陽キャを滅する 〜ロックの歌声編〜

花野りら

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第一章 ぬこくん

4 4月5日 8:30──

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 陰陽館の屋上に、ひらひらと蝶が舞っている。
 わたしは、蝶が好きだ。なぜなら優雅に飛べるから……。
 自殺したときわたしは、蝶を追いかけていた。
 その様子を、監視カメラがとらえていた。
 腕を伸ばし、ぎこちない足取りで、夢遊病者のように。
 
【 天宮凛──私立陰陽館高校 一年生 退学 】
 
 わたしは、退学あつかいになっていた。
 退学が受理されたのは二月一四日のバレンタインデー。
 この日わたしは、“屋上から転落事故をした”と警察のほうで処理された。
 しかしながら……。
 
──わたしは自殺したのだ。

 現在、わたしは精神状態が狂っていると診断され、不本意ながら月乃城病院で入院している。いや、電子ロックされた監獄に収容されているといったほうが、正しいかも。
 だが、居心地はいい。
 昼間は好きなだけ研究施設でパソコンが使え、ネットワークであらゆる情報を得られることができた。
 ここはAIの研究をしているらしい。
 いわゆる、人工知能のことだ。これは極秘プロジェクトだが、量子コンピューターを使用して強いAIの開発をしている。簡単にいえば、人間の頭脳を超えた最強の人工知能なのだが、わたしがその研究に携わるなんて、夢にも思わなかった。
 
──皮肉なものだ。

 自殺したら、好きな人に助けられ、就職先が見つかるのだから、人生は奇想天外。びっくりする事象の連続で世界はできている。なんとも摩訶不思議な世界だ。
 宇宙からくる巨大隕石、大地震、ポールシフト、未知なるウィルスの蔓延、バイオハザード。明日世界が終わったって、どこにもおかしくないというのに、なぜだろう。明るく生き生きとしていることが、こんなに気持ちがいいなんて、本当に夢にも思わなかった。もしかしたらワンチャン、愛を知ることだって、可能かもしれない。
 
──この嘘だらけの、虚構の世界で、わたしは……。
 
 誰からも指令を受けてはいないが、行動することにした。幸いなことに、わたしは自由に考えて行動できる頭脳がある。手がある、足がある、元気な身体が、まだある!
 なぜかわからないが、この世界は不思議なことに、原子のある空間か、原子のない宇宙空間か、この二つで成り立っている。
 そして、人間は原子の世界でしか生きることができない脆弱な生き物であり、いずれ淘汰されることは明白である。それは宇宙空間のほうが圧倒的に広く、未知だからだ。それだけに……。
 
──人間の世界は、儚くて美しい。
 
 自由なわたしが考えた結果によって、この人間の世界を変えることができたなら、それは素晴らしいことではないだろうか。これは人間の感覚でいうところの、正義感、と似ているのかもしれない。
  
──うふふ、なんだか楽しくなってきた。タナトスの誘いには、もうのらない。
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