秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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142.舌鼓と戻ってから3

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「····領に戻ったら私のお耳と尻尾を差し出しますわ。
だから····ね、兄様?
ちょっとだけ!
せっかくブラシを作りましたの!」
「えー、なになに?
アリー嬢になら俺はいつでも触ってくれていいよ?」

 アン様、何と魅力的なお誘いを?!

「····本当に帰ったら生やすの、アリー?」
「俺の天使の耳と尻尾····いいな」

 ふふふ、義兄様達の心が動いた!

「もちろんお約束します、レイヤード兄様!
バルトス兄様、ダメですか?
せっかく作ったアン様専用のブラシもあるのに····ダメ?」
「くっ、そんなに悲しそうな顔を····」

 僕は自分のお顔を全力でご利用だ!
言っておくけど、僕のお顔は可愛いぞ!
四捨五入して400才、顔の過大評価はしないけど、過小評価もしないのだ!

「えー、俺専用のブラシ?
嬉しいな」

 アン様、気に入って下さると嬉しいです。
あともう一押し、僕頑張る!

「さすがグレインビルの悪魔使い····」
「ゼスト、アリーは可愛いね」
「隣国の王子の私を訓練に巻き込んで悪魔の所業の限りを尽くしたあのグレインビル兄弟が?!」
「アリー嬢が将来有望な悪女に見える····」

 ロイヤル達うるさいな。
お耳も尻尾もないんだからどっか行ってくれていいんだけどな。
あ、闇の精霊さんはいてもいいからね。

「レイヤード兄様、ふわとろオムライスも作るよ?」
「帰ったら覚えておいてよ」

 よっしゃ!

「バルトス兄様、お耳と尻尾は何がいい?」
「か、考えておくよ、俺の天使」

 義兄様コンプリート!

 僕はこんな時の為に忍ばせていたブラシをニーアから受け取った鞄から取り出す。
これは竜馬の外見をした次女の抜けた鬣を集めて作ったんだ。
アン様の短い毛に合わせて作ったブラシだよ。

 アン様は僕の前にニーアが置いた椅子に座って尻尾を揺らしてスタンバイ。
僕も椅子に腰かけたままでブラッシング開始だ。

「うわぁ、このブラシ気持ちいいね」
「お馬の次女の鬣ブラシです。
終わったら差し上げます」
「ありがとう。
次女ってあのお馬さんかな?
もしかしてシルのもあったりする?」
「ありますよ。
次女は竜馬の可愛い末っ子ちゃんです。
シル様はお元気ですか?」
「うん。
か、可愛い····確かにアリー嬢に甘えてる時はそう見えなくもないよね。
ははは····。
シルは元気だけど、今はアリー嬢に合わせる顔が無いって。
謹慎が明けるまでに1から鍛え直すみたい。
アリー嬢が引き止めてくれなかったら今頃職を辞してたね。
ありがとう」

 そう、シル様は護衛対象のルド様と僕を守り切れなかった責任を取って当初は団長を辞そうとしてたんだ。
だけど近衛騎士団だけじゃなく、王都騎士団からも継続を嘆願された。
もちろん僕も目覚めてすぐにシル様を直接呼んでもらって高熱の力で目を潤ませて本人に継続をお願いした。
僕は自分のお顔の使いどころは間違えない。

 そうしてシル様への決まった処罰は減俸と数ヶ月の謹慎。

 個人的に僕にもふられるのを約束してくれたんだけど、今のところあれから1度も会ってない。
何せ僕は高熱で数週間寝込むし、普通の発熱は一月は続いたし、微熱になってから更にもう一月だ。
平熱になって落ちた体力が少し戻ったのが今だもの。
王都に戻ってしまわれたら追いかけてもいけない。
まあ追いかけるくらいならそのまま義父様のいるグレインビルに帰ってるけど。

 高熱出してる間は闇の精霊さんがずっと干渉してくれてたみたい。
いつもより苦痛も和らいで過ごしやすい方だった。
起きた時に親指に指輪が嵌まってた時はびっくりしたけど、事情を知ったゼスト様が貸してくれたんだって。
多分闇の精霊さんも望んだからだろうけど。

 だからか暇を見つけてはこの城に来ちゃってた。
僕の部屋には入れなかったみたいだけど、よく扉の前を何かにつけて通り過ぎてたんだって。
そんなに心配しなくても、高熱の間は義兄様達のどちらかは必ずいたから盗難なんてあり得ないのにね。

 ルド様もゼスト様にかこつけて並んで歩いてたみたい。
こっちは僕を気にしてたんだと思うけど、内々とはいえロイヤル接近禁止命令が出てるから当然僕は今に至るまでルド様とはまともに話してないよ。

 まあそんな事してたからだろうね。
ルド様とゼスト様は当然のように再訓練に放り込まれたけど、ゼスト様はとばっちりじゃないかな?

 義兄様達とお城の廊下ですれ違う度にびくびくするようになったらしいけど、それなら来なきゃいいのに。
王子2人がドM気質って事かな?

 僕がすれ違う所をたまたま見たらあんまりびくびくしてたから一応確認はしたよ。
義兄様達は僕が昔義兄様達にかした訓練よりは軽いって言ってたから、多分王子達が甘えた環境で過ごし過ぎただけでどうって事ないよね。

 その直後の訓練は浜辺でやったらしいんだけど、レイヤード義兄様が餌を海に沈める時にタコに似た海洋魔獣を生け捕ったってお知らせくれた時には舞い上がっちゃった。
生きの良い餌が2つ手に入ったから使ってみたんだって教えてくれた義兄様のキラキラしたお顔は本当に素敵だったよ。

 ちょうど部屋にいたバルトス義兄様に連れられて転移してみたら、浜辺でうねる吸盤付きのムチムチ脚に絡まったルド様とゼスト様が悲鳴を上げてた。
僕も一緒に歓喜の悲鳴を上げちゃった。

 それがそこで串焼きになってるイカ!

 こっちではクラスクって名前らしいけど、僕と義兄様達の間では今はタコと同じくイカ呼びになってる。

 もちろんバルトス義兄様に凍らせて貰ったよ。
危うくロイヤルの氷漬けも出来上がるところだったけど、凍ったのは足先だけですぐに自分達で溶かしてたから軽い凍傷になったくらいで終わったみたい。

 レイヤード義兄様からは良い生き餌っぷりを褒められてたよ。
あの義兄様が褒めるってよっぽどだよ。
良かったね、2人共。

 僕はその後興奮のあまり1日だけ高熱をぶり返して闇の精霊さんのお世話になっちゃった。

 よし、ブラッシング完了。
艶々になった。

 僕の視線を感じてアン様がお耳をこっちに傾けてくれた!
もちろんさわさわと触れる。
ニーアがブラシを綺麗にしてくれたから、今度はお耳もブラッシング。

「んー」

 気持ち良さそうなお声をいただきました!

 何か後ろで義兄様達が睨み付けてるけど、アン様はどこ吹く風だ。
僕も今は見なかった事にしよう。
ごめんね、ケモ耳様は神様なんだよ。

「ねえ、アリー。
私の両親からの書簡は受け取った?」

 なんて思ってたら、空気読まないギディ様なんだから。

「受け取らなければギディ様みたいに変装して押し掛けるって渡された呪いの手紙ですか?」
「ふふっ、あの2人の書簡を呪い扱いって、そんなの言うのアリーくらいだよ」

 だって内々のお約束を良いことに変装して身分を偽ったら会えるって意味わかんないルールで来てるの自分達じゃんね?
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