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第5部『Resonant Fate(響命)』
第52話『No Future(渇望する活路)』 B Part
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ローダ・ファルムーンがひそりと煽動し始めたロッギオネ奪還劇。
自分達二人は裏方へ回る。それは一向に構わない。
なれど旧マーダ軍に押し潰された戦之女神に仕えし者共。戦力不足が如何ともし難いと感じたローダは、またしても偽の賢士ルオラを通じ策を投じた。
策とは云えど大した話ではない。修道騎士副長ルッソ・グエディエルに働き掛け、志願兵集めを勧めさせた。
この提案にはルッソ、流石に当初反論せずに要られなかった。『神聖なる神の争いに金で雇った志願兵を用いるのは愚策です』神の御使いに恥じぬ発言を返したのである。
良く云えば気骨溢れると云った処だが、未だ現実が見えていないと言わざるを得ない。然も『仮に勝利を収めたとして志願兵に支払う路銀がない』と云う現実論も飛び出した。
これにはさしもの英雄とて閉口した。神様とて金は必要経費なのだ。
現在閉ざされた女神の都を訪れ、祈りと貢ぎを捧げる有難き信者は皆無だ。
だが民衆の気分をよく知るローダは、直ぐに代替案を用意。Forteza市で待機中の学者ドゥーウェンへ打電した。
『女神の都奪還に向け、Fortezaは、即時全力を以ってこれにあたれ』
元々Resistanceが団結し、ロッギオネ奪還の任にあたると言い出した話だ。
ドゥーウェンは、この申し出を快諾。女神の都を手中に取り戻すべく、資金援助をルッソに固く約束。
当初Resistanceと先端技術一点張りのFortezaからの申し出を叩き切ったルッソも、我が都が如何に重要視されているのを実感。遂に手を取り合えた。
これには無論、裏が在る──。
志願兵収集に出向く連中、実の処その過半がResistanceからの出向組。
連中にはロッギオネへの出向費と云う御題目で通常の兵士達より、少し多めの給金を積んだ。
Resistance内部から出向すれば、一介の傭兵を雇う賃金より安上がりだし、何より英雄の指示に従わせ易いと踏んだ。
それでも資金不足がResistanceとFortezaの資金繰りへ圧し掛かる分は、Forteza市民富裕層へ寄付金を募った。
市民から上がる必然なる不満。だがローダから言い含められた言葉をドゥーウェンが涙ながらに論じた。
『女神の都へ再び礼拝出来る祝福をどうか勝ち取らせて頂きたい。またこのままでは、司祭や賢士の人材不足が深刻化します』
呆れる程、効果は絶大だった。
アドノス島へ渡る以前、失われた世界遺産に頭を抱える国々を目の当たりにしたローダ。
22世紀、連合国軍に依る酷い粛清で喪失した文明は、国の尊厳と国庫を傾ける程の深刻さであるのを肌で知れた。
人類の信心深さは立派な一大産業なのだ。西暦の暦廃れようとも、人々は縋る神を強く欲したのである。
寧ろ頭が痛かったのは『英雄ローダ、実は生き延びた。故にアドノス島を解放する』この真実を何処迄、どの様に伝えるかであった。
何しろ『実は生きてた』を未だ公にしてない上、胎児で在りながら意志を全開放するヒビキの能力は、ドゥーウェンにすら伏せてあるのだ。
取り敢えず一時的に『英雄の仇討ち、女傑ルシア・ロットレンを推し立てた解放運動』に留めた。
ローダ達にしてみれば何とも面倒極まりない話。いっそ自分達が独断で先陣切りたい程、馬鹿げた話に思えた。
もうひとつ、頭の可笑しき話が在る。
旧マーダ軍が蹂躙し尽くしたアドノス島、未だ解放出来ない箇所も存在する。
だがルヴァエルの様な『外敵』を迎え撃つべく、一致団結するのならば内地で争う馬鹿は即刻辞めるべきだ。
ドゥーウェンはこれを独断専行で決め、ルイス・ファルムーンへ『弟ローダ様は生きておられる』と含みを洩らした。
これは浅はか甚だしき身勝手な行為であった。
ルイスは『判ったよ、僕達側からこれ以上攻め入る馬鹿はしない。だけどね、真の候補者ならば自分の力を示す事だ』と突っ撥ねる必然呼び込んだ。
ルイスとて未だ候補者の器である己を討ち捨ててなどいないのだ。だから『アドノスの平和を護る為』と云うドゥーウェンの口添えは、余分な争いの火種と化した。
大層余分な説明が尾を引いたものの、こうしてロッギオネ奪還に向けた下準備が漸く整いつつあった。
2日後の深夜、新月の闇を狙って敵を一挙討ち滅ぼす。
またしても偽の器である賢士ルオラを通じ、作戦が修道騎士副長ルッソ・グエディエルの元へ届けられた。
決戦を前に志願兵扮したResistanceの強者達が続々と集結。
但し敵の本拠地であるアディスティラ内ではなく、通じた地下道へ軒を連ねた。区分けした部屋を用意するゆとりなど在る訳がない。各々簡易的な天幕を張る等しながら応対させた。
隠れた英傑二人、ローダとルシアとて当然同様の扱いである。
特に動揺した様子はなかった。ただ地下道は余りに人が溢れかえっていたので、二人は適当な廃墟に身を隠し、毎夜移り住む暮らしを自分達に強いていた。
今宵も同様、屋根も壁とて筒抜けな居場所を陣取り、決戦の夜を待ち詫びていた。
敗北の二文字──?
頭の片隅にもない。味方の被害をどれだけ減らすか、それだけが二人に取っての気掛かりである。
「ねぇ……闇討ちは効果的だと思うんだけど、新月って引っ掛かるのよ」
かなり欠け落ちた月を見上げながら、ルシアがいい加減洗いたいベトついた金髪を、濡らした布で拭きながら、寡黙な彼氏へ話題を振った。
「この街、散々荒らされ街灯が殆どない。そもそも作戦時には残った家の灯りも全て消させる。後はこの街の道筋明るい者に先導させる……が、俺も失策じゃないか正直気にしてた」
一見、黙々と焚火の灯りを冷静に調整する普段通りのローダである。
実際には痛い処を突かれた気分に駆られた。
新月──。
暗がりを進撃に活用したい者に取って最大値へ振れた一夜をルシアは気掛かりだと指摘した。
敵の主犯格が人でない可能性を考慮した上での懸念なのだ。
「だが賽は投げてしまった。今さら憶測だけで『延期したい』などと言えない。味方の士気に影響する」
ローダはルシアの方へ視線送らず、焚火弄りに精を出す。
何しろ戦之女神の一番弟子より送り届けた御告げなのだ。
女神の御旗の掲げ、正義の進軍成そうとする者共に『間違いでした』などと御告げを曲げる事など出来やしない。
「ふぅ……」
頼り無き月灯りを見上げ珍しくローダが溜息吐いた。
ラオ守備隊の連中と共に結構な頭数揃えた争いも経験こそした。然し結局の処、あの時は好きに戦ったに過ぎないのだ。
今回とて自由を渇望する戦いには違いない。
されど背負う命の重さを感じ、吐く息に乗せたローダである。
そして欠けた月影の中、若い二人の男女が浮かぶ錯覚を感じた。スオーラとフィエロだ。
「んッ……」
不意にルシアがローダの背中に自分の背を預けた。柔い身体がローダの緊張を少し和らげた。
さらにルシア、背を預けたまま右手を絡める。心安らぐ手がローダの魂に揺らぎを与えた。
「護ろ、私と貴方で必ず……」
ルシアの優しさにローダの不安が朧気に変わり、やがて失せた。彼女も同じだったと知り、ローダの顔が綻びみせた。
自分達二人は裏方へ回る。それは一向に構わない。
なれど旧マーダ軍に押し潰された戦之女神に仕えし者共。戦力不足が如何ともし難いと感じたローダは、またしても偽の賢士ルオラを通じ策を投じた。
策とは云えど大した話ではない。修道騎士副長ルッソ・グエディエルに働き掛け、志願兵集めを勧めさせた。
この提案にはルッソ、流石に当初反論せずに要られなかった。『神聖なる神の争いに金で雇った志願兵を用いるのは愚策です』神の御使いに恥じぬ発言を返したのである。
良く云えば気骨溢れると云った処だが、未だ現実が見えていないと言わざるを得ない。然も『仮に勝利を収めたとして志願兵に支払う路銀がない』と云う現実論も飛び出した。
これにはさしもの英雄とて閉口した。神様とて金は必要経費なのだ。
現在閉ざされた女神の都を訪れ、祈りと貢ぎを捧げる有難き信者は皆無だ。
だが民衆の気分をよく知るローダは、直ぐに代替案を用意。Forteza市で待機中の学者ドゥーウェンへ打電した。
『女神の都奪還に向け、Fortezaは、即時全力を以ってこれにあたれ』
元々Resistanceが団結し、ロッギオネ奪還の任にあたると言い出した話だ。
ドゥーウェンは、この申し出を快諾。女神の都を手中に取り戻すべく、資金援助をルッソに固く約束。
当初Resistanceと先端技術一点張りのFortezaからの申し出を叩き切ったルッソも、我が都が如何に重要視されているのを実感。遂に手を取り合えた。
これには無論、裏が在る──。
志願兵収集に出向く連中、実の処その過半がResistanceからの出向組。
連中にはロッギオネへの出向費と云う御題目で通常の兵士達より、少し多めの給金を積んだ。
Resistance内部から出向すれば、一介の傭兵を雇う賃金より安上がりだし、何より英雄の指示に従わせ易いと踏んだ。
それでも資金不足がResistanceとFortezaの資金繰りへ圧し掛かる分は、Forteza市民富裕層へ寄付金を募った。
市民から上がる必然なる不満。だがローダから言い含められた言葉をドゥーウェンが涙ながらに論じた。
『女神の都へ再び礼拝出来る祝福をどうか勝ち取らせて頂きたい。またこのままでは、司祭や賢士の人材不足が深刻化します』
呆れる程、効果は絶大だった。
アドノス島へ渡る以前、失われた世界遺産に頭を抱える国々を目の当たりにしたローダ。
22世紀、連合国軍に依る酷い粛清で喪失した文明は、国の尊厳と国庫を傾ける程の深刻さであるのを肌で知れた。
人類の信心深さは立派な一大産業なのだ。西暦の暦廃れようとも、人々は縋る神を強く欲したのである。
寧ろ頭が痛かったのは『英雄ローダ、実は生き延びた。故にアドノス島を解放する』この真実を何処迄、どの様に伝えるかであった。
何しろ『実は生きてた』を未だ公にしてない上、胎児で在りながら意志を全開放するヒビキの能力は、ドゥーウェンにすら伏せてあるのだ。
取り敢えず一時的に『英雄の仇討ち、女傑ルシア・ロットレンを推し立てた解放運動』に留めた。
ローダ達にしてみれば何とも面倒極まりない話。いっそ自分達が独断で先陣切りたい程、馬鹿げた話に思えた。
もうひとつ、頭の可笑しき話が在る。
旧マーダ軍が蹂躙し尽くしたアドノス島、未だ解放出来ない箇所も存在する。
だがルヴァエルの様な『外敵』を迎え撃つべく、一致団結するのならば内地で争う馬鹿は即刻辞めるべきだ。
ドゥーウェンはこれを独断専行で決め、ルイス・ファルムーンへ『弟ローダ様は生きておられる』と含みを洩らした。
これは浅はか甚だしき身勝手な行為であった。
ルイスは『判ったよ、僕達側からこれ以上攻め入る馬鹿はしない。だけどね、真の候補者ならば自分の力を示す事だ』と突っ撥ねる必然呼び込んだ。
ルイスとて未だ候補者の器である己を討ち捨ててなどいないのだ。だから『アドノスの平和を護る為』と云うドゥーウェンの口添えは、余分な争いの火種と化した。
大層余分な説明が尾を引いたものの、こうしてロッギオネ奪還に向けた下準備が漸く整いつつあった。
2日後の深夜、新月の闇を狙って敵を一挙討ち滅ぼす。
またしても偽の器である賢士ルオラを通じ、作戦が修道騎士副長ルッソ・グエディエルの元へ届けられた。
決戦を前に志願兵扮したResistanceの強者達が続々と集結。
但し敵の本拠地であるアディスティラ内ではなく、通じた地下道へ軒を連ねた。区分けした部屋を用意するゆとりなど在る訳がない。各々簡易的な天幕を張る等しながら応対させた。
隠れた英傑二人、ローダとルシアとて当然同様の扱いである。
特に動揺した様子はなかった。ただ地下道は余りに人が溢れかえっていたので、二人は適当な廃墟に身を隠し、毎夜移り住む暮らしを自分達に強いていた。
今宵も同様、屋根も壁とて筒抜けな居場所を陣取り、決戦の夜を待ち詫びていた。
敗北の二文字──?
頭の片隅にもない。味方の被害をどれだけ減らすか、それだけが二人に取っての気掛かりである。
「ねぇ……闇討ちは効果的だと思うんだけど、新月って引っ掛かるのよ」
かなり欠け落ちた月を見上げながら、ルシアがいい加減洗いたいベトついた金髪を、濡らした布で拭きながら、寡黙な彼氏へ話題を振った。
「この街、散々荒らされ街灯が殆どない。そもそも作戦時には残った家の灯りも全て消させる。後はこの街の道筋明るい者に先導させる……が、俺も失策じゃないか正直気にしてた」
一見、黙々と焚火の灯りを冷静に調整する普段通りのローダである。
実際には痛い処を突かれた気分に駆られた。
新月──。
暗がりを進撃に活用したい者に取って最大値へ振れた一夜をルシアは気掛かりだと指摘した。
敵の主犯格が人でない可能性を考慮した上での懸念なのだ。
「だが賽は投げてしまった。今さら憶測だけで『延期したい』などと言えない。味方の士気に影響する」
ローダはルシアの方へ視線送らず、焚火弄りに精を出す。
何しろ戦之女神の一番弟子より送り届けた御告げなのだ。
女神の御旗の掲げ、正義の進軍成そうとする者共に『間違いでした』などと御告げを曲げる事など出来やしない。
「ふぅ……」
頼り無き月灯りを見上げ珍しくローダが溜息吐いた。
ラオ守備隊の連中と共に結構な頭数揃えた争いも経験こそした。然し結局の処、あの時は好きに戦ったに過ぎないのだ。
今回とて自由を渇望する戦いには違いない。
されど背負う命の重さを感じ、吐く息に乗せたローダである。
そして欠けた月影の中、若い二人の男女が浮かぶ錯覚を感じた。スオーラとフィエロだ。
「んッ……」
不意にルシアがローダの背中に自分の背を預けた。柔い身体がローダの緊張を少し和らげた。
さらにルシア、背を預けたまま右手を絡める。心安らぐ手がローダの魂に揺らぎを与えた。
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