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5.どうしてこうなったのかしら?②
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「お許し下さい、お許し下さい、お許し下さい……」
まあまあ? チムニア嬢は精神を病んだかのように床に伏して、同じ言葉を唱え始めた。
「高位貴族が犯罪を犯した際に行われる公開裁判まで、貴族牢で過ごせ。連れて行け」
「おのれ、ザルハッシュ王太子! 認めません! 認めませんからなあ!」
王太子の命令で、チムニア公爵が引っ立てられる。
前世の私は、逃走防止の為に足の腱を切られ、地下牢に入れられた。問答無用だったわ。
だからか今世のこの国の対処は、ぬるいと感じてしまう。
未だ床に伏せるチムニア嬢が残っているけれど、ザルハッシュ殿下はどうするつもりかしら。このまま2人で愛の逃避行とは、ならなそう。
「今後そなたが王都に足を踏み入れる事は許さん。チムニア公爵家の裁判決疑によっては公爵家の解体もあり得る。ただし今回、そなたは証拠を提出して実の親であっても不正を正した形となる。そなたが長らく虐げてきた我が愛しのウェルミナ。彼女からの苦言を、そなたは聞き入れたのであろう?」
王太子は、唐突に何を言い出したのかしら? そもそも私、楽しくチムニア嬢を殺害しようとしただけよ? チムニア嬢がそんな言葉に同意するはずが……。
「さっ、左様です! ウェルミナ、んんっ! ウェルミナ様の素晴らしい御心に感銘を受けたのです!」
何ですって? チムニア嬢が認めてしまったわ。記憶力が皆無のお馬鹿さんに格下げよ。
「上出来だ」
ザルハッシュ王太子は私をチラ見して、声を発せずに何を満足そうに呟いた。
私が読唇術を身につけていると知ってか、唇を動かして伝えてくる。
止めていただけない?
「令嬢には、今後厳しい目を向けられても正しき道を歩まんとする気概を感じた! 陛下からも、私の采配で温情を与えよと言われている! 一代限りの男爵位を与え、国外れの領地を下賜しよう! もし令嬢が領地を豊かにし、国に税を納めるようになれれば、次代へ男爵位を継承させる事を認めよう!」
……もの凄く減刑された風に、宣言するのね。
けれどあの場所、高位貴族の墓場って言われる場所よ? 罪を犯した数々の高位貴族が派遣されては、断念して平民を選んできた事で有名。それこそ甘えた貴族令嬢が、税収を納めるまで付き合える場所かしら?
もちろん、チムニア嬢だって知っている。頷くはずがな……。
「もちろんです! ウェルミナ様の助言、そして陛下の温情に深く感謝致します! 早速ですが、私は領地へと向かいます! ええ、すぐにウェルミナ様から離れ……んんっ。王都から去り、今後は王都へ足を踏み入れる事はないでしょう! ウェルミナ様!」
感謝を大放出した口が、最後に私の名前を大きく響かせた。
まあまあ? チムニア嬢は精神を病んだかのように床に伏して、同じ言葉を唱え始めた。
「高位貴族が犯罪を犯した際に行われる公開裁判まで、貴族牢で過ごせ。連れて行け」
「おのれ、ザルハッシュ王太子! 認めません! 認めませんからなあ!」
王太子の命令で、チムニア公爵が引っ立てられる。
前世の私は、逃走防止の為に足の腱を切られ、地下牢に入れられた。問答無用だったわ。
だからか今世のこの国の対処は、ぬるいと感じてしまう。
未だ床に伏せるチムニア嬢が残っているけれど、ザルハッシュ殿下はどうするつもりかしら。このまま2人で愛の逃避行とは、ならなそう。
「今後そなたが王都に足を踏み入れる事は許さん。チムニア公爵家の裁判決疑によっては公爵家の解体もあり得る。ただし今回、そなたは証拠を提出して実の親であっても不正を正した形となる。そなたが長らく虐げてきた我が愛しのウェルミナ。彼女からの苦言を、そなたは聞き入れたのであろう?」
王太子は、唐突に何を言い出したのかしら? そもそも私、楽しくチムニア嬢を殺害しようとしただけよ? チムニア嬢がそんな言葉に同意するはずが……。
「さっ、左様です! ウェルミナ、んんっ! ウェルミナ様の素晴らしい御心に感銘を受けたのです!」
何ですって? チムニア嬢が認めてしまったわ。記憶力が皆無のお馬鹿さんに格下げよ。
「上出来だ」
ザルハッシュ王太子は私をチラ見して、声を発せずに何を満足そうに呟いた。
私が読唇術を身につけていると知ってか、唇を動かして伝えてくる。
止めていただけない?
「令嬢には、今後厳しい目を向けられても正しき道を歩まんとする気概を感じた! 陛下からも、私の采配で温情を与えよと言われている! 一代限りの男爵位を与え、国外れの領地を下賜しよう! もし令嬢が領地を豊かにし、国に税を納めるようになれれば、次代へ男爵位を継承させる事を認めよう!」
……もの凄く減刑された風に、宣言するのね。
けれどあの場所、高位貴族の墓場って言われる場所よ? 罪を犯した数々の高位貴族が派遣されては、断念して平民を選んできた事で有名。それこそ甘えた貴族令嬢が、税収を納めるまで付き合える場所かしら?
もちろん、チムニア嬢だって知っている。頷くはずがな……。
「もちろんです! ウェルミナ様の助言、そして陛下の温情に深く感謝致します! 早速ですが、私は領地へと向かいます! ええ、すぐにウェルミナ様から離れ……んんっ。王都から去り、今後は王都へ足を踏み入れる事はないでしょう! ウェルミナ様!」
感謝を大放出した口が、最後に私の名前を大きく響かせた。
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