殺戮人形産のおいしい野菜はいかがですか?〜最強美少女はふつうの農家を目指してるけど、やっぱり最強だったみたい〜

ことりとりとん

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1.新しい普通の町

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「ここが、私の新しい町ね! とっても普通で、ステキだわ!」

野を超え山を越え、王国中心部からはるかに離れた辺境の開拓村にたどり着いた少女は歓声をあげた。
小高い丘の上から見下ろす村は小さいけれど、それが一番の魅力。

魔境がすぐ近くにある物騒な所でも、彼女にとってはのほほんとした田舎の村のように見えるのだ。

「ここなら、私もふつう・・・に暮らしていけそうね!」

まあ、以前よりは、普通な暮らしが出来るんじゃないだろうか。たぶん。



「ごめんくださーい」

呑気な挨拶と共に役場に入ると、一つしか開いていないカウンターに座った男が、じろりと少女を睨みつけた。

「何の用だ」

「こちらに、移住しに来たの。受け付けはここ?」

ドスの効いた声に、普通の女の子なら泣いて逃げ出すだろう。だけど、彼女はそうではなかった。

それだけでも驚くと言うのに、その上少女はとてつもなく綺麗なのだ。
陶器のような白い肌にまっすぐ流れる金の髪、魔力適正の高さを表す紅玉の瞳。
まさしくビスクドールのような美しさに目を奪われそうになるが、ぐっと堪えて話を続ける。

「移住、だと……? 嬢ちゃんひとりか?」

「ええ。話は通っているし、家もある、と聞いているのだけれど」

「ああ、あれか。ちょいと待てよ……。
あった、あった。ティーファ・アルテートか?」

「ええ、そうよ。ティーファよ!」

これ以上なく嬉しそうな様子に、少しばかり違和感があるが、このあたりは変人しか流れてこない辺境。
いちいち気にしていたらキリがない。

年齢も、18歳と書かれてはいるが、とてもそうは見えない。せいぜい10かそこら程度。
サバを読んでいるのか単なるチビか、分からないがまあそれはどうでもいいだろう。

妙なトラブルを起こされないといい、それだけだ。


一方、ティーファは。

(うふふ、私ったら、ふつう・・・の名前で呼ばれちゃった!)

たったそれだけのことが、堪らなく嬉しかった。
なにせ、《組織》ではコードネームの《殺戮人形キリングドール》か識別番号の《37》でしか呼ばれたことがなかったから。

名前も、戸籍と一緒に新しく作って貰ったのだ。


「んで? こんなとこに、嬢ちゃんひとりきりで何しに来たんだ?」

「私、『普通の農家』になりにきたの!」

思いもよらない返事に驚く男。
それもそのはず、ここは彼女の求める『普通』とは程遠い場所なのだから。

このテリトル村は、『魔境』に接する最前線の村。
開拓村と言えば平和そうだが、開拓する相手は魔獣の出る魔の森。
呑気に農家をやる人間はもっと後方に居て、ここまで来ているのは魔獣を狩るための冒険者ばかり。

そもそも、魔獣は魔力溜りに触れた動物が変化して発生すると言われている。
魔物を発生させないためには魔力溜りを払う必要があり、その作業を行うのが開拓村の冒険者たちの仕事だ。

いつ魔獣が出るか分からないような所へ住む農家などいない。

『普通』なら、だけれど。



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