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206.身内の計略〜ルドルフside
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「久しぶりだな、グレインビル侯爵令嬢」
「お久しぶりでございます、ルドルフ第2王子殿下」
約1年ぶりに会うアリアチェリーナ=グレインビル嬢はふわりと微笑み、綺麗なカーテシーを取る。
場所が場所なだけにそれぞれの立場に相応しい、かなり畏まった言動となるが今は仕方ない。
早く心の妹とくだけた話し方をしたいものだ。
「楽にしてこちらにかけられよ」
顔を上げさせ、テーブルを挟んで正面へと座らせる。
俺の後ろには護衛のシルヴァイト=ルーベンスが控える。
俺の専属侍女達が茶の用意を始めた。
まだ勝手がわからないようだが、アリー嬢の連れてきたこの城の女官が教えてくれている。
恐らくそれも兼ねて挨拶に来てくれたのだろう。
改めて上げられた顔を見れば、会わない1年は可愛らしさの中に美しさを垣間見せるようになったらしい。
今回俺がヒュイルグ国の王城を訪れたのは親善外交の為だ。
学園の卒業を控え、アドライド国王族として担う政務の一環となる。
これから約一月の間、この国を外遊する予定だ。
今はこの国の王、エヴィン国王との挨拶の為、まずは王城の滞在先ともなる離宮に通された。
ヒュイルグ国は北の諸国の中でも最北端と呼ばれている。
わが国では雪の散らつき始める季節でもこの国は既に積雪レベルだ。
また両国の間には河が流れているのだが、この河はアビニシア領に流れる大海にも繫がる大河であり、船を使う必要がある。
加えて陸路も雪で安定しない為、どうしてもこうした供をつけた正式な来国の移動には天候の影響も大きい。
予想はしていたが、やはり数日の長旅となってしまった。
内心帰りはもっと酷い事になるんじゃなかろうかと危惧しているが、それは口にしないでおこう。
まずは離宮で荷ほどきや心身の疲れと汚れを落とした後、明日の昼間に王との謁見となる。
両国の最短を結ぶ航路ができれば旅程はもっと短くなるが、それは長らく紛争地帯となっていたわが国のグレインビル領とヒュイルグ国の辺境領とを結ぶ航路になる。
情勢的にも互いの領土の特性的にも実現は難しいだろう。
「こちらの気候はグレインビル領より寒いと聞くが、体調はいがかか?」
「ヒュイルグ国の皆様からは私の健康に多大なお気遣いをいただき、大きく崩れる事なく穏やかに過ごしております」
なるほど。
やはり家族と過ごす邸と違っていくらか小さな不調はあるという事か。
健やかに、とはいかないらしい。
彼女の体調管理を担う馴染みの専属侍女は連れずにこの国に渡航したと聞いている。
確か彼女にエヴィン国王が婚約の打診をした翌月だった。
「そうか。
次兄殿は息災か?」
「はい。
ここ数日は冒険者の指名依頼でこの王都を離れておりますが、毎日連絡はしております」
再会してから1番良い笑顔だ。
相変わらず兄が大好きらしい。
侍女と女官達がテーブルに茶の用意を手際良くセッティングする。
出された茶菓子はアリー嬢の邸で見たものも混ざっている。
どうやらこの城のパティシエもうちの城同様陥落させられたらしい。
「ルーベンス以外は下がれ」
そうしてシル以外を下がるよう命令すれば、アリー嬢も女官達に目配せして下がらせた。
それとなく周りに盗聴、盗視を防止する魔法を繰り出す。
卒業までにA級冒険者昇格を目指す為に研鑽を積み、以前より腕を上げている。
「今からは楽に話してくれ。
俺の事もルドでいいぞ。」
「ありがとうございます。
随分励まれているのですね」
「ああ、卒業までにA級冒険者になるつもりだからな」
「そうなんですね。
アドライド国に帰国する時の楽しみが1つ増えました。
ぜひ頑張って下さいね」
これはアリー嬢が帰国する頃には昇格していろという意味だろう。
「ああ、ありがとう。
ところで、その····あー、その、だ····」
やばい、聞きたい事はあるんだが、うまい言い回しを思いつかない。
「はい?」
くそ、小首傾げると白銀髪が軽く頬にかかって可憐だな。
今でこれだけの美貌の片鱗を見せているなら、咲かせた時はどれだけの大輪となるんだろうか。
ぶっちゃけ少女趣味っぽい国王との進捗状況を知りたいんだと言葉そのまま聞いてしまいたい!!!!
「あー····いつグレインビル領に帰るんだ?」
でも聞けない!
あの悪魔兄弟でも無ければ聞けない!
「そうですねえ。
本当はもう帰ろうかと思っていたのですが、ルド様もこちらへいらした関係で滞在中は私も延ばすようにとお願いされてしまいました」
「え?!」
苦笑するアリー嬢の言葉に絶句してしまう。
まさかの俺の親善外交が弊害になった?!
「表向きはアドライド国とヒュイルグ国の親善の為に、でしたけど、実際は内々にアドライド国国王陛下に打診されたエヴィン国王との婚約を無かった事にする為のお詫び滞在兼、各国の商会との顔繋ぎだったので」
「え、そう、だったの、か?」
「はい。
陛下はもちろんですが、ギディアス様もご存知だったはずです」
父上?!
兄上も?!
「え、と····多分それを狙ってエヴィン国王は私に婚約を打診したんだと思いますよ?」
····知らなかったー!!
俺の様子に当然だがアリー嬢も戸惑う。
「それから、その····」
更に何かを言おうかどうか迷っている。
「頼む、気にせず言って欲しい」
まだ何かあるんだろうな。
そうだよ、兄上もそんな一筋縄じゃいかないよな。
俺がただ心の妹を心配したからって、様子見なんて軽く行かせるわけないよな。
「恐らく私達の滞在期間は一月以上になるかと····」
「え、何故?」
「一月後はグレインビル領ですら豪雪に見舞われるので····」
····うん、まあ何となくそんな気がしないでも無かったけどな。
あれ、でも····。
バッと後ろを振り返る。
「シル····まさか····」
バツが悪そうにそっと目をそらされた。
「やっぱり知ってたのかー!!」
あまりに悔しくて絶叫する。
どうやら身内に嵌められてしまったらしい····。
「お久しぶりでございます、ルドルフ第2王子殿下」
約1年ぶりに会うアリアチェリーナ=グレインビル嬢はふわりと微笑み、綺麗なカーテシーを取る。
場所が場所なだけにそれぞれの立場に相応しい、かなり畏まった言動となるが今は仕方ない。
早く心の妹とくだけた話し方をしたいものだ。
「楽にしてこちらにかけられよ」
顔を上げさせ、テーブルを挟んで正面へと座らせる。
俺の後ろには護衛のシルヴァイト=ルーベンスが控える。
俺の専属侍女達が茶の用意を始めた。
まだ勝手がわからないようだが、アリー嬢の連れてきたこの城の女官が教えてくれている。
恐らくそれも兼ねて挨拶に来てくれたのだろう。
改めて上げられた顔を見れば、会わない1年は可愛らしさの中に美しさを垣間見せるようになったらしい。
今回俺がヒュイルグ国の王城を訪れたのは親善外交の為だ。
学園の卒業を控え、アドライド国王族として担う政務の一環となる。
これから約一月の間、この国を外遊する予定だ。
今はこの国の王、エヴィン国王との挨拶の為、まずは王城の滞在先ともなる離宮に通された。
ヒュイルグ国は北の諸国の中でも最北端と呼ばれている。
わが国では雪の散らつき始める季節でもこの国は既に積雪レベルだ。
また両国の間には河が流れているのだが、この河はアビニシア領に流れる大海にも繫がる大河であり、船を使う必要がある。
加えて陸路も雪で安定しない為、どうしてもこうした供をつけた正式な来国の移動には天候の影響も大きい。
予想はしていたが、やはり数日の長旅となってしまった。
内心帰りはもっと酷い事になるんじゃなかろうかと危惧しているが、それは口にしないでおこう。
まずは離宮で荷ほどきや心身の疲れと汚れを落とした後、明日の昼間に王との謁見となる。
両国の最短を結ぶ航路ができれば旅程はもっと短くなるが、それは長らく紛争地帯となっていたわが国のグレインビル領とヒュイルグ国の辺境領とを結ぶ航路になる。
情勢的にも互いの領土の特性的にも実現は難しいだろう。
「こちらの気候はグレインビル領より寒いと聞くが、体調はいがかか?」
「ヒュイルグ国の皆様からは私の健康に多大なお気遣いをいただき、大きく崩れる事なく穏やかに過ごしております」
なるほど。
やはり家族と過ごす邸と違っていくらか小さな不調はあるという事か。
健やかに、とはいかないらしい。
彼女の体調管理を担う馴染みの専属侍女は連れずにこの国に渡航したと聞いている。
確か彼女にエヴィン国王が婚約の打診をした翌月だった。
「そうか。
次兄殿は息災か?」
「はい。
ここ数日は冒険者の指名依頼でこの王都を離れておりますが、毎日連絡はしております」
再会してから1番良い笑顔だ。
相変わらず兄が大好きらしい。
侍女と女官達がテーブルに茶の用意を手際良くセッティングする。
出された茶菓子はアリー嬢の邸で見たものも混ざっている。
どうやらこの城のパティシエもうちの城同様陥落させられたらしい。
「ルーベンス以外は下がれ」
そうしてシル以外を下がるよう命令すれば、アリー嬢も女官達に目配せして下がらせた。
それとなく周りに盗聴、盗視を防止する魔法を繰り出す。
卒業までにA級冒険者昇格を目指す為に研鑽を積み、以前より腕を上げている。
「今からは楽に話してくれ。
俺の事もルドでいいぞ。」
「ありがとうございます。
随分励まれているのですね」
「ああ、卒業までにA級冒険者になるつもりだからな」
「そうなんですね。
アドライド国に帰国する時の楽しみが1つ増えました。
ぜひ頑張って下さいね」
これはアリー嬢が帰国する頃には昇格していろという意味だろう。
「ああ、ありがとう。
ところで、その····あー、その、だ····」
やばい、聞きたい事はあるんだが、うまい言い回しを思いつかない。
「はい?」
くそ、小首傾げると白銀髪が軽く頬にかかって可憐だな。
今でこれだけの美貌の片鱗を見せているなら、咲かせた時はどれだけの大輪となるんだろうか。
ぶっちゃけ少女趣味っぽい国王との進捗状況を知りたいんだと言葉そのまま聞いてしまいたい!!!!
「あー····いつグレインビル領に帰るんだ?」
でも聞けない!
あの悪魔兄弟でも無ければ聞けない!
「そうですねえ。
本当はもう帰ろうかと思っていたのですが、ルド様もこちらへいらした関係で滞在中は私も延ばすようにとお願いされてしまいました」
「え?!」
苦笑するアリー嬢の言葉に絶句してしまう。
まさかの俺の親善外交が弊害になった?!
「表向きはアドライド国とヒュイルグ国の親善の為に、でしたけど、実際は内々にアドライド国国王陛下に打診されたエヴィン国王との婚約を無かった事にする為のお詫び滞在兼、各国の商会との顔繋ぎだったので」
「え、そう、だったの、か?」
「はい。
陛下はもちろんですが、ギディアス様もご存知だったはずです」
父上?!
兄上も?!
「え、と····多分それを狙ってエヴィン国王は私に婚約を打診したんだと思いますよ?」
····知らなかったー!!
俺の様子に当然だがアリー嬢も戸惑う。
「それから、その····」
更に何かを言おうかどうか迷っている。
「頼む、気にせず言って欲しい」
まだ何かあるんだろうな。
そうだよ、兄上もそんな一筋縄じゃいかないよな。
俺がただ心の妹を心配したからって、様子見なんて軽く行かせるわけないよな。
「恐らく私達の滞在期間は一月以上になるかと····」
「え、何故?」
「一月後はグレインビル領ですら豪雪に見舞われるので····」
····うん、まあ何となくそんな気がしないでも無かったけどな。
あれ、でも····。
バッと後ろを振り返る。
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