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第6部『Reunion & Admonition(再会と”最戒”)』
第67話 『Prophets of Spiritual Communication(伝心の預言者達)』 B Part
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ローダ・ロットレンとしての懇願。
世辞にも素直と云えないサイガン・ロットレンの受け入れ。
そして如何にか終わったルシア・ロットレンの化粧直し。
凍りついた海の上に薄っすら積もった白い雪の様な色のドレスに着替えたルシア。
妻と娘が転じた様を見て言葉を失う二人のロットレン。
斯くして今夜二度目、異例なる誓いの祝詞がエリナ・ガエリオ司祭から告げられた。
ローダが用意した結婚指輪──。
削りの装飾が施されたプラチナリングの中央、薄紅色のルビーが二人の愛情と、絶えることなき情熱を込めた。
ローダが箱を開いた途端、風の精霊が悪戯したのかルシアの金色の髪と純潔なるドレスを揺らした。
エリナ司祭の御告げに合わせ、指輪を交換するローダとルシア。友人達のいない誓いがかえって二人に別の心地良さを呼び込む。
二人の幸せに自分の様なエゴイストが加担出来たのかと思えば、こそばゆくもあるが、自分が為した最高傑作である娘と新たに増えた家族の笑顔。
サイガン翁、顔を逸らして密かに肩を揺らしたのであった。
此処にもう独り──当人的には部外者に落とせる存在。血の繋がりがないルシアの妹リイナ・アルベェラータだ。
自分が何故此処に呼ばれたのか些か不明であったものの、最初の内は変身するルシア御姉様の可憐さとそれを導くベランドナの流麗ぶりに心躍らせながら眺めていた。
されどローダからロットレンに為りたい意志表示の話が出た途端、居心地の悪さを感じずにいられなかった。
その後の指輪交換に於ける儀式にしても同じだ。これは新たなるロットレン家の門出、自分の出る幕ではないと口を噤み続けた。
「──まだこの場ですべき話が残っておるのだろ?」
結婚指輪を交換しエリナ司祭はこの場を去った。それでも未だリイナを残したままの不自然。サイガンが見透かした様な発言を続けた。
「お前達二人が真に結ばれたと云う事は、居るのだな?」
サイガンの発言は必然であった。何しろルシアを創造したのは彼。加えて愛焦がれた扉の候補者と繋がれば、確実に新たな命が芽生えるよう仕組んだのだから。
此処で漸くリイナの碧目がハッと大きく見開かれる。未だ着床後、間もないヒビキを救う為の相談事がこれから始まるのであれば、恐らく自分の出番がある。
何が何処に居るのか全く以て不明なサイガンの意味不明な言葉を二人揃って頷く老人の子供達。
ローダ・ファルムーン転じてローダ・ロットレンに急ぎ成るべく、こんな裏技めいた急展開の結婚と半ば無理矢理呼び出したサイガンへお伺いした真なる理由の話が遂に始まる。
「ルシアよ、本当に産む気で良いのだな? ローダ、お前もだ。ルシアが暫く戦えなくなる」
このサイガンからの問いに首を横に振ったローダ。額面通りなら『ルシアを戦える様に導く』それは即ち新たな生命を産むのを止めると受け止められた。
「ヒビキって言うの。既に立派な意志を持っている、思念体だけど私達は実際に見たし会話もしてる」
ルシアが白いドレス越し、命の器に両手を置き、声量こそ穏やかだが、強い意志を父に伝えた。
「何と!?」
自分の目がこんなにも大きく開けるのか? それ程サイガンの心に驚愕を生む。
それから暫くの間、ヒビキとの出逢いから、これ迄の一部始終を細やかにローダとルシアは父に伝え聞かせた。
「ば、馬鹿な……そ、そんな馬鹿げた真似が出来る訳……」
白髪頭を抱えたサイガンの苦悩。彼は自分の甘さを呪う。そもそも鍵が認める候補者が現れるなどと彼は思っていなかったのだ。
ガタンッ!
「やれる! 俺の創造力とルシアを造った義父さんの技術力……」
「そして私の不死鳥の能力を活かせば!」
椅子から立ち上がり自らの胸を叩いて『やれる』と主張するローダに続き、エドル神殿跡でジオーネ・エドル・カスードから継いだ不死鳥の存在を堂々言い放ったリイナの二人。
「不死鳥!? お前さんは太陽神ラーの火の鳥が扱えると言うのか!」
サイガンの目の輝きと動きの力強さが明らかに変わった。失礼を承知で14の少女の両肩をガシリッと掴んだ。
その先はローダが考え、リイナが補足したヒビキ出産秘中の秘をひたすら語り聴かせた次第。
ベランドナも同じ場所に居たが、むしろ彼女は重要な意見者として必要不可欠であった。またもや黙り込み考えに耽るサイガン。そして彼もゆるりと立ち上がった。
「ルシアよ……そしてローダ。私が間違っていた様だ。扉を拓けば必ず判り合う? 違うと今さら知ったよ。互いに判り合おうとする精神こそ重要だったのだな」
顔つきが穏やかさを帯びた老人──或る意味老けた様にも見えるがそうではない。歳を重ね過ぎ頑なに閉ざしたものを開いた和らいだ顔だ。
「お、おと…う…さん」
一度は縁を切った父サイガンへ心を傾けるルシア、夫ローダを見やると和らいだ顔で頷いてくれた。まるでこの幸せがみえていた様な微笑。
「私も聴いても良いか? ヒビキの音を」
サイガンは日本人の血を引く彩芽のお陰で日本びいきだ。ヒビキとは日本語の響きを指した名前だと察していた。
ローダとルシア、顔を見合わせてみると互いに笑顔であったのを知る。そしてそのまま頷き返した。
ルシアとローダがこぞって皺だらけの手を取りヒビキの元へ導くのだ。
◇◇
途端にサイガン・ロットレンを天上も床もない真っ白な空間が包んでいた。狼狽え掴める所を探すべく周囲を見渡すサイガン翁であったが、若々しい手に袖を握られた。
「ムッ?」
「は、初めましておじいちゃん……僕がヒビキだよ」
21世紀頃の何とも懐かしい女子高生。ブレザー姿で16歳位の女の子がさも照れくさい感じで初孫としての挨拶を交わす。
「お、驚いた……ヒビキ。お前さんの心の中が全て見える? そ、そんな……わ、私はとんでもない罪を」
サイガンはヒビキという名前の必然性に打ちのめされる想いに駆られた。知っての通りヒビキには心の壁も扉も存在しない意識が筒抜けの存在。
要は嘗てのサイガン・ロットレンが望んだ完璧に判り合う人の結実がヒビキという皮肉。
だが可愛い孫娘の全てが手に取る様に判ってしまう罪深さに、押し潰されそうな気分で止めどなく涙が零れた。隠し事が出来ぬ人間を造った自らを大いに責めた。
「これは私の涙? とうに枯れたものと思っておった」
ギュッ。
「──ッ!?」
驚き荒んだサイガン、乾ききり……そして穢れた手をヒビキが優しく握ったのだ。
「へへ……おじいちゃんも泣き虫なんだね。──あ、あれれ? ぼ、僕もだ」
サイガンおじいちゃんと血が繋がっていない父ローダと繋がる面影見出したヒビキが笑う。そして自らも頬伝うものを拭い、恥ずかしそうに再び笑いを手向けた。
ギュゥッ!
「や、やだなぁおじいちゃん。恥ずかしいよ僕」
もうどうにも止まらなくなったサイガンの安らかな魂。大きな孫娘を抱き締め泣いた。
「ヒビキッ! か、必ずお前さんを外に連れ出してみせるッ!」
「うんっ、約束だよ。待ってる!」
このやり取りを最後にヒビキが造ったであろう白い空間が音もなく崩れ、現世へサイガンの意識が戻って来たのだ。
世辞にも素直と云えないサイガン・ロットレンの受け入れ。
そして如何にか終わったルシア・ロットレンの化粧直し。
凍りついた海の上に薄っすら積もった白い雪の様な色のドレスに着替えたルシア。
妻と娘が転じた様を見て言葉を失う二人のロットレン。
斯くして今夜二度目、異例なる誓いの祝詞がエリナ・ガエリオ司祭から告げられた。
ローダが用意した結婚指輪──。
削りの装飾が施されたプラチナリングの中央、薄紅色のルビーが二人の愛情と、絶えることなき情熱を込めた。
ローダが箱を開いた途端、風の精霊が悪戯したのかルシアの金色の髪と純潔なるドレスを揺らした。
エリナ司祭の御告げに合わせ、指輪を交換するローダとルシア。友人達のいない誓いがかえって二人に別の心地良さを呼び込む。
二人の幸せに自分の様なエゴイストが加担出来たのかと思えば、こそばゆくもあるが、自分が為した最高傑作である娘と新たに増えた家族の笑顔。
サイガン翁、顔を逸らして密かに肩を揺らしたのであった。
此処にもう独り──当人的には部外者に落とせる存在。血の繋がりがないルシアの妹リイナ・アルベェラータだ。
自分が何故此処に呼ばれたのか些か不明であったものの、最初の内は変身するルシア御姉様の可憐さとそれを導くベランドナの流麗ぶりに心躍らせながら眺めていた。
されどローダからロットレンに為りたい意志表示の話が出た途端、居心地の悪さを感じずにいられなかった。
その後の指輪交換に於ける儀式にしても同じだ。これは新たなるロットレン家の門出、自分の出る幕ではないと口を噤み続けた。
「──まだこの場ですべき話が残っておるのだろ?」
結婚指輪を交換しエリナ司祭はこの場を去った。それでも未だリイナを残したままの不自然。サイガンが見透かした様な発言を続けた。
「お前達二人が真に結ばれたと云う事は、居るのだな?」
サイガンの発言は必然であった。何しろルシアを創造したのは彼。加えて愛焦がれた扉の候補者と繋がれば、確実に新たな命が芽生えるよう仕組んだのだから。
此処で漸くリイナの碧目がハッと大きく見開かれる。未だ着床後、間もないヒビキを救う為の相談事がこれから始まるのであれば、恐らく自分の出番がある。
何が何処に居るのか全く以て不明なサイガンの意味不明な言葉を二人揃って頷く老人の子供達。
ローダ・ファルムーン転じてローダ・ロットレンに急ぎ成るべく、こんな裏技めいた急展開の結婚と半ば無理矢理呼び出したサイガンへお伺いした真なる理由の話が遂に始まる。
「ルシアよ、本当に産む気で良いのだな? ローダ、お前もだ。ルシアが暫く戦えなくなる」
このサイガンからの問いに首を横に振ったローダ。額面通りなら『ルシアを戦える様に導く』それは即ち新たな生命を産むのを止めると受け止められた。
「ヒビキって言うの。既に立派な意志を持っている、思念体だけど私達は実際に見たし会話もしてる」
ルシアが白いドレス越し、命の器に両手を置き、声量こそ穏やかだが、強い意志を父に伝えた。
「何と!?」
自分の目がこんなにも大きく開けるのか? それ程サイガンの心に驚愕を生む。
それから暫くの間、ヒビキとの出逢いから、これ迄の一部始終を細やかにローダとルシアは父に伝え聞かせた。
「ば、馬鹿な……そ、そんな馬鹿げた真似が出来る訳……」
白髪頭を抱えたサイガンの苦悩。彼は自分の甘さを呪う。そもそも鍵が認める候補者が現れるなどと彼は思っていなかったのだ。
ガタンッ!
「やれる! 俺の創造力とルシアを造った義父さんの技術力……」
「そして私の不死鳥の能力を活かせば!」
椅子から立ち上がり自らの胸を叩いて『やれる』と主張するローダに続き、エドル神殿跡でジオーネ・エドル・カスードから継いだ不死鳥の存在を堂々言い放ったリイナの二人。
「不死鳥!? お前さんは太陽神ラーの火の鳥が扱えると言うのか!」
サイガンの目の輝きと動きの力強さが明らかに変わった。失礼を承知で14の少女の両肩をガシリッと掴んだ。
その先はローダが考え、リイナが補足したヒビキ出産秘中の秘をひたすら語り聴かせた次第。
ベランドナも同じ場所に居たが、むしろ彼女は重要な意見者として必要不可欠であった。またもや黙り込み考えに耽るサイガン。そして彼もゆるりと立ち上がった。
「ルシアよ……そしてローダ。私が間違っていた様だ。扉を拓けば必ず判り合う? 違うと今さら知ったよ。互いに判り合おうとする精神こそ重要だったのだな」
顔つきが穏やかさを帯びた老人──或る意味老けた様にも見えるがそうではない。歳を重ね過ぎ頑なに閉ざしたものを開いた和らいだ顔だ。
「お、おと…う…さん」
一度は縁を切った父サイガンへ心を傾けるルシア、夫ローダを見やると和らいだ顔で頷いてくれた。まるでこの幸せがみえていた様な微笑。
「私も聴いても良いか? ヒビキの音を」
サイガンは日本人の血を引く彩芽のお陰で日本びいきだ。ヒビキとは日本語の響きを指した名前だと察していた。
ローダとルシア、顔を見合わせてみると互いに笑顔であったのを知る。そしてそのまま頷き返した。
ルシアとローダがこぞって皺だらけの手を取りヒビキの元へ導くのだ。
◇◇
途端にサイガン・ロットレンを天上も床もない真っ白な空間が包んでいた。狼狽え掴める所を探すべく周囲を見渡すサイガン翁であったが、若々しい手に袖を握られた。
「ムッ?」
「は、初めましておじいちゃん……僕がヒビキだよ」
21世紀頃の何とも懐かしい女子高生。ブレザー姿で16歳位の女の子がさも照れくさい感じで初孫としての挨拶を交わす。
「お、驚いた……ヒビキ。お前さんの心の中が全て見える? そ、そんな……わ、私はとんでもない罪を」
サイガンはヒビキという名前の必然性に打ちのめされる想いに駆られた。知っての通りヒビキには心の壁も扉も存在しない意識が筒抜けの存在。
要は嘗てのサイガン・ロットレンが望んだ完璧に判り合う人の結実がヒビキという皮肉。
だが可愛い孫娘の全てが手に取る様に判ってしまう罪深さに、押し潰されそうな気分で止めどなく涙が零れた。隠し事が出来ぬ人間を造った自らを大いに責めた。
「これは私の涙? とうに枯れたものと思っておった」
ギュッ。
「──ッ!?」
驚き荒んだサイガン、乾ききり……そして穢れた手をヒビキが優しく握ったのだ。
「へへ……おじいちゃんも泣き虫なんだね。──あ、あれれ? ぼ、僕もだ」
サイガンおじいちゃんと血が繋がっていない父ローダと繋がる面影見出したヒビキが笑う。そして自らも頬伝うものを拭い、恥ずかしそうに再び笑いを手向けた。
ギュゥッ!
「や、やだなぁおじいちゃん。恥ずかしいよ僕」
もうどうにも止まらなくなったサイガンの安らかな魂。大きな孫娘を抱き締め泣いた。
「ヒビキッ! か、必ずお前さんを外に連れ出してみせるッ!」
「うんっ、約束だよ。待ってる!」
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