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第一部 春
57 ニコル先生の授業
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「ああ、ロミオ様、ロミオ様! なぜあなたは、ロミオ様でいらっしゃいますの?」
ニコル先生の色っぽいセクシーボイスが教室じゅうに響いた。男子たちはもうメロメロ、鼻の下を伸ばして、おねえさんに優しくされた~いって感じのオーラを充満させている。
なんじゃそりゃ?
白ける女子たちだったが、ニコル先生が発する次の言葉に耳を疑った。
「それでは、好きな人とペアを組んでください。よーい、スタート!」
はあ? 突然、そんなむちゃぶりやめてぇぇ!
……。
偽りのラブストーリー、それは予想通り。
いざ、始まれば、生徒たちは誰も動けない。いや、動けるはずがない。クソみたいな芝居だ。
好きな人がバレるなんて。
恋愛至上主義のわたしたち十代にとっては、ちょっとむちゃぶりすぎるわよ、ニコル先生。
「あら、どうしたのみんな? もし好きな人がここにいなかったら、二番目に好きな人でもいいのよ。あと、好きになれそうかなって感じな人でもいいし、さあ、硬くならずに、気楽にいきましょう!」
に、二番目ってなに? もしかして、ニコル先生ってヤバイ女なのでは? ビッチ的な。
そもそも、好きな人に順位とかあるの?
わたしの頭はオーバーフロー、ニコル先生の話している情報が右から左へ流れていく。すると、ベニーがこんな質問を投げかけた。
「じゃあ、適当に男を選んでもいい?」
ニコル先生は笑った。「いいわよ」
いいんかいっ!
ガクッと肩の力が抜けたわたしは、思わずツッコミそうになったが、なんとか我慢した。しばらくすると、目のまえに座る女子生徒がすくっと立ち上がった。唯我独尊の天然美少女、ルナ・リュミエールだった。彼女は、さっと踵を返した。ひるがえるスカートが優雅に舞う。
え? なにするつもり? ルナ?
「ロック、昨日、あたしのことが好きって言ったくせに、嘘だったの?」
んあ? と虚空を仰いだロックは、「あ、やっべ」と漏らした。マズイと思ったのか、メリッサのほうを、チラッと見やった。
メリッサは相変わらず、空ばかり眺めていた。心、ここにあらずと言った感じ、だと思っていた。けれど、そうではなかった。教室で起きていること、みんなが話をしていること、すべて理解していたらしく、突然。
ぽろり、目から涙がこぼれた。
そうだよね、泣けちゃうよね、メリッサ。好きになろうと努力していた男子から、嘘の理由で婚約破棄されたんだから。わたしなら、そんな男なんて殴ってるかも。
「ロック、マリエンヌが好きなの?」
ルナの問答はつづいていた。ロックは、あっちゃーって顔を浮かべながら後頭部をかく。
「え……ああ、そうだ。俺はマリが好きだ」
「じゃあ、昨日のことはチャラってことでいい?」
「ん? どういうことだ?」
「やっぱり婚約破棄はなしってこと、それでいいでしょ?」
「ちょっ! なんでそうなる?」
「決まりねっ」
天然育ちのルナは、ロックの言い分に対して、まったく聞き耳を持たない。
いい意味だけど、頑固で素直じゃないルナは、すっと歩き出した。短いスカートの裾がひるがえり、まるで、ダンスをしているような、そんな動きだった。向かった先は、メリッサの席だった。
「ごめんなさい」ルナは頭を下げた。
は? 生徒たちはびっくり仰天した。昨日、いじめを扇動して人物を前にして、謝罪とは何事? って感じで、みんなの目線はルナに釘づけ。ルナがいったいなにをするつもりか、動向が気になってしょうがない。
「メリッサ、ロックの芝居に合わせてしまって、わたし、あなたのことを傷つけてしまったね。本当にごめんさない。でも、ロックはあたしのことは好きじゃないみたい。それとね、マリエンヌはロックを好きじゃないから安心して。だからロックは誰のものでもない。フリーだよ。だから、きっとメリッサにもチャンスはあるから、ねえ、もう少しだけ勇気を出してがんばってみよっ、ね?」
「……」
ルナの声援が心に響いたのか、メリッサの陰鬱なオーラが、スッと消えて言った。みるみるうちに金髪ドリルが、キラキラと輝きを取り戻していく。わかりやすいなあ、メリッサの感情って。
「ルナ……私のほうこそごめんさない」
最後の涙をふいたメリッサがそう謝罪すると、いいって、いいって、とルナは返事をした。やがて、メリッサの肩を、ぽんっと叩くと席に戻っていった。
「うふふ……」
わたしは、思わず笑ってしまった。こんなシーン、公式ファンブックには載っていないからだ。ふう、やれやれ、世界が崩壊するのは、時間の問題ね……。
わたしは胸に手を当てて、自分自身と妖精フェイに警告をした。
ニコル先生の色っぽいセクシーボイスが教室じゅうに響いた。男子たちはもうメロメロ、鼻の下を伸ばして、おねえさんに優しくされた~いって感じのオーラを充満させている。
なんじゃそりゃ?
白ける女子たちだったが、ニコル先生が発する次の言葉に耳を疑った。
「それでは、好きな人とペアを組んでください。よーい、スタート!」
はあ? 突然、そんなむちゃぶりやめてぇぇ!
……。
偽りのラブストーリー、それは予想通り。
いざ、始まれば、生徒たちは誰も動けない。いや、動けるはずがない。クソみたいな芝居だ。
好きな人がバレるなんて。
恋愛至上主義のわたしたち十代にとっては、ちょっとむちゃぶりすぎるわよ、ニコル先生。
「あら、どうしたのみんな? もし好きな人がここにいなかったら、二番目に好きな人でもいいのよ。あと、好きになれそうかなって感じな人でもいいし、さあ、硬くならずに、気楽にいきましょう!」
に、二番目ってなに? もしかして、ニコル先生ってヤバイ女なのでは? ビッチ的な。
そもそも、好きな人に順位とかあるの?
わたしの頭はオーバーフロー、ニコル先生の話している情報が右から左へ流れていく。すると、ベニーがこんな質問を投げかけた。
「じゃあ、適当に男を選んでもいい?」
ニコル先生は笑った。「いいわよ」
いいんかいっ!
ガクッと肩の力が抜けたわたしは、思わずツッコミそうになったが、なんとか我慢した。しばらくすると、目のまえに座る女子生徒がすくっと立ち上がった。唯我独尊の天然美少女、ルナ・リュミエールだった。彼女は、さっと踵を返した。ひるがえるスカートが優雅に舞う。
え? なにするつもり? ルナ?
「ロック、昨日、あたしのことが好きって言ったくせに、嘘だったの?」
んあ? と虚空を仰いだロックは、「あ、やっべ」と漏らした。マズイと思ったのか、メリッサのほうを、チラッと見やった。
メリッサは相変わらず、空ばかり眺めていた。心、ここにあらずと言った感じ、だと思っていた。けれど、そうではなかった。教室で起きていること、みんなが話をしていること、すべて理解していたらしく、突然。
ぽろり、目から涙がこぼれた。
そうだよね、泣けちゃうよね、メリッサ。好きになろうと努力していた男子から、嘘の理由で婚約破棄されたんだから。わたしなら、そんな男なんて殴ってるかも。
「ロック、マリエンヌが好きなの?」
ルナの問答はつづいていた。ロックは、あっちゃーって顔を浮かべながら後頭部をかく。
「え……ああ、そうだ。俺はマリが好きだ」
「じゃあ、昨日のことはチャラってことでいい?」
「ん? どういうことだ?」
「やっぱり婚約破棄はなしってこと、それでいいでしょ?」
「ちょっ! なんでそうなる?」
「決まりねっ」
天然育ちのルナは、ロックの言い分に対して、まったく聞き耳を持たない。
いい意味だけど、頑固で素直じゃないルナは、すっと歩き出した。短いスカートの裾がひるがえり、まるで、ダンスをしているような、そんな動きだった。向かった先は、メリッサの席だった。
「ごめんなさい」ルナは頭を下げた。
は? 生徒たちはびっくり仰天した。昨日、いじめを扇動して人物を前にして、謝罪とは何事? って感じで、みんなの目線はルナに釘づけ。ルナがいったいなにをするつもりか、動向が気になってしょうがない。
「メリッサ、ロックの芝居に合わせてしまって、わたし、あなたのことを傷つけてしまったね。本当にごめんさない。でも、ロックはあたしのことは好きじゃないみたい。それとね、マリエンヌはロックを好きじゃないから安心して。だからロックは誰のものでもない。フリーだよ。だから、きっとメリッサにもチャンスはあるから、ねえ、もう少しだけ勇気を出してがんばってみよっ、ね?」
「……」
ルナの声援が心に響いたのか、メリッサの陰鬱なオーラが、スッと消えて言った。みるみるうちに金髪ドリルが、キラキラと輝きを取り戻していく。わかりやすいなあ、メリッサの感情って。
「ルナ……私のほうこそごめんさない」
最後の涙をふいたメリッサがそう謝罪すると、いいって、いいって、とルナは返事をした。やがて、メリッサの肩を、ぽんっと叩くと席に戻っていった。
「うふふ……」
わたしは、思わず笑ってしまった。こんなシーン、公式ファンブックには載っていないからだ。ふう、やれやれ、世界が崩壊するのは、時間の問題ね……。
わたしは胸に手を当てて、自分自身と妖精フェイに警告をした。
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