魔科大戦〜世に挑んだ一人の少年〜

一章〜復讐〜

【第一話】義腕の魔導士

  魔科の荒野にて､我がツヴァイ班は､科学軍を後退させ､前線を上げていった､まったく､今日は休暇だったのだが､急に収集がかかり､慌てて出たため､飲みかけの麦芽酒がぬるくなっていることを想像すると､やはり厄日としか思えん､そんなことをふと考えていた矢先に､
『こちら､ツヴァイ班チームα､応答を願う!!!』
「こちら､【ツヴァイ＝コード】どうした」
『奴が現れました!!!【義腕の魔導士】です!!!』
「なに!?それは誠か!?すぐにチームβとチームγを向かわせる!!」
  義腕の魔導士､それはこの5年で急に現れた､謎の人物､左腕が鋼鉄で出来た科学技術の塊の様な物体を身につけているにも関わらず､その戦い方は魔法や魔導を使用している謎の兵士､複数の魔導を使用する世にも珍しい､【多重魔導士オクタキャスター】であるにも関わらず､【魔法連邦マジカリスタ】に仇なす人物､
「…訂正しよう､今日は厄日なんてものじゃない､最悪の日だ」



【フライ】を使って､すぐさま前線に出た瞬間､目を疑った､
「な…なんだと､チームαどころか､チームβチームγまで､一体どうなっている!!!」
  そう言いながらあたりを見回した､その時､
「なあんだ､まだいたのか」
  突然背後から､そんなこと言葉が聞こえて来た､私は思わず､距離をとった､そこに居たのは､【義腕の魔導士】その人であった､
「貴様!!何故彼らを殺した!!答えろ!!」
「はぁ…ここは戦場だよ､殺されても文句は言えないだろう､それとも何か？敵に情けをかけろと?それこそ､屈辱なんじゃないのか?」
  呆れながら奴は答える､その通りだ､そんなことわかっている､わかっていても､許せないものは許せない!!
  私は魔導【槍ランス】を唱える､自分の体から､魔力が力に､槍に変わっていくのが分かる､大きく深呼吸した､そして目を見開いて､
「…行くぞぉ!!!」
  私は無鉄砲にも正面から突っ込んだその時奴は､【刃ブレイド】を唱え､私目掛けて､放ってきた､それを間一髪交わすと次に奴は【装備アジャスト】を唱えた瞬間､放ったはずの刃が､奴の右腕にくっついた､そして私の【槍ランス】と打ち合いになった､そのまま私は奴の【刃ブレイド】に【槍ランス】を滑らせながら､奴の眉間目掛けて【槍ランス】を放ったが､左腕でいとも容易く止められ､そのまま右腕で腹を裂かれた､裂かれた腹からは血と内臓が飛び出してくる､口からも血を吐き､そのまま倒れ込んだ､
「これが…【義腕の魔導士】…か…」
  目を瞑るその時奴の顔が見えた､人を殺したにもかかわらず､奴の表情は【無】だった。



  少し骨が折れた､まさかこんなにいるとは思わなかった､
「【ヘルク】だ､今終わった､今から帰る」
『了解致しました【主人マスター】お疲れ様でした』
  俺は通信を切りながら
「さて､どうするか､めぼしいものなんて何も無かったなぁ…別にいいか」
  なんて呑気に独り言を呟いていた､その時
「ッ!?ぐっ!!ガァァァァ!!!」
  まただ､またこれだ､無数の悲鳴､それと酷い耳鳴り､それから頭痛もする､この5年間これに悩まされなかった日は無かった､聞こえてくる悲鳴は､主は誰かは分からない､だが二人だけ分かる､
「ジャック…!!母さん…!!」
  二人の名前を叫ぶと更に酷くなる､全てあいつのせいだ､二人の仇を打つまでは､何がなんでも死なない､いや死なせてくれない
  そう毎日自分に言い聞かせていた。