🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第51話『Deliverance of Vīs(威斯(いこう)の解脱)』 A Part

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 エドル神殿跡の影に沈んでいたヴァロウズ6番目の鬼女オーグリスセイン。
 活火山の景色に化け、ジオーネ・エドル・カスードとリイナ・アルベェラータの殲滅せんめつ目論もくろんだ結果、不死鳥フェニックス召喚に頼るしかない状況を望んだ。

 己の姿さえも活火山へ沈めた上で攻勢だけ寄越よこすセインの狡猾チート
 これに対しジオーネは不死鳥由来の能力『不可Invisi視化bilità』を発現はつげん
 手を繋いだリイナ共々、この両者も火山の景色へ消え失せた。

 カメレオンの様に景色へ溶け込んだだけと決め込んだセインは、火山弾を豪雨の如く降らし少年少女憐れな餓鬼共炙りあぶり出しを狙うのだ。

 ──な、何故? 如何してこれだけ降らしたのに反応が返って来ないの!?

 不死鳥の座であるジオーネは兎も角ともかくもうリイナ・独りの娘アルベェラータがあっという間に尻尾しっぽを出すと踏んでいたセイン。大いにあせる。

 ──『何故餓鬼ガキ共が出て来ない? そう思っているな灰色の鬼女オーグリス

 如何いかにも勝ち誇った心の声、接触Contatto鬼女セインの心を突き刺し貫いた。紛うまごう事無き、セインが語る少年餓鬼の声音だ。

「ふ、巫山戯ふざけた真似をッ!」

 鬱憤うっぷん弾け飛ぶセイン苛立いらだちの文句。慌ただしさが声に染み出ていた。

 ──『この不可Invisi視化bilitàは、不死鳥へ命あずけた隠れ蓑かくれみのなんだ。然も術者が認めた人間リイナも対象。だからさ、そんなちゃちい石ころなんて当たる訳ないよ』

 接触Contattoを用い一方的に自分の優位性を訴えたジオーネの悦楽えつらく
 火山弾を『石ころ』と蔑むさげすむ余裕をき付けた。

「調子に乗ってんじゃねえよこのクソ餓鬼ぃ!」

 つのる苛立ちから完全にが出た鬼女の発言聞き付けたジオーネ、あどけない顔に似合わぬ冷笑浮かんだ。

「そ、そぅ……この力がなら…ね」

 これは接触Contattoに在らずなジオーネの本音弱音不可Invisi視化bilitàに守られたリイナの耳にだけ届いた声音こわねだ。

 接触Contattoに依る発言こそ強気で捻じねじ込むジオーネだが、リイナが聴いた彼の本心発言していた。
 リイナ、ジオーネの不可思議な戦いぶりと消耗の二重ふたえが、候補者の彼に重なる近視感きんしかんを呼んだ。そう──扉の力を解放したローダ・ファルムーンの変身と近しい危うさである。

 人間の限界を越えながら戦う都度つど、進化し続ける候補者ローダ
 ローダ進化の過程ですらうつろなものを感じたリイナ。ジオーネの場合、力のがまるで無きを疑い始めた。

 リイナがジオーネに感じる疑念ぎねんとは、彼が扉の使い手と云う意味で決してない。
 弱冠じゃっかん12歳でこの力の体現たいげんは過ぎたるものを感じた。ローダに近しい無茶を押してる様を察したと云う意味だ。

 また黒のカソックに並んだ飾りだと思えたカフスボタンがひとつ消えていた。
 まるで不可Invisi視化bilità力のに思えた。それに先ほど不可Invisi視化bilitàを扱う以前、舌打ちしたのもリイナ気掛かりの一因いちいんである。

 息を切らしながらジオーネ、ポケットから折り畳みたたみナイフを取り出した。

「た、例え居場所見えなくてもさ。…そ、それだけ大声出せば想像つくよ鹿

 刃を開いて引き出したナイフがリイナの見知らぬ宙へ舞い飛ぶのが見えた。恐らくジオーネには知れた敵の居所目掛け、操舵Navigazion用いて狙いましたのだ。

 キラリッ。

 活動激しき火口付近、何やら光る影が此方へ向かって飛び込むのに気付いたセイン。子供の浅知恵あさぢえに口角上げた。

 ──あの餓鬼が寄越よこしたナイフか。

 自分達の位置をさらす愚かな様子を感じた。悠々ゆうゆう往なして、一挙反撃へ転じれば済む楽な仕事。
 もっとも火山弾が当らなぬむなしさを計算に入れねば思わぬしっぺ返しを喰らうやも知れない。

 兎も角ともかく先決すべきは、小賢こざかしいナイフをかわす事だ。
 先程の矢尻同様、操舵Navigazionに依るジオーネの遠隔操作で避けても追尾されるのは想像容易たやすい。

 ズバーンッ!

 ベランドナから模倣コピーした光の精霊帯びた矢尻を四方から、たった1本のナイフへ放つ鬼女セインの圧倒的迎撃。
 狼狽うろたたま思わせるナイフなぞ余裕で砕き散らせば済む。セインが思い描いた勝利の方程式。

 数式の外から邪魔する想定外の答え弾き出すとは思いも寄らなかった。
 セインへ向け飛び交うナイフが跳ねた増えた挙句、互いに向き変え光の矢尻を悉くことごとく避けたのだ。

「はぁッ!? ウグッ!!」

 セイン、気付いた時には既に手遅れ。二手に分かれたナイフがブーメランの様に回転しながら、鬼女の首を斬り裂く千載一遇せんざいいちぐう。見事機会チャンスをものにした。

 セインが敗れ、ジオーネ達を覆うおおう火山の景色も途端とたんに消えた。幻術へ集中寄せる為の精神力を失った。

「カハッ!」

 されど見事会心の一撃を決めたジオーネも吐血し、彼等を隠した不可Invisi視化bilitàとて共に果てた。

「──ッ!?」

 からだが燃え尽きそうな蝋燭ろうそく灯火ともしびが如く揺らいだ少年の元、リイナが慌てて寄り添いジオーネの手を握る。血管か細い脈を測ろうとした彼女、同時に色を失う。

「じ、ジオーネ君? き、君まさか!?」

 リイナは即座に察した、少年の命短き様を。細胞分裂活性化プリマべラの奇跡掛けられぬ余剰寿命、既に道は閉ざされていた。

 不死鳥──永遠の座。
 だが使い手は人生逸する捧げた永久の旅立ちのホームに独り寂しく立ち尽くしている様子が知れた。

 模倣=imitazione。

 先程ジオーネがナイフを二重に分裂させた御業みわざの名前だ。
 ずっと涼し気な顔と口調で敵を威嚇いかくし続けたジオーネ少年。その実、己の命をかえりみない解脱げだつの道を試みていた。

 敵の物真似ばかり続けた鬼女オーグリスの最後を引き出した──かに思えた次の瞬間。

 首から血を垂れ流した痛々しき姿なれど、鬼女は己を斬られた憤慨ふんがい堪えこらえ静寂せいじゃく引き連れ立ち上がる。

 続けて灰色のの髪を金色こんじきへ変え、頼り甲斐の神格。ベランドナの姿へ化ける神の一手掠めかすめ取る。

「べ、ベランドナさん! 無事だったんですね! じ、ジオーネ君が!」

 幾らいくらジオーネ少年のが心配で気が触れていたとはいえ、リイナの縋り甘えは余りに彼女らしくなく、兎も角ともかく迂闊うかつ過ぎた。

「り、リイナ様。だ、駄目だッ!」

 ジオーネは当然、それが偽物の器である事を知り抜いていた。
 然し哀しきかな、躰云う利かずリイナを止めるに至れない。ジオーネには透けて見えた気がした。世界で一番大切な女性が鬼女セイン堕ちる喰われる地獄の様を。

 ビリッ! ビリリィッ!!

 此れは何とした事か。
 リイナが救済求めたベランドナが真ん中から紙切れが如く敗れ散った!

「我がMasterドゥーウェンに化けるだけでなく、このベランドナへなりすまし、リイナ様をだまそうなどとッ!」

 憤激ふんげきの品性──歯軋りはぎしりに揺れた流麗りゅうれい
 精霊達と心通わす優美なハイエルフ、紅の瞳を真っ赤にたぎらせ、全身を怒気の団塊だんかいへ転じた。

 自分へ化けた恨みうらみだけに在らずなベランドナ。
 魂の輝き燃やし尽くして奮戦ふんせんする12歳の少年。

 未来無き見えぬ最中、自ら切り拓こうと足掻あがいた者に対する鬼女愚物凌辱りょうじょく見殺す。300年溜め込んだ鬱憤うっぷん報いむくいと成した。
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