秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
109 / 491

108.笑い上戸が過ぎる

しおりを挟む
「アリアチェリーナ嬢、その、彼女達が無理に連れて来たようだがすまなかった」
「なぜ王子が謝るのです?」

 僕の前からケーキが消えるのを待って隣の王子がおずおずと謝ってくる。
そう思うなら事前に食い止めて欲しかったんだけどな。
ちなみに大人組は3人で世間話を始めてるよ。

「彼女達は····」
「ディナ」
「リナ」
「ディナとリナは俺にとっては従姉弟のような関係なんだが、少々お節介で····」

 その言葉に美人達はムッとする。

「お節介じゃありませんわ。
ね、ディナ」
「そうでしてよ。
まだまだお相手を決められない我が国の王子を憂いておりますの。
普段あまりお顔を合わせられないご令嬢の中でアリアチェリーナ嬢とはまだお話しされていらっしゃらなかったでしょう」
「いや、それは····しかしレイ、レイヤードと約束をしていて····」

 王子がもごもごと言い淀む。

「ですから私達がでしゃばってお連れしたんですのよ」
「レイヤード様にはそうお話しなさればルド様にはお咎めもないでしょう」
「····レイヤードに限ってそれは····」

 うん、何となく読めてきたけど、大方レイヤード義兄様に僕と直接的な接触はしないとか約束してたんじゃないかな。
で、それを聞いたお節介美人達が気を利かせて僕をここに連れて来ちゃったと。

 これ、後で義兄様にこってりしぼられるやつだよ。
義兄様なら王子相手でもそんなの関係ないって一刀両断するよ、絶対。
王子もわかってて何で強く引き止められなかったんだろう?

 でもまあ3人の会話聞いてたら、明らかに王子のが弱いから仕方ないのかな。
年上のお姉様達だものね。

 でもでも、そんな事よりも義兄様の気遣いを感じられて僕はとっても嬉しいな。
お家に帰ったら久々に僕にお耳と尻尾を生やしてわしゃわしゃさせてあげようかな。
毛がふわふわした動物がいいかな?
それともつるつるした感じ?
うーん、迷うなあ。

「ねえ、アリアチェリーナ嬢。
まだハンカチはお持ち?」

 清楚美人の微笑みに現実へと引き戻される。
何だか嫌な予感がするな。

「残念ですが、伯母様、従姉様の他にお2人に差し上げてしまって、差し上げられそうな手持ちが無くなってしまいましたの」
「そんなにお持ちになってらしたのね。
予備があればルドルフ殿下にも差し上げて欲しかったのですけれど····」
「せっかくの機会でしたのに、本当に残念ですわ」

 やっぱりね。
とりあえず心にもない事を言っておこう。

「ぶふっ····あ、いや、ふふ、すまない。
そんな笑顔、で····くくっ」

 あ、顔に出ちゃってた?

 にしても王子って笑い上戸なのかな。
そんなに面白い?
むしろ不敬とか言われそうだけど。

「ね、ディナ。
やっぱりアリアチェリーナ嬢が絡むとルド様の表情が違いますでしょう」
「ええ、そのようね。
私もアリアチェリーナ嬢なら····」
「2人共、悪ふざけはそこまでになさい」

 スルフェルド公爵夫人が柔らかい口調だけどどことなく圧を込めて止める。

「そうでしてよ。
これ以上は三大筆頭公爵家と称される私達にも許されない発言よ」

 やんわりと、しかし確実に制止するカリェッド公爵夫人。

「「申し訳ございませんでしたわ」」

 美人2人はしゅんと項垂れ、謝る。

「すまないね、グレインビル侯爵令嬢。
今の話は忘れて欲しい」

 僕にもしっかり口止めするリュドガミド公爵。

「もちろんそう致しますわ」

 願ったり叶ったりだよね。

「ぶっ、そんな嬉しそうに····くっ····」

 王子、もう少し空気読みなよ。
明らかに王子の婚約者が決まってなくて年上の従姉達が気を利かせようとしたら僕に飛び火したってやつだよね。

 一応僕は魔力0の虚弱体質引きこもり令嬢を地でいってるんだから、間違っても三大筆頭公爵家が僕を推したら駄目なやつだからね。
まあグレインビル侯爵令嬢ってバックグラウンドはおいしいだろうけど、それを上回る不良物件だと心得て欲しいよ、まったくもう。

 なんて思いながらもお顔は淑女スマイルだよ。

「ふふ、怒らないでくれ。
大丈夫だ、俺だってレイヤードの怒りの雷撃は恐いんだぞ。
それにアリアチェリーナ嬢を妹にしたいと思う事はあっても、11才の女の子にそっち方面の感情は湧かないから安心してくれ」

 今度は王子に頭をぽんぽんされる。
何でバレるのかな。
でも僕の機嫌が急降下したのがわかったのは何よりだよ、王子。

 それにしても僕の頭は撫で心地が良いのかな?
さっきはお隣の公爵にもされたし。

「まあ、ずるいですわ。
私達だってアリアチェリーナ嬢には妹になって欲しいと思いましたのよ。
ね、リナ」
「そうですわ。
抜け駆けは許しませんわよ」
「もしかして、それで俺の婚約者に仕立てて妹として囲い込もうとしたのでは····」

 王子が恐る恐る尋ねると、美人達は清々しい程に開き直った。

「あら、やっと気づきましたのね」
「お年を考えてもまだまだ社交界には出ませんのよ。
それにグレインビル家が一丸となって領から出さない深窓の妖精姫ですもの。
次はいつお会いできるかわかりませんわ。
ね、ディナ」

 うん、やっぱりもう帰りたい。
仲が良いのはわかったけど、僕にとっては巻き込み事故以外の何物でもないよ。

 でも見る限り三大筆頭公爵家と王家は今世代では婚姻での縁は結ばない感じだね。
確か血が近くなりすぎたからっていうので何代か前から分家筋での婚姻はあっても本家との婚姻は意図的に回避してるって義父様から聞いた事があったな。

「歓談中に申し訳ございません。
そろそろ····」

 この会場で1番身なりを良くしているバトラーが遠慮がちにお隣の公爵に話しかける。
身分的には平等だけど、公爵と公爵夫人とでは立場が違うものね。

「楽しい時間は過ぎるのが早いね。
行こうか。
王子、グレインビル侯爵令嬢のエスコートをお願いしても?」

 むぅ、余計な事を。
でも今回は仕方ないか。

「喜んで。
受けてもらえるか?」
「私の方こそ喜んで」

 淑女スマイルで差し出された手を取る。

「ぶはっ」

 ちょっと、そこでうけるの止めてよね。
王子ってば笑い上戸が過ぎるよ!
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...