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19.爆食い
しおりを挟むその後、きちんと買い取りをしてもらい、二人分の食料を買おうと屋台へ行く。
既に馴染みになったサンドイッチや串焼きも良いが、他の店も開拓しようかな、何て考えていたら。
ぐうぅうう~。
バカでかいお腹の音が響き渡った。
「あなた、お腹空いてたのね。好きな物を食べて良いわよ」
確かに、あれだけ動けばお腹も空くだろう。
昼間には行き倒れるほどだったワケだし。
「……ん。」
それだけ言うと手近なパン屋に突撃し、手当り次第に食べる。
……本当に、手当り次第、と言うほどに食べるのだ。
「あなた、ちょっと、食べ過ぎじゃない!?」
いつもは無関心なティーファですら驚くほどの食べっぷり。
それに、財布は自分もちなのだ。
辺境らしく、大した値段ではないものの、これだけの量と勢いでは不安にもなる。
「加減して食べなさいよ!! 食べ過ぎたら、焼くからっ!」
思わずそう叫んでしまった。
ティーファにこれだけ叫ばせるなど、そうそうあることではない。
「……ん。」
それで多少は勢いを落としたものの、相変わらず食べ続ける。
「店のものが無くなる前に断りなさいよ?」
少年に言っても無駄だと感じたティーファは店の大将にそう言う。
しばらく食べていたが在庫を切らしそうになったあたりで隣の屋台へ行き、また食べる。
ティーファは割とお金持ちなので困るほどではないが、これが毎日だと相当大変なことになりそうだ。
金銭的な問題だけでなく、周辺の村で作られたものを食べ尽くしてしまいそう。
「……これは、何か考えないとねぇ……」
今までのティーファなら、少しでも面倒だと感じた瞬間に無関係になっていただろう。
魔法で焼いてしまうか、そうなる前に《組織》側が気を使って離すか。
だけど、どうにか他の方法がないかとわざわざ考えるようになっていた。
今までのように、周りの誰かが勝手にしてくれるのではなく、自分の意思で考え始めたから。
食べっぷりを眺めるのにも飽きて、サンドイッチ屋の店主に絡む。
彼の店は朝や昼時がメインで、夜はそこまで繁盛していないのだ。
持ち運びしやすいから仕事中に食べることが多く、朝も昼も食べたのに夜も食べたくは無い、という人が多いから。
「アレ、どうしようかしら」
「すげぇ食べっぷりだよな。それこそ、嬢ちゃんが麦を作ってくれてなかったら、あのパン屋はお手上げだっただろうぜ」
「えっ、そうなの?」
ティーファが来る前の食料事情などしらないから、目を丸くする。
「ここらには農家なんて居ないからな。少し離れた所から買ってたんだよ。だから、量も限られているし安定しない。
嬢ちゃんが来てくれて、皆ありがてえと思ってるんだぜ?」
「あら、そうだったの。それは良かったわ」
思わぬ所で自分が役に立っていたと知って、少し嬉しくなるティーファだった。
食べ続ける少年からは目を背けつつ。
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