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220.最近の普段着と愛憎ドラマの香り
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「ところで随分と····その、ここの生活に馴染んだ格好をしているな」
そう、ルドルフ王子がお茶を濁すかのような言い方をしてしまうくらいには僕の今の格好は貴族令嬢っぽくない。
もはや定番になっているこの国の町娘っぽい防寒服に、寒くなってきたからあの氷熊の白いポンチョを被っているんだ。
ニーアが丸いお耳をつけたフード付きなんだけど、これを付ける理由を聞いたら一言『絶対に必要なものですから』って言われた。
きっとできる僕の専属侍女は何か大きな考えがあったんだろうけど、今のところそれがわからないんだよね。
最初の頃はこの格好で滞在する部屋から移動する僕を不審な目で見る人もいたけど、きっともう馴染んでしまったんじゃないかな。
今では僕を知る兵士さんや騎士さん達が皆微笑ましそうに見てくるんだ。
僕のもこもこ厚着スタイルは美少女を美幼女に見せるのかもしれないね。
なかなか身長が伸びない弊害がここで発動するとは思わなかったよ。
もちろん僕は自分のお顔は過大評価も過小評価もしないからね。
大人の魅力は発展途上かもしれないけど、悪くても美幼女なのは間違いないはずだよ。
それに令嬢らしく簡素ながらもドレスやワンピースなんて着てたら僕は凍死する。
スカート・イン・ズボン、最高!
もこもこ民族スタイル素敵!
むしろ高級品の白い貴族ポンチョが浮いちゃうけどね。
でも服は使ってナンボだから気にしないよ。
この豪雪の国でこんな時期に体調崩したら間違いなくこの虚弱な深層の令嬢仕様なボディは死滅しかねないもの。
防寒大事。
1度だけそんな僕の服装をからかいに、ドレスに毛皮を羽織って例の残念筆頭令嬢とその母がお供や取り巻き達と連れ立って来たんだけど、どこぞの元将軍で国王な人がいつもの側近と飛んできて追い払った。
僕のお気に入りとなったこの温室に向けて魔法攻撃しようとしてたから、正直助かったよ。
侍従扮するレイヤード義兄様がガチ雷撃しそうになってて、危なく隣国の王城で戦争の狼煙を上げるところだったからさ。
戦争はダメ、絶対。
以来彼女達はこの一角に立ち寄らなくなったから、多分国王が立入禁止区域に指定したんじゃないかな。
そうそう、あの母娘がお城をある程度好きに登城してるのは、夫人がまだ他国の王女として輿入れする時にその国の多額の援助金欲しさにそういった権利を認めたから、らしいよ。
元々王女は当時の王太子に輿入れしたくてお金をチラつかせてたんだけど、結局当時はただの公爵令息だった今の宰相に変更させるのにこの国も色々譲歩したみたい。
初めて聞いた時は国としてあり得ない珍エピソードに笑っちゃった。
その頃より財政状態がもっと酷かったのは今の国王が即位したあたりだけど、夫人が輿入れしてきた頃から悪かったんだろうね。
それでも当時の王族達は慎ましやかな生活とはほど遠い営みを続けてたんだから、呆れちゃう。
だからこそビックリ条件を認める羽目になったんだろうけどさ、普通は腐っても王女なんだし、支援金だか持参金だか欲するなら形だけでも王太子妃にするものじゃないの?
どんだけ我を貫く王族達だったんだろうね。
当時の王太子は夫人を突っぱねて別の人と婚姻を結んだし、宰相さんは元々の婚約者と別れて夫人と婚姻を結ばされるし、国の中枢の人間関係がどこぞの昔の昼ドラ並みにドロドロしてたんじゃないかな。
僕の前世の幼馴染みの1人が喜々として食いつきそうな愛憎渦巻くドラマがあったに違いないけど、現実にそういうのが起こるのはちょっと引く。
「はい。
この格好が1番温かくて楽に動けるので」
「そ、そうか。
その、耳も、可愛らしくてよく似合っている。
そこで何かするのか?」
気づけばお城の人達が僕に向ける目をしてた王子一行は、僕の後ろの温室をロックオンしたみたい。
おっと、これはお話しついでに温室にお招きするコースかな?
シル様だけ置いてどっか行かないのかな?
ロイヤル接近禁止はどうなった?
「温室で朝の日課をしようかと。
ゴードンさん、こちらはアドライド国の第2王子殿下のルドルフ様です。
ルドルフ王子、こちらはお城の庭師頭を務めるゴードン=アルロー男爵ですわ」
温室のドアに手をかけようとしてたゴードンお爺さんに押しつけられないかと試みる。
「王子殿下とは。
遠路はるばるようこそ我が国にお越し下さいました。
お初におめもじつかまつります。
ゴードン=アルローと申します。
ゴードンとお呼び下さい」
僕の紹介で王子の前に出ると、略式だけど帽子を取ってそのまま胸に手を当てて紳士らしいこの国の礼を取る。
ゴードンお爺さんは元軍人さんだから姿勢が良くて様になってるね。
パッと見は人属みたいだけど、彼は獣人さんだよ。
鷲属だから目は鋭い感じだけど、お耳は白い髪の毛の中だし、腕の焦げ茶色の小さくてふわふわな羽毛は服に隠れてて見えないからわからないよね。
「ルドルフだ。
楽にして欲しい。
それよりこれは温室なのか?
それにしては随分作りがしっかりしているな」
「はい。
我が国は豪雪地帯。
並みの温室では壊れてしまいますからな」
「なるほど。
入って見せてもらっても良いだろうか?」
えー、それなら僕シル様のお耳と尻尾を所望····。
パチ。
あれ、どこかで静電気の弾ける微かな音が····。
チラリと侍従バージョンの義兄様が軽く僕を振り返って目が合う。
はっ、嘘だよ、レイヤード義兄様。
僕はどこぞのロイヤルと違って自主規制は守る女だからね!
認識阻害は僕には通じないようにしているのか、バッチリ凛々しいご尊顔を拝顔する。
執事のコスプレみたいで新たな一面はいつ見ても格好良いね。
「この国の温室がどのようのものか見てみたい。
見た事のない硝子を使っていて興味深いな」
うん、この国の温室ってわけでもないけどね。
「どうぞ、お入り····」
「お前のせいよ!」
僕と違ってゴードンお爺さんは快く了承の意を伝えようとしたところで、癇癪を起こしたような甲高い声に遮られた。
そう、ルドルフ王子がお茶を濁すかのような言い方をしてしまうくらいには僕の今の格好は貴族令嬢っぽくない。
もはや定番になっているこの国の町娘っぽい防寒服に、寒くなってきたからあの氷熊の白いポンチョを被っているんだ。
ニーアが丸いお耳をつけたフード付きなんだけど、これを付ける理由を聞いたら一言『絶対に必要なものですから』って言われた。
きっとできる僕の専属侍女は何か大きな考えがあったんだろうけど、今のところそれがわからないんだよね。
最初の頃はこの格好で滞在する部屋から移動する僕を不審な目で見る人もいたけど、きっともう馴染んでしまったんじゃないかな。
今では僕を知る兵士さんや騎士さん達が皆微笑ましそうに見てくるんだ。
僕のもこもこ厚着スタイルは美少女を美幼女に見せるのかもしれないね。
なかなか身長が伸びない弊害がここで発動するとは思わなかったよ。
もちろん僕は自分のお顔は過大評価も過小評価もしないからね。
大人の魅力は発展途上かもしれないけど、悪くても美幼女なのは間違いないはずだよ。
それに令嬢らしく簡素ながらもドレスやワンピースなんて着てたら僕は凍死する。
スカート・イン・ズボン、最高!
もこもこ民族スタイル素敵!
むしろ高級品の白い貴族ポンチョが浮いちゃうけどね。
でも服は使ってナンボだから気にしないよ。
この豪雪の国でこんな時期に体調崩したら間違いなくこの虚弱な深層の令嬢仕様なボディは死滅しかねないもの。
防寒大事。
1度だけそんな僕の服装をからかいに、ドレスに毛皮を羽織って例の残念筆頭令嬢とその母がお供や取り巻き達と連れ立って来たんだけど、どこぞの元将軍で国王な人がいつもの側近と飛んできて追い払った。
僕のお気に入りとなったこの温室に向けて魔法攻撃しようとしてたから、正直助かったよ。
侍従扮するレイヤード義兄様がガチ雷撃しそうになってて、危なく隣国の王城で戦争の狼煙を上げるところだったからさ。
戦争はダメ、絶対。
以来彼女達はこの一角に立ち寄らなくなったから、多分国王が立入禁止区域に指定したんじゃないかな。
そうそう、あの母娘がお城をある程度好きに登城してるのは、夫人がまだ他国の王女として輿入れする時にその国の多額の援助金欲しさにそういった権利を認めたから、らしいよ。
元々王女は当時の王太子に輿入れしたくてお金をチラつかせてたんだけど、結局当時はただの公爵令息だった今の宰相に変更させるのにこの国も色々譲歩したみたい。
初めて聞いた時は国としてあり得ない珍エピソードに笑っちゃった。
その頃より財政状態がもっと酷かったのは今の国王が即位したあたりだけど、夫人が輿入れしてきた頃から悪かったんだろうね。
それでも当時の王族達は慎ましやかな生活とはほど遠い営みを続けてたんだから、呆れちゃう。
だからこそビックリ条件を認める羽目になったんだろうけどさ、普通は腐っても王女なんだし、支援金だか持参金だか欲するなら形だけでも王太子妃にするものじゃないの?
どんだけ我を貫く王族達だったんだろうね。
当時の王太子は夫人を突っぱねて別の人と婚姻を結んだし、宰相さんは元々の婚約者と別れて夫人と婚姻を結ばされるし、国の中枢の人間関係がどこぞの昔の昼ドラ並みにドロドロしてたんじゃないかな。
僕の前世の幼馴染みの1人が喜々として食いつきそうな愛憎渦巻くドラマがあったに違いないけど、現実にそういうのが起こるのはちょっと引く。
「はい。
この格好が1番温かくて楽に動けるので」
「そ、そうか。
その、耳も、可愛らしくてよく似合っている。
そこで何かするのか?」
気づけばお城の人達が僕に向ける目をしてた王子一行は、僕の後ろの温室をロックオンしたみたい。
おっと、これはお話しついでに温室にお招きするコースかな?
シル様だけ置いてどっか行かないのかな?
ロイヤル接近禁止はどうなった?
「温室で朝の日課をしようかと。
ゴードンさん、こちらはアドライド国の第2王子殿下のルドルフ様です。
ルドルフ王子、こちらはお城の庭師頭を務めるゴードン=アルロー男爵ですわ」
温室のドアに手をかけようとしてたゴードンお爺さんに押しつけられないかと試みる。
「王子殿下とは。
遠路はるばるようこそ我が国にお越し下さいました。
お初におめもじつかまつります。
ゴードン=アルローと申します。
ゴードンとお呼び下さい」
僕の紹介で王子の前に出ると、略式だけど帽子を取ってそのまま胸に手を当てて紳士らしいこの国の礼を取る。
ゴードンお爺さんは元軍人さんだから姿勢が良くて様になってるね。
パッと見は人属みたいだけど、彼は獣人さんだよ。
鷲属だから目は鋭い感じだけど、お耳は白い髪の毛の中だし、腕の焦げ茶色の小さくてふわふわな羽毛は服に隠れてて見えないからわからないよね。
「ルドルフだ。
楽にして欲しい。
それよりこれは温室なのか?
それにしては随分作りがしっかりしているな」
「はい。
我が国は豪雪地帯。
並みの温室では壊れてしまいますからな」
「なるほど。
入って見せてもらっても良いだろうか?」
えー、それなら僕シル様のお耳と尻尾を所望····。
パチ。
あれ、どこかで静電気の弾ける微かな音が····。
チラリと侍従バージョンの義兄様が軽く僕を振り返って目が合う。
はっ、嘘だよ、レイヤード義兄様。
僕はどこぞのロイヤルと違って自主規制は守る女だからね!
認識阻害は僕には通じないようにしているのか、バッチリ凛々しいご尊顔を拝顔する。
執事のコスプレみたいで新たな一面はいつ見ても格好良いね。
「この国の温室がどのようのものか見てみたい。
見た事のない硝子を使っていて興味深いな」
うん、この国の温室ってわけでもないけどね。
「どうぞ、お入り····」
「お前のせいよ!」
僕と違ってゴードンお爺さんは快く了承の意を伝えようとしたところで、癇癪を起こしたような甲高い声に遮られた。
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