🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第48話『Wings of Möbius(双翼の錦)』 B Part

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 ルイス・ファルムーンの意識が目覚める以前──。
 軍と云って差し支えない連中相手に蹂躙じゅうりん余儀よぎなくされた戦之女神エディウス神の聖地アディスティラ。

 この街並み聖地を解放する。
 これはローダとルシア、自分達の意志ではなかった。
 だがリイナ・アルベェラータと云う記号が運命の螺旋らせんを伸ばし、父を喪失そうしつした哀愁あいしゅう引き摺るずる賢士けんしスオーラ・カルタネラと彼等を繋げた。

 それはあたかも人々を紡ぐつむぐ因果引力蠢いうごめいた様。この後、さらに違う者を結ぶ運命の新たな前兆にも繋がり往くのだ。

「はぁ、はぁ……。ど、何処?」

 兵学校跡地、地下の避難道を跳ねながら駆け、荒れ果てた街並みへ18の子供から大人、移ろう中途ちゅうとらしき淡い息弾ますスオーラの黄昏たそがれを追い求めた。

 ひゅぅぅ……。

 返事を転じた風、スオーラの星空示すスカーフを揺らす。風が導いた向きへ視線移す。人隠せそうな瓦礫がれきの山を見つけた。

 ▷▷──静かに、そっと此方へ。

 随分御願いお伺い。スオーラは、ハッと息飲み、荒れた息整える。
 鍵の魔女だと揶揄やゆされた相手だ。決して周りに気取けどられてはいけない当然、今さら気付いた。

 周囲の視線気にしながら戦乱の残り香瓦礫の山へゆるりと近寄る。
 意外な光景が待ち受けていた。迷彩色のマントに身を包んだをみつけた。

「ふぅ……良かった。貴女がスオーラさんね、私がルシアよ」

 マントのフードを払い除けた金髪の美女、悪戯いたずらな片目つぶってスオーラへ寄越した初見の挨拶初めまして

 スオーラは、即感じた。
 リイナの手紙で通りの美しさたたえた女性だと。但し、やけにすすけた姿形。物乞いものごいの様相をていしていた。

 ──がっ、魔女の隣に座る未だフード取らぬに心惹かれた。

 鍵の魔女ルシアは、英雄を操る妖しき存在。操り人形は既に壊れたと世間から聞かされた。
 暗がりの最中、何故男だと確信したのか──自分の理由なき思い、答えを知りたくなった。

 未だ正体明かさぬルシアの連れとおぼしき男。 不意にルシアがローダとスオーラを手を握らす。スオーラ、何かが弾け魂の中、駆け巡る響き渡り。

 ときを越える──そんな感覚知る由もない。
 されどルシアが繋いだ男の20年が一挙津波と為りて押し寄せた。他に今の自分を語るすべを持ち得なかった。

「あ、貴方がローダ・ファルムーン。英雄の座」

「……そんな偉そうなものじゃない」

 震撼しんかん走り抜け言葉にごらすスオーラへ返すローダの無愛想。フードの中で籠りこもり往く。
 特段この少女を嫌っている訳ではないのだ。彼が語らずとも娘ヒビキが。後に続ける話題を思いつかなかった。

 然しヒビキとルシア、二人の御節介が周りに聞かれたくないローダの秘め事企み。スオーラの心へ真っ直ぐ届いたのである。

 だが──リイナ・アルベェラータが紡いだ運命、思わぬ処へ爆ぜり散り往く。

 ブンッ!
 ズガッ!

 突如、風の精霊斬り裂く棒術。スオーラの手を握るローダの腕目掛け振り下ろされた。
 ローダは咄嗟とっさに腰に差した装い新たな二刀。その内、一刀だけさや毎腰から抜き取り、棒と交わる激しき出逢い争いの火演じた。

「スオーラ様に近づく不届き者!」

「──ッ!」

 それは戦之女神エディウス神の先兵、僧兵の棒術に違いなかった。
 スオーラを知り抜いた感、匂わせる怒りにじます。

 全身傷痕だらけ、特に左目からほおまで裂けた谷間の如く続いたあとが最も目立つ。無駄なモノ削ぎ落とした若き男の肉体美。

 深夜の闇に沈む袖知らずのハイネック。灰色の瞳、飾りではない誓い思わすピアス。

 何よりスオーラ様へ触れた男が赦せぬ少年兵の蜃気楼揺らぎ、怒気を己の身長より長い棒に染み渡らせた。

「ま、待ちなさいフィエロ!」

 スオーラがとどろかせた制止の声。
 構わず振り切り、無礼千万せんばんな男へ戦舞せんぶを風神の様に叩き込む。地面蹴って空から振り切り、受けられた途端とたん、横へ薙ぎなぎ払うフィエロの迅速じんそく

 だがローダは、一歩も動じず剣を抜かずさやを握り締めたまま全て受け切る。殺意無き意識の表れ。

 ──クッソ! なんでこの野郎かねえんだ! それに何だかやけに

 ──随分棒術だな。

 フィエロと呼ばれた僧兵。技の冴え、動きの映え、決して馬鹿に出来ぬ。

 されど黒塗りの鞘に納めた剣で弾くローダが、明らかにしのいでいた。
 焦り感じるフィエロの若さ、相対するローダは、フィエロから殴られる都度、異様な熱気を受け流し、若者がみせる力の本質見抜いた。

「デエオ・ラーマ、戦之女神エディウス神に我が言の葉を捧ぐ! 斬り裂け──『言之刃フォグラマ』!」

 ズガッ! ズガガガッ!

 金属に転じた木の葉が渦巻き、フィエロの足元へ夜空から無数に転じて降り注ぎ地面削る石礫いしつぶて呼び込む。
 ひるまずにいられぬフィエロの怒髪天どはつてん跳ねながら後退バックステップせざるを得ない。に斬られる愚かを如何どうにか避け切る。

 言っても聞かぬフィエロを無理矢理止めたスオーラ、凛々りりしき賢士けんし呼び込む攻勢の奇跡であった。

 その鋭き様──。
 これ迄生死賭けた争い幾度いくども演じたローダとルシアさえ戦慄せんりつ、背中駆け抜けるのを感じた。

 ◇◇

 ──貴女は誰?

 漆黒しっこく──なれど果て無く銀河、宇宙の欠片かけら

 閉ざされし銀河の、決して触れぬ互いを見やる少年少女。周囲を渦巻く雛鳥火の鳥心音心の声代わりに鳴り響く。

 ──僕はジオーネ私はリイナ

 すべからず同刻に響き渡る嘶きいななき

 ──私は僕は貴方の事を知らないリイナの事が判らない

 見えぬ壁越しにて語り合う少年と少女の不可思議。
 この様子、ジオーネとリイナの視線が絡み合った刻の深層心理を示した図式だ。

 ──

 記憶中枢ではない──理屈じゃ説明出来ぬ。
 即時理由の在り処を求めたがる大人の世知辛さ、さがし出さねば安心出来ない切なさ。

 されど幼き器はそんな上辺うわべ要らぬのだ。歳を重ねるにつれ、知識の代価に失われる大切な何か。

 ──あ、アレ? 何これな、涙

 ジオーネとリイナはに浮き、鏡に映えた己を見る気分なのだ。ほおを伝うものの在処ありか、これだけ理由を知りたかった。

 知り尽くした。
 求め合った。
 そして漸くようやく再び巡り逢えた。

 それなのに、間違いないのに互いを知らないもどかしさ。

 不死鳥受け継ぎしカスード家の斬新ざんしんな器ジオーネ。
 ジオーネ水の惑星──Geoの名前刻んだ通りの重力。
 この邂逅かいこうを天性そのまま創り出し、リイナと云う名も無き星の輝きと、互いが紡いだ火炎のを引き込んだ。

 輪廻りんねの炎──軌跡奇跡描いた二人の不死鳥だけ、擦りすり切れるほど重ね交わったほむらだけが描けるむなしさ、切なさだけが残留した。
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