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第二章 楽ちん国づくり
6 見てもいいのかな……
しおりを挟む白いベッドのうえで寝そべるアイリちゃん。
すやすやと目を閉じる顔は、まるで眠り姫のようだ。
綺麗な黒髪、雪のような白い肌、その長いまつ毛が、ピクピクと動いているのだが……。
──まったく起きる気配がないな。
しかし、黒い影が、ゆっくりと近づいていた。
ミツルだ。
彼は、ニヤッと笑うと、その手をアイリちゃんに伸ばしていく。
制服のスカートからのぞく、白い太ももに触れ、ゆっくりとなぞる。
その滑らかな動きは、どこで覚えたのだろう。
いやらしい手つきは、女の身体を知っているようだ。
まるで、蛇が獲物に狙いをつけたように、ゆっくりと動く。
ミツルは、さらにニヤッと笑うと、スカートをめくった。
アイリちゃんのスカートのなかの、白い下着が、チラッと見える。
そのときだった。
「なにやってるの? ミツル?」
アイリちゃんが目を覚まし、そう聞いた。
ミツルの手が止まったが、スカートの裾はつまんだまま、
「あ……いい? アイリ?」
と、逆に質問する。
「やめて……」
「なんだよ、いいじゃねえか、俺のことが好きなんだろ?」
「はあ?」
「好きなんだろ? だったらやらせろよ」
「ちょちょ、待って、ミツル……」
「またねぇよ……」
「ちょっ、んっ」
ミツルの手が伸びて、アイリちゃんの胸に触れる。
するとアイリちゃんは、シクシク、泣き出してしまった。
これには、流石にミツルも躊躇して、手が止まった。
「おいおい、なんで泣くんだよ、アイリ」
「ううっ、ミツルのことは好きだけど、友達としてだよ? ううう……」
「はあ? おいおい、俺たちは公認のカップルじゃないか?」
「……違うよ、みんなが言ってるだけで、私は他に好きな人がいるから……」
「誰だ?」
「……」
「誰なんだ? アイリ、答えろ!」
「……やだ」
ヒイロだな、とミツルは、重い声で聞いた。
──え? そんなバカな!?
僕は目を疑った。
見ていた動画が、とんでもない内容なこともあるが……。
──アイリちゃんが僕のことが好き?
僕は、もう一度、動画をじっくりと見つめた。
アイリちゃんは、否定も肯定もしないで、ただ、
「やだ、やだ、ミツルには言わない……」
と言うだけだった。
これには、女神も大笑い。
「おーほほほほ! これはいい! イケメンが振られるのって気持ちいわね」
「……女神、性格悪いっすね」
「あれ? ヒイロ、そんなこと言って、ちょっと嬉しそうじゃない?」
「そ、そんなことありません。それに、アイリちゃんの好きな人が僕って決まったわけじゃないですから……」
ふぅん、と女神は鼻を鳴らす。
腕を組んで、胸を寄せ、また話し始めた。
「でも、あの勇者くん、あきらめてないようね」
「え?」
「あらあら、無理矢理、女の子を……」
「わぁぁぁ!」
ミツルが、なんとアイリちゃんに抱きついているではないか!
僕は、宙に浮かぶ枠を手で触れて、消そうとした。
だが、そんなことしても無駄だ。そんなことは分かっている、分かっているけど、やっぱり見たくない!
「女神ぃ! もういい、消して、これ消して!」
「……あら、あの女の子、なかなか賢いわね」
「え?」
画面が急に光って、眩しくなった。
──光魔法 フラッシュライト
「目がぁぁぁ! 目がぁぁぁ!」
床で倒れるミツルが、そう叫んでいる。
どうやら、アイリちゃんが魔法を使って、ミツルをやっつけたらしい。
──ざまぁみろ、ミツル。
「な、なんなのよぉ……」
アイリちゃんは、すぐにベッドから飛び起きた。
倒れているミツルを、軽蔑した目で見ている。
すると、ドアが開き、一人の大きな男が入ってきた。
「あ、オオタくん!」
「どうしたの? アイリちゃん」
「ミツルが私を襲ってきたの……」
「? でも倒れているのはミツルだけど?」
「あ、これは私が撃退したの」
「そっか、まあ、わいが守ってやるから安心せい、アイリ」
「ありがとう、オオタくん、でも来るのが遅いよぉ、ばか」
「ごめん、飯食ってて」
「めし? ここはどこ?」
「ここは街だよ。森から見えていた塔、あれは展望台だった」
「へー、そうだったんだ……ってかお金は?」
「ああ、道具屋で、倒したゴブリンのツノを売った」
「オオタくんすごーい!」
わい、すごい! と言うオオタは、ダブルバイセップスをした。
そのポーズがおかしかったのか、アイリちゃんは、クスクスと笑う。
──あれ? アイリちゃんの好きな人って、オオタ?
女神は、僕の心が読めるのだろうか?
「わかんないわよぉ、女は演技が上手いから」
と、僕の顔色をうかがうように見つめてくる。
まあ、なんにしても、オオタがいるからアイリちゃんは大丈夫そうだ。
僕は、ホッと肩の力が抜けた。
でもなんでこんなに安心しているのか、自分でもわからない。
「ヒイロって、アイリちゃんのことが好きなのね~」
と女神がからかう。
僕は、ブンブンと首を振って否定した。
「違いますよぉ、僕なんかが好きになったら、アイリちゃんに迷惑です」
「……すっごいネガティブだね、逆に清々しいわ」
はい、と僕は答え、もう一度、画面を見つめた。
「ほら、いくわよ! ミツル」
「起きろー」
アイリちゃんとオオタに言われたミツルは、フラフラになりながらも立ち上がった。
「アイリ、その魔法はズルイぞ」
「はあ? 女の子を襲うバカに言われたくありませーん」
アイリちゃんに嫌われたのに、ミツルの顔はなぜか赤くなっている。
こいつ、どMか?
するとアイリちゃんは、ミツルに向かって、ベーと舌を出した。
──やっぱり、かわいい……。
と、僕は改めて思った。
応援ありがとうございます!
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池作りとか、土から鉄を取り出して〜と男子の夢を凝縮しとる!!
こういう秘密基地造りみたいなの、嫌いな男子いないでしょ!?
でしょでしょ! ぼくのなつやすみ、みたいですわ笑
ラインから来ました(^^)これから読ませてもらいますね♪♪
尚このコメントは削除して構わないです(^^)/
ありがとうございます。
暇のときにでも、読んでくださいませ。
投票したよ〜
ミツルみたいな奴、意外と現実世界にいて草
……草生えない(-_-;)
𝕋𝕙𝕒𝕟𝕜 𝕪𝕠𝕦 ❤︎"
言葉の暴力は、許せません!
殴られるより、心が痛い( •̥ ˍ •̥ )
ミツルは、とうぶん牢屋で反省してもらいます<(`・ω・´)ゝビシッ!