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72.偽物令嬢~クラウディアside1
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「クラウディアですわ。
仲良くして下さいましね」
レイヤード様と初めてお会いしたのはミレーネ叔母様がまだお元気で、麗しいご兄弟の本当の妹であるルナチェリアがお産まれになってすぐのグレインビル邸でしたわ。
確か予定日より1か月ほど早い出産で、少しシスコン、いえ、妹である叔母様をあまりにも心配したお父様の暴走を止め続けるのも2か月が限界だったので、家族総出でお祝いも兼ねつつお父様をほどほどで連れ帰る為に一家でお邪魔しましたの。
幸い叔母様も従妹も産まれてからの経過は良好のようで、普段はあまり表情を変えないお母様は最初こそ何故だかぎこちない微笑みでしたが、途中からはほっとしたのかちゃんと微笑んでおりましたわ。
お父様は恥ずかしながら、終始号泣でしたけども。
初めて見る従妹は叔父様と同じお色のふわふわの金髪に赤目。
けれど顔立ちは叔母様に似て優しげでした。
叔父様は娘を終始優しく見つめていらっしゃいましたし、叔母様もそんな父娘を微笑ましそうに眺めておりました。
怖くて1度しか抱っこはできませんでしたけど、まだまだ小さくてふにゃふにゃの体からはお乳の甘い香りがしていて、私はその瞬間にこの子はこの公爵令嬢であるお姉様が守ってさしあげようと心に誓いましたの。
数日の滞在でしたけど、レイヤード様はバルトス様とよく妹の取り合いをしていらっしゃって、幼心にもとても微笑ましい光景で、3兄妹共にお美しくて天国に迷い込んだような光景でしたわ。
なぜかそこに私のお兄様が混ざっていた時には思わず足を踏んで差し上げましたけれども。
当時は初めてお会いしたからかまだ私の事をレイヤード様は可愛がっていただけたように思いますの。
自分からお屋敷のお庭を案内してくれたこともありましたのよ。
叔父様に似て凛々しいお顔は当時から王子様のようで、この時は帰ったら私の婚約者になっていただけるようにお父様にお願いしようと考えておりましたの。
けれど結局それは言えないまま、帰ってほどなくしての突然のお別れでした。
乳児にはたまにある事とは聞きましたけれど、まさかそれが産まれて半年にもならない私の従妹、いえ、義妹に起こるなどと誰が想像するでしょうか。
私はまさかという思いで葬儀に参列致しましたわ。
眠っているような亡骸で、今にも可愛らしいお目目を開けてくれるのではと頬を触れば、その冷たさにこれは現実なのだと、幼心にそう痛感させられて、公爵令嬢であるとどれほど自分に言い聞かせても涙を止められなくてお母様に抱き付いて声をあげて泣いてしまいましたの。
そんな私とは対照的に、あれほどに溺愛していらっしゃった実のご家族である叔母様夫妻もレイヤード様達ご兄弟も、決して取り乱さず、ただただ静かに見送っておられました。
幼い私は愚かにもなぜあんなに可愛がっていらっしゃったのに悲しまないのか不思議で仕方ありませんでしたが、お父様からは帰宅した時初めて従妹の心臓は生まれつき弱く、長くは生きられないと余命宣告されていたのだと教えられました。
お父様があの日号泣していたのも、お母様が最初はぎこちない笑みを浮かべていたのもそれを知ってしまったのが理由だったのだと。
そして家族全員で小さな命を全力で慈しみ、取り乱すことなく見送っているあの姿勢こそが、辺境を守るグレインビル家の命に対する覚悟なのだと教えて下さいました。
そう諭され、改めて思い返すレイヤード様は更に輝いて見えて、喪があけてこのご家族の悲しみが少し癒えた頃、家格が上であるこの公爵令嬢である私がこの家に娘として嫁ぐお話をお父様に、そして叔父様にお話ししよう、親愛なる方達の寂しさを埋めて差し上げようと時が過ぎるのを待つ事に決めました。
なのに····なのに何故それからそう経たずして、卑しい赤ん坊を養女に、義妹になどしたのか!
ちょうどアリリアが咲く今頃の季節でしたわ。
最初はお腹を痛めて産んだ最愛の娘を失った叔母様の為に仕方なくどこぞの貴族の血を少なからず引いた出自くらいは確かで従妹に似た娘を養女にしたのだと思いましたの。
けれど聞けば全く似ていない、魔力も無い、出自も不明な捨て子だなんて!
家格が劣るとはいえ仮にも侯爵家。
それもこの公爵令嬢たる私が嫁いで差し上げても問題のない、代々辺境を守護してきた、いつ公爵に陞爵してもおかしくないような我が国の国王陛下の覚えも良い由緒ある魔術師家系のグレインビル侯爵家なのに。
私はすぐにお父様と掛け合いましたわ。
お母様にも、全く頼りにならないお兄様にもです。
仮にも公爵家ですし、親戚なのだから口を挟むべきですのに····けれど誰も取り合っては下さらなかった。
冗談だと思われたのか笑われただけ。
最後はこの私が嫁ぐのだから代わりに私を義娘として婚約よりも先にあの家で過ごしたいと胸の内をさらけ出しましたのに、お父様とお兄様からは苦笑い。
お母様など笑いもせず身の程をわきまえなさいなどと冷たく突き放され····以来これまでの淑女教育に加えて当主のお兄様がしているような、男性がなさるような教育を追加されましたわ。
身の程ならば公爵令嬢である私よりも赤ん坊とはいえ卑しいあの娘に言うべきでしょうに。
それでも考え方を変えれば、次男である為に当主にはなれないレイヤード様に嫁ぐならこの教育も無駄にはならないと思い直し、私の覚悟をお母様に見せる為にも日々教師にかじりつき、学んだ事は知識としては及第点だと学園に入学する頃にはお父様にも褒められましたの。
苦笑していたのは恐らく娘に辛く当たったご自身を反省していらしたのだと思いますわ。
そう言うとお兄様はまだまだグレインビル領には行かせられない、お母様にはまだ社交界で1人には出来ない未熟者と言われましたけど、理不尽でしかありませんわね。
仲良くして下さいましね」
レイヤード様と初めてお会いしたのはミレーネ叔母様がまだお元気で、麗しいご兄弟の本当の妹であるルナチェリアがお産まれになってすぐのグレインビル邸でしたわ。
確か予定日より1か月ほど早い出産で、少しシスコン、いえ、妹である叔母様をあまりにも心配したお父様の暴走を止め続けるのも2か月が限界だったので、家族総出でお祝いも兼ねつつお父様をほどほどで連れ帰る為に一家でお邪魔しましたの。
幸い叔母様も従妹も産まれてからの経過は良好のようで、普段はあまり表情を変えないお母様は最初こそ何故だかぎこちない微笑みでしたが、途中からはほっとしたのかちゃんと微笑んでおりましたわ。
お父様は恥ずかしながら、終始号泣でしたけども。
初めて見る従妹は叔父様と同じお色のふわふわの金髪に赤目。
けれど顔立ちは叔母様に似て優しげでした。
叔父様は娘を終始優しく見つめていらっしゃいましたし、叔母様もそんな父娘を微笑ましそうに眺めておりました。
怖くて1度しか抱っこはできませんでしたけど、まだまだ小さくてふにゃふにゃの体からはお乳の甘い香りがしていて、私はその瞬間にこの子はこの公爵令嬢であるお姉様が守ってさしあげようと心に誓いましたの。
数日の滞在でしたけど、レイヤード様はバルトス様とよく妹の取り合いをしていらっしゃって、幼心にもとても微笑ましい光景で、3兄妹共にお美しくて天国に迷い込んだような光景でしたわ。
なぜかそこに私のお兄様が混ざっていた時には思わず足を踏んで差し上げましたけれども。
当時は初めてお会いしたからかまだ私の事をレイヤード様は可愛がっていただけたように思いますの。
自分からお屋敷のお庭を案内してくれたこともありましたのよ。
叔父様に似て凛々しいお顔は当時から王子様のようで、この時は帰ったら私の婚約者になっていただけるようにお父様にお願いしようと考えておりましたの。
けれど結局それは言えないまま、帰ってほどなくしての突然のお別れでした。
乳児にはたまにある事とは聞きましたけれど、まさかそれが産まれて半年にもならない私の従妹、いえ、義妹に起こるなどと誰が想像するでしょうか。
私はまさかという思いで葬儀に参列致しましたわ。
眠っているような亡骸で、今にも可愛らしいお目目を開けてくれるのではと頬を触れば、その冷たさにこれは現実なのだと、幼心にそう痛感させられて、公爵令嬢であるとどれほど自分に言い聞かせても涙を止められなくてお母様に抱き付いて声をあげて泣いてしまいましたの。
そんな私とは対照的に、あれほどに溺愛していらっしゃった実のご家族である叔母様夫妻もレイヤード様達ご兄弟も、決して取り乱さず、ただただ静かに見送っておられました。
幼い私は愚かにもなぜあんなに可愛がっていらっしゃったのに悲しまないのか不思議で仕方ありませんでしたが、お父様からは帰宅した時初めて従妹の心臓は生まれつき弱く、長くは生きられないと余命宣告されていたのだと教えられました。
お父様があの日号泣していたのも、お母様が最初はぎこちない笑みを浮かべていたのもそれを知ってしまったのが理由だったのだと。
そして家族全員で小さな命を全力で慈しみ、取り乱すことなく見送っているあの姿勢こそが、辺境を守るグレインビル家の命に対する覚悟なのだと教えて下さいました。
そう諭され、改めて思い返すレイヤード様は更に輝いて見えて、喪があけてこのご家族の悲しみが少し癒えた頃、家格が上であるこの公爵令嬢である私がこの家に娘として嫁ぐお話をお父様に、そして叔父様にお話ししよう、親愛なる方達の寂しさを埋めて差し上げようと時が過ぎるのを待つ事に決めました。
なのに····なのに何故それからそう経たずして、卑しい赤ん坊を養女に、義妹になどしたのか!
ちょうどアリリアが咲く今頃の季節でしたわ。
最初はお腹を痛めて産んだ最愛の娘を失った叔母様の為に仕方なくどこぞの貴族の血を少なからず引いた出自くらいは確かで従妹に似た娘を養女にしたのだと思いましたの。
けれど聞けば全く似ていない、魔力も無い、出自も不明な捨て子だなんて!
家格が劣るとはいえ仮にも侯爵家。
それもこの公爵令嬢たる私が嫁いで差し上げても問題のない、代々辺境を守護してきた、いつ公爵に陞爵してもおかしくないような我が国の国王陛下の覚えも良い由緒ある魔術師家系のグレインビル侯爵家なのに。
私はすぐにお父様と掛け合いましたわ。
お母様にも、全く頼りにならないお兄様にもです。
仮にも公爵家ですし、親戚なのだから口を挟むべきですのに····けれど誰も取り合っては下さらなかった。
冗談だと思われたのか笑われただけ。
最後はこの私が嫁ぐのだから代わりに私を義娘として婚約よりも先にあの家で過ごしたいと胸の内をさらけ出しましたのに、お父様とお兄様からは苦笑い。
お母様など笑いもせず身の程をわきまえなさいなどと冷たく突き放され····以来これまでの淑女教育に加えて当主のお兄様がしているような、男性がなさるような教育を追加されましたわ。
身の程ならば公爵令嬢である私よりも赤ん坊とはいえ卑しいあの娘に言うべきでしょうに。
それでも考え方を変えれば、次男である為に当主にはなれないレイヤード様に嫁ぐならこの教育も無駄にはならないと思い直し、私の覚悟をお母様に見せる為にも日々教師にかじりつき、学んだ事は知識としては及第点だと学園に入学する頃にはお父様にも褒められましたの。
苦笑していたのは恐らく娘に辛く当たったご自身を反省していらしたのだと思いますわ。
そう言うとお兄様はまだまだグレインビル領には行かせられない、お母様にはまだ社交界で1人には出来ない未熟者と言われましたけど、理不尽でしかありませんわね。
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