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第一部 春

26 ルナスタシア・リュミエールの手紙

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 おじいちゃん、おばあちゃん元気ですか?
 あたし、ルナスタシア・リュミエールは元気にやってます。
 いまベッドのなかで手紙を書いてます。
 なんと二段ベッドなんだよ。すごいでしょ?
 フルール王国はとっても都会で、ヴォワの村では見たこともないような建物で満ちあふれていて、すっごくステキな街。パルテール学園の校舎は大理石をつかってたよ。高度な建築技術を持った職人さんたちが作ったみたい。

 それとね、校舎の壁には不思議な絵画が描かれていておしゃれなんだ。その壁画はね、若者が二人の老人をおんぶしてる絵なんだけど、おじいちゃんこの意味わかる? あたしにはおんぶされてないで自分で歩けとしか思えなかった、笑。
 
 あとね、毎日お風呂が入れるんだよ! めちゃ嬉しい! シャワーを初めて浴びたけど、あれはもう神の雫だよ。ボディソープやシャンプーも花の香りがするし、お肌もすべすべになったし、もう最高! 
 
 それと、料理がめちゃうまい! お菓子も食べたよ。シュークリームっていうの。外はカリカリなのに、中身は甘くてとろーりしててびっくりしたよ。ああ、思い出しただけで、よだれがヤバイっ!
 
 ううん、もちろんおばあちゃんの料理も好きだよ。
 学校が休みになったら村に帰るからシチューを作っといてね、食べたいなあ。
 
 友達もすぐできたよ。
 同じ寮の部屋になった子が三人いるんだ。
 マリとベニーが同級生で、メルちゃんっていう子が後輩。

 一番仲良くなったのはマリ。
 めちゃくちゃ頭がいいの。彼女は学校の花壇を管理してるんだけど、まるで植物学者みたいに花だけじゃなく虫にまで詳しくて、おまけに男子からモテモテってすごいよね。憧れちゃうなあ。こんな人が先生になってくれたら嬉しいかも。
 
 最近、考えてるんだ。
 いつかヴォワの村に学校を作りたいなあって……。
 だって、若者たちがみんな都会の学校に行ったら村はどんどん衰退してしまうじゃない。別に都会がダメって話じゃないけど、やっぱりあたしは大好きなヴォワの村をよくしたいな。具体的に言えば、構築? 発掘? マリはマインクラフトだって言ってたけど、またこんど詳しく訊くつもり、じゃあ、そろそろ寝ます。
 
 身体に気をつけてね。
 大好きなおじいちゃん、おばあちゃんへ。
 
 ルナより。
 

 よし……書けた。明日、郵便ポストに投函しよう。
 さて、そろそろ寝よかっな。
 うーん、今日はいろいろなことがあったなあ。手紙には書ききれないほど出会いもあって、もう頭がくたくた。都会の人って無口かと思ってたけど、全然違って面白いほどよく喋る。ああ、これから楽しい学園生活になりそう! さあ、明日からいよいよ授業が始まるし、早く寝よっと。
 
 あたしはペンライトを消して、布団のなかにもぐりこんだ。ふと、下のベッドを見ると明かりがついていた。何か書いているみたい。日記かな? ラブレターだったりして? えへへ。これからよろしくね、マリ。
 
「おやすみなさい」

 あたしはささやくように自分に言い聞かせると、まぶたを閉じた。
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