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第一章 ノエ、モフモフ島に移住する
1 婚約破棄を告げる
しおりを挟むわたしの名前は、ノエ・カルディア。十八歳。
ごくごく普通の公爵令嬢。
このたび、親同士がかってに決めた婚約者、この人“ラビット王子”に婚約破棄を告げたのだが、どうやら彼はわたしの言葉の意味がわかっていないらしい。
それならば、もう一度だけ告げておこう。
突然、わたしが消えたら、彼だって混乱するだろうし。
「よく聞いてください王子。今日からわたしはモフモフ島に移住します」
「は? どういうことだ?」
「女神様から神託を受けているのです」
「ほう、どんな神託を?」
「モフモフ島の開発をするのだぁ……と」
「すごいじゃないか!」
「はい。毎日毎日、雨の日も風の日も祈祷したかいありました」
「ノエちゃんは未知なる生物とか好きだもんな。だから今日はそんな冒険者みたいな格好をしていたのだな」
「はい、みてください! ショートパンツにクロタイツ。上はフリルつきのシャツを冒険者っぽく革ベルトでアレンジしてみました。革のブーツと手袋もおしゃれでしょ?」
「ああ、白い太ももの絶対領域とヘソだしルック。おっぱいの強調具合もなかなか……よき」
「ちょっと……どこみてるんですか?」
と、わたしは腕を組んで胸を隠した。
男子はこれだから嫌い。
エッチなことをすぐ考えるんだから、まったく……。
「とにかくです。わたし、ノエ・カルディアはあなたとの婚約を破棄してモフモフ島に移住すると申し上げているのです。わかりますか?」
「ノエちゃんまてまて、モフモフ島ってなに?」
と、ラビットは訊いた。
わたしはゆっくりとした丁寧な言葉で説明をつづけた。
「モフモフ島は、わたしたちティンポス王国が到達していない未開の土地。つまり、無人島です」
「ほう。で、ノエちゃんはその無人島に何をしに行くの?」
「まあ、スローライフですね」
「……スローライフ?」
「はい。好きなときに寝て、起きて、ご飯を食べて風呂に入って寝る。晴れた日には釣りをしたり、果物を収穫したり、のんびりビーチで寝転んだり。また、雨の日は家のなかで工作をしたり、読書をしたり、料理をしたり。まあ、そんな生活です」
よき、と快活に言ったラビットは、こくりとうなずいた。
「なかなかいい暮らしだな」
「でしょ? でもでも、王子。それだけじゃないんですよぉ、ちょっと聞いてください」
「なんだ?」
「モフモフ島にはですね……なんとモフモフと呼ばれる動物がいるんです。女神様が見せてくれたチラシには、“モフモフとおしゃべりできるぞ”と載っていました。あ、これです」
わたしはショートパンツのポッケから一枚のチラシを取りだして、すっとラビットに渡した。
「ふぅん、なになに……“モフモフ島の開発をしよう! 何をするのも君の自由。さあ、モフモフたちとたわむれよう♡” か……よきだな」
「はい! モフモフの生態は謎に包まれていて、妖精、精霊、もしかして魔物だったりして……きゃあああ! これは調査するしかないっ!」
落ち着け、と言って腕を伸ばし、わたしの肩をなでるラビット。
「きゃあ!」
嫌悪感のかたまりのような悲鳴にラビットは驚いた。
「気安く触らないでください。穢れた手で……」
わたしは次期国王の手を、パシリと払いのけた。
「そんなわけで、あなたとの婚約を破棄しますのでよろしくお願いします」
「ちょっと待ってよ。そんなこと僕たちがかってに決められないだろう。親同士のメンツだってある。とてもノエちゃんだけで判断できることじゃない。僕との結婚はこの国の未来でもあるのだ」
「あんなことをしておいて?」
と、わたしはあえて訊き返した。
ラビットは身に覚えがないらしく、呆然とするのみ。
だったら教えてあげます。あなたがしたことを。
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