🗡️🐺Roda『The One Who Opens the Door to the World』(ローダ・世界の扉を拓く者)

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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第5部『Resonant Fate(響命)』

第52話『No Future(渇望する活路)』 B Part

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 ローダ・ファルムーンがひそりと煽動せんどうし始めたロッギオネ奪還だっかん劇。

 自分達二人は裏方へ回る。それは一向に構わない。
 なれど旧マーダ軍に押し潰された戦之女神エディウス神に仕えし者共。戦力不足が如何いかんともし難いと感じたローダは、またしても偽の賢ルシアの士ルオラ風の精霊術を通じ策を投じた。

 策とは云えど大した話ではない。修道騎士副長ルッソ・グエディエルに働き掛け、志願兵集めをすすめさせた。
 この提案にはルッソ、流石に当初反論せずに要られなかった。『神聖なる神の争いに金で雇った志願兵を用いるのは愚策ぐさくです』神の御使いに恥じぬ発言を返したのである。

 良く云えば気骨きこつあふれると云った処だが、未だ現実が見えていないと言わざるを得ない。然も『仮に勝利を収めたとして志願兵に支払う路銀ろぎんがない』と云う現実論も飛び出した。

 これにはさしもの英雄ローダとて閉口した。神様とて金は必要経費なのだ。
 現在閉ざされた女神の都を訪れ、祈りと貢ぎみつぎささげる有難き信者は皆無だ。

 だが民衆の気分をよく知るローダは、直ぐに代替案を用意。Fortezaフォルテザ市で待機中の学者ドゥーウェンへ打電した。

女神の都ロッギオネ奪還だっかんに向け、Fortezaフォルテザは、即時全力を以ってこれにあたれ』

 元々Resistance民衆軍側が団結し、ロッギオネ奪還の任にあたると言い出した話だ。
 ドゥーウェンは、この申し出を快諾かいだく女神の都ロッギオネを手中に取り戻すべく、資金援助をルッソロッギオネ側に固く約束。

 当初Resistance民衆軍側と先端技術一点張りのFortezaフォルテザからの申し出を叩き切ったルッソも、我が都が如何に重要視されているのを実感。遂に手を取り合えた。

 これには無論、裏が在る──。
 志願兵収集に出向く連中、実の処その過半がResistance民衆軍側からの

 連中にはロッギオネへの出向費と云う御題目で通常の兵士達より、少し多めの給金を積んだ。
 Resistance民衆軍側内部から出向すれば、一介の傭兵ようへいやとう賃金より安上がりだし、何より英雄ローダの指示に従わせ易いやすいと踏んだ。

 それでも資金不足がResistance民衆軍側Fortezaフォルテザの資金繰りへ圧しのし掛かる分は、Fortezaフォルテザ市民富裕層へ寄付金をつのった。

 市民から上がる必然なる不満。だがローダから言い含められた言葉をドゥーウェンが涙ながらに論じた。

女神の都ロッギオネへ再び礼拝れいはい出来るをどうか勝ち取らせて頂きたい。またこのままでは、司祭や賢士けんしの人材不足が深刻化します』

 あきれる程、効果は絶大だった。
 アドノス島へ渡る以前、失われた世界遺産に頭を抱える国々を目の当たりにしたローダ。

 22世紀、連合国軍に依る酷い粛清しゅくせい喪失そうしつした文明は、国の尊厳そんげん国庫こっこかたむける程の深刻さであるのを肌で知れた。

 人類の信心深さは立派な一大産業なのだ。西暦の暦すたれようとも、人々は縋るすがる神を強く欲したのである。

 寧ろむしろ頭が痛かったのは『英雄ローダ、実は生き延びた。故にアドノス島を解放する』この真実を何処迄、どの様に伝えるかであった。

 何しろ『実は生きてた』を未だおおやけにしてない上、胎児たいじで在りながら意志を全開放する心閉ざす扉が無いヒビキの能力は、ドゥーウェンにすらせてあるのだ。

 取り敢えず一時的に『英雄のあだ討ち、女傑ヒロインルシア・ロットレンを推し立てた解放運動』に留めた。
 ローダ達にしてみれば何とも面倒極まりない話。いっそ自分達が独断で先陣切りたい程、馬鹿げた話に思えた。

 もうひとつ、頭の可笑おかしき話が在る。
 旧マーダ軍が蹂躙じゅうりんし尽くしたアドノス島、未だ解放出来ない箇所も存在する。

 だがルヴァエルの様な『外敵』を迎え撃つべく、一致団結するのならば内地島内で争う馬鹿は即刻辞めるべきだ。

 ドゥーウェンはこれを独断専行で決め、ルイス・ファルムーンへ『弟ローダ様は生きておられる』と含みをらした。

 これは浅はか甚だしきはなはだしき身勝手な行為であった。

 ルイスは『判ったよ、僕達側からこれ以上攻め入る馬鹿はしない。だけどね、真の候補者ならば自分の力を示す事だ』と突っねる必然呼び込んだ。

 ルイスとて未だ候補者の器である己を討ち捨ててなどいないのだ。だから『アドノスの平和を護る為』と云うドゥーウェンの口添えは、余分な争いの火種と化した。

 大層余分な説明が尾を引いたものの、こうしてロッギオネ奪還に向けた下準備が漸くようやく整いつつあった。

 2日後の深夜、新月の闇を狙って敵を一挙いっきょ討ち滅ぼす。
 またしても偽の器である賢士ルシア・ルオラロットレンを通じ、作戦が修道騎士副長ルッソ・グエディエルの元へ届けられた。

 決戦を前に志願兵ふんしたResistance民衆軍側の強者達が続々と集結。

 但し敵の本拠地であるアディスティラ内ではなく、通じた地下道へのきを連ねた。区分けした部屋を用意するゆとりなど在る訳がない。各々簡易的な天幕テントを張る等しながら応対させた。

 隠れた英傑えいけつ二人、ローダとルシアとて当然同様の扱いである。

 特に動揺した様子はなかった。ただ地下道は余りに人が溢れかえっていたので、二人は適当な廃墟はいきょに身を隠し、毎夜移り住む暮らしを自分達にいていた。

 今宵こよいも同様、屋根も壁とて筒抜けな居場所を陣取り、決戦の夜を待ちびていた。

 敗北の二文字──?
 頭の片隅かたすみにもない。味方の被害をどれだけ減らすか、それだけが二人に取っての気掛かりである。

「ねぇ……闇討ちやみうちは効果的だと思うんだけど、って引っ掛かるのよ」

 かなり欠け落ちた月を見上げながら、ルシアがいい加減洗いたいベトついた金髪を、濡らした布できながら、寡黙かもくな彼氏へ話題を振った。

「この街、散々荒らされ街灯が殆どない。そもそも作戦時には残った家の灯りも全て消させる。後はこの街の道筋明るい者に先導させる……が、俺も失策じゃないか正直気にしてた」

 一見、黙々と焚火たきびの灯りを冷静に調整する普段通りのローダである。
 実際には痛い処を突かれた気分に駆られた。

 新月──。
 暗がりを進撃に活用したい者に取って最大へ振れた一夜をルシアは気掛かりだと指摘した。
 敵の主犯格が人でない可能性を考慮した上での懸念けねんなのだ。

「だがさいは投げてしまった。今さら憶測だけで『延期したい』などと言えない。味方の士気に影響する」

 ローダはルシアの方へ視線送らず、焚火弄りいじりに精を出す。

 何しろ戦之女神エディウス神一番弟子賢士ルオラより送り届けた御告げなのだ。
 女神の御旗みはた掲げかかげ、正義の進軍成そうとする者共に『間違いでした』などと御告げを曲げる事など出来やしない。

「ふぅ……」

 頼り無き月灯りを見上げ珍しくローダが溜息吐いた。
 ラオ守備隊の連中と共に結構な頭数揃えた争いも経験こそした。然し結局の処、あの時は好きに戦ったに過ぎないのだ。

 今回とて自由を渇望かつぼうする戦いには違いない。
 されど背負う命の重さを感じ、吐く息に乗せたローダである。
 そして欠けた月影の中、若い二人の男女が浮かぶ錯覚さっかくを感じた。スオーラとフィエロだ。

「んッ……」

 不意にルシアがローダの背中に自分の背を預けた。柔いやわい身体がローダの緊張を少しやわらげた。
 さらにルシア、背を預けたまま右手を絡める。心安らぐ手がローダの魂に揺らぎを与えた。

「護ろ、私と貴方で必ず……」

 ルシアの優しさにローダの不安が朧気おぼろげに変わり、やがて失せた。彼女も同じだったと知り、ローダの顔が綻びほころびみせた。
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