどう』!」

 トレノと等しく交わる剣ない立ち位置での下から降り抜いた刃。
 砂浜斬り裂き大地に眠る溶岩噴出させ、技名通りの赤き道を創造、トレノが拓いた水源流れる川の剣を見事相殺。陽から火への変遷へんせん

 トレノ、と云う全く以って人の御業みわざと思えぬガロウの剣、僅かにたじろぐも、構わず同一の太刀筋たちすじにて再び飛び道具繰り出す。

 ──ッ?

 乱れた黒髪を少し傾げかしげながらも先程と同じ櫻道おうどうで迎え討つべく逆袈裟懸けけさがけ。敵の倭刀わとう使いが効かぬと知りつつ同様の剣を捻りひねり出したのに感じた違和感。

 ピキンッ! ピキピキッ!

「なッ! ウグッ!?」

 ガロウが斬り拓いた開拓した灼熱の道が蒼白く凍結。氷山へと再錬成されたではないか。驚きひんいたガロウの視線、迂闊うかつ呼び込む。

 漁村エドナの波飛沫なみしぶき、氷の五寸釘へ転生。髭面の侍が視線奪われた最中、背中へ突き刺さる巫山戯ふざけ

 硫酸がただの水分へ返りて氷のつぶて。一見凡庸ぼんようなるトレノ、剣術の変遷へんせん。だがそれだけで終わらぬのが剣士の怒れたイカレタ矜持きょうじなのだ。

「ハァッ!」

 やはりトレノは暮れても剣豪なのだ──。

 見る者の心さえこごえる氷山の錬成すら捨て石、見る間に凍結する溶岩の背後、己の身を忍ばせ一挙いっきょ間合いを詰め征く。そして沈黙冷静吐き捨て、気合込めた最上段からの一閃いっせん

 遂に牙剝くきばむくトレノ剣士の本懐ほんかい

 トレノ舞い踊る霜刃演儀そうじんえんぎ──。
 氷上の演舞アイスダンス思わす荘厳そうごんさと滑走の氷理一対表裏一体、美しさの裏側に秘めた

「むぅッ!」

 遂にガロウの笑み失せた戦慄せんりつ、凍り往く髭面。

 キンッ! 剣、交わる残響ざんきょうさえ凍り閉ざされた。

 とうに抜刀済だがガロウ護りに徹する剣。脇差わきざし握る手を咄嗟とっさに捨て、つかを両手で掴みつかみトレノ渾身こんしんの一撃と相まみえる。

 振り下ろす者、受けて立つ男。何れも眉顰まゆひそめずいられぬ必然。

 トレノの迂闊うかつ、剣士の本能に従い正直に首級クビを獲りに向かった真っ直ぐな剣。

 殺られる──!
 剣筋予測出来ているにも関わらず鋭き剣圧に背筋ガロウ。つか握る腕に走る痺れしびれ、決死でたましい流し握力に頼れぬ分を補うおぎなう

 ダンッ!

 だがガロウ、尋常じんじょうじゃない剣の狂気呼び覚ます。
 剣狂一念けんきょういちねん──理を超えた一念いちねんの刃。

 全霊込め砂地踏み抜き、落した脇差宙を縦に転がる様。瞬時砂で創ったるい、不覚にも怯むひるむトレノ。

 あろうことか剣士の命である大太刀落として脇差握り返す奇異きいなる剣。

 当人ですらこんな知らぬ。敵の好機を潰した直後、今こそ最高の機会チャンス。理屈で動いた訳に非ず、られたらり返すのが剣の本質。

 真逆絡み合う互いの剣気殺気、両者の剣舞けんぶは千日手に及ぶのか?
 否──達人同士の真剣勝負、刹那せつななどという文学的美麗な言葉は似合わないのだ。

 ──『櫻打おうだ』!

 狙った訳でない、偶々たまたま逆手で握った脇差、拳毎燃え盛りながら刃と云うより漢の哲学叩き込むガロウの新術。『示現我狼』と技名発言するときさえ惜しむ全力。

 ガロウ、四六時中しろくじちゅうの拳がトレノ細身のあごくだかんと今にもかすめる一瞬。

 何処から両者の死闘を見物する剣神が犯すおかす悪戯いたずら
 エドナの波が荒れ狂い、闘争に水を。絶望的トレノへらされた蜘蛛の糸剣神の意志

 次なるはトレノの即興そっきょう、荒れ狂う波飛沫なみしぶき浴びた腕を凍らせた刀鍛冶かたなかじ
 脇差離さなかったガロウ、逆手に握った剣の刃と交わりし必然呼んだ。

 ガシャンッ!

「──グッ!」
「お、折れた!?」

 腕凍結させたトレノの新たな刃。
 偶然が産み落としたガロウの剣。

 何れも折れる結末呼び込んだ。脇差とはいえ剣士の命折られたガロウと、等しく夢見の能力の全霊で回し剣化した腕がれたトレノ。

 日本刀の精製は"超"が付く優秀な鍛冶師かじし、ドワーフ族でさえさじ投げる代物。
 恐らくガロウの為の剣は復活出来ない。

 一方トレノは片腕と剣士としての誇りこそ失われたものの、マーダが300年前から伝承でんしょうせしめし術式で再生叶う事であろう。されど重傷、現状このまま争い続ける訳には往かぬのだ。

 剣神は余程二人の剣舞をお気にしたか──この場は痛み分け、再戦を望んだ。
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