高嶺の花屋さんは悪役令嬢になっても逆ハーレムの溺愛をうけてます

花野りら

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第一部 春

5 生のイケメンボイスってちょっと心臓に悪い

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 ソレイユは深く息を吸った。
 花の香りを嗅いで、甘いマスクをさらにゆるませる。男子なのにかわいい顔もできるなんて、反則よ、ソレイユ。
 
 そのへんでうろつく女子生徒のスカートの群青が揺れたかと思うと。

「きゃあ、きゃあ」

 と黄色い声をあげて騒いでいる。
 
 え? いつのまにか女子高生があつまってる!

 すると、バタバタと女子たちが卒倒した。すごい……こ、これがキラキラ王子の魅力というものか……やばい……。
 
「さあ、ここがパルテール学園で有名な伝説の花壇だよ。ルナ」
「伝説の花壇? なにそれ?」

 にっこりと笑うソレイユ・フルールは歩みをとめ、両手を広げた。まるで鳥が太陽に向かって飛び立つみたいに、彼は光りに包まれてしまう。うわ、なんてきれいなの。まぶしい。

「この花壇で愛の告白をすると二人は永遠に結ばれるらしい……」
「ロマンチックね……」
「ああ、私もいつかこの花壇で愛する女性に告白するつもりなんだ」

 ここで、答えの選択を間違えないでね、ルナスタシア。間違えると好感度が下がって、デートに誘ってもらえなくなるわよ。たしか、こんな選択が二つあったはず。
 
『その告白はあたしからしてもいいの?』

 もしくは。
 
『もう相手はいるの?』

 恋愛経験なしのわたしからすると、どちらが正解かわからない。

 でも……うふふ。

 わたしは攻略チャートを知っている。それによると『その告白はあたしからしてもいいの』が正解みたい。
 
 ルナスタシア、がんばって。
 
「ねぇ、ソレイユ、その告白ってあたしからしてもいいの?」

 おお! 正解よ、ルナスタシア。
 どこの誰がルナスタシアをプレイしているのかわからないけど。

 グッジョブ! 

 すると、ソレイユは満更でもなく嬉しそうに頬を赤く染めると口を開いた。
 
「あはは……女性の君から言われるまえに、できたら男の私から告白したいものだよ。ルナ」
「え? じゃあ、ソレイユから告白してくれるのね」
「まぁ、そうだね。あはは、なんだかこんなふうに自然と話せる女性は初めてだよ」
「そうなの? 女の子たちからモテモテみたいじゃない」
「モテモテかな? いや、みんな私が王太子だから好きになってるだけさ。もしも私が王様の息子じゃなくて、平民の息子だとしたらどうだろうか? おそらく見向きもされないだろうね」
「そんなことはないよ。ソレイユ」
「え?」
「あたしはあなたのこと王太子だと思ってなかったけど、優しくていいなって思ったよ。だから、自信持ちなよ」
「あははは! ルナ、君って最高だね」
「そう? 別に普通のことだと思うけど……」

 高らかに笑うソレイユ。
 微笑みながら花壇を愛でるルナスタシアの横顔を見つめていた。恋の歯車がくるくると回りはじめている。そんな感覚を味わっているのだろう。イケメンと言っても所詮は人の子。男の人って単純な生き物。等身大の自分を受け止めてくれる女性が好きなようだ。
 
 ふーん、なるほどね。

 わたしはまたひとつ愛について学んだ気がする。
 
 そして、こんどはわたしの出番よ、マリエンヌ・フローレンス。

 シナリオのとおりだと、たしか、ここからわたしがルナを女子寮に案内する場面に切り替わるはず……。

 よし! 

 そろそろ水やりはやめておこう。

 わたしはホースをはなした。水を止めようと思って歩き、蛇口に手をかけた。栓を閉めながら花壇を見ていると、水滴がついた花びらが太陽の光りに反射してキラキラと輝いている。花が笑っているような気がする。う~ん、良い気持ち。
 
 花は喋らない。

 けれど、風に揺れている光景は、花たちが。

 ありがとう。

 って言っているような、そんな錯覚があった。わたしは花と戯れる空想に思いふける。
 
 ふとそのとき、ソレイユから、

「やあ」

 と声をかけられた。
 
 きゃあああ。

 生のイケメンボイスってちょっと心臓に悪い。ヤダ、なんか、ドキドキしちゃう。
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