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279.医療のデリケートな歴史と健康体
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「根本的な疑問を尋ねても良いか?」
え、僕は残り時間までに目の前のデザート達を平らげる責務を全うしたいいんだけど?
「いや、半分はぼやきみたいな物だ。
食べながらでいいし、答えたくないなら別にいい。
グレインビル嬢からは詮索するなと言われているし、手術については答えてくれたのもわかっている。
感謝もしている」
そろそろ面倒になってきた僕の不穏な気配を感じたのか、国王はすぐさまそう続けた。
今度はバルトス義兄様がタルトを差し出すから、無意識的にパクリ。
フルーツの酸味とカスタードクリーム、タルト台のなんと素晴らしきハーモニーよ。
機嫌の良い僕はコクリと頭を振って了承してあげる。
「何故そなたはそこまでの知識や技術を持っている?
そなたが医術を学んだ国なら薬学ももっと発達しているし、あの心臓の発作を抑える薬もあるのだろう?」
モグモグ····ゴクン。
ふむ、当然の疑問ではあるか。
でも話すの面倒臭いから無視かな。
今度は紅茶のストレートをゴクンと飲む。
この組み合わせも好きなんだよね。
ああ、でも釘を刺すのも大事かと思い直す。
「そうだけど、僕のいた国の知識は門外不出だし、それについて答えるつもりはないよ。
手術の内容をさらっと話したけどさ、アリアチェリーナから手術をしたから命を落とす場合もあるって聞いた時、君はすぐに受け入れられたのかな?」
「いや····すぐには····」
「だよね?
逆にそうなった時、同意を得て行っても異端だ人殺しだとこちらが罪に問われる可能性だってある。
君達患者となる側のそういう危険についての受け入れって、出来ないでしょ?」
僕の世界でだって、そういうので迫害を受けた歴史はあるんだよ。
僕の生きた時代にだって、医療裁判てのがあるくらいにデリケートな問題でもある。
諸々が遅れているこの世界でこんな手術をしたなんて大々的に言えば、アリアチェリーナである僕はあちらの世界で起きた、ほぼ有罪確定の魔女裁判やら異端審問みたいな拷問でも受けて死刑一直線じゃないかな。
「その、通りだ」
苦い顔でそう答えたのはもちろん国王。
手術の話をした時にムササビの僕に食ってかかったの君なんだからね。
「例えば発作を抑える薬。
その薬は人を殺せる道具から生まれたと言っても、躊躇なく手を出せる?
その薬を1つ作るにしても、爆発しちゃう類いの物なんだけど、作れと言えば進んで作る人がどれくらいいる?」
「ば、爆発?!」
王子はギョッとした顔になる。
うん、普通はそうだよね。
狭心症のあの薬はダイナマイトの粉塵を吸った人の実体験が起源だったんじゃなかったかな?
「もちろん安全に作る方法もあるかもしれないけど、そういうのに対応した器具を作る技術や概念すら君達にはないよ?
僕の国は魔法には頼らず、人の本来の力だけで発展する方法を知恵を出し合って考えてきた」
そもそもあっちは魔法の無い世界なんだけどね。
向こうの世界ではもちろん安全に作られてるよ。
とか思いつつ、バルトス義兄様の無駄のないデザート運びに再びモグモグタイムへと集中する。
テンポよくパクパクとチョコレートとタルトを交互に食べ進めれば····タルトが目の前からいなくなっちゃった?!
これは事件?!
タルト誘拐事件ですか?!
「その、話を続けてもらえないだろうか?」
どことなく王子が遠慮がちに声をかけてきてハッとする。
「「チッ」」
「あ、いや、すまない」
義兄様達の舌打ちに王子が慌てたところで完全に我に返った。
何の話してたっけ?
あ、そうだそうだ。
「もちろんそこにはたくさんの犠牲や危険がつきまとったよ。
それでも諦めず、時には自らの危険を承知で医療の発展に貢献した人達がいた。
そんな人達のたゆまぬ努力が何十年、何百年と受け継がれて常に続いてきたから、医療を施す側も受け入れる側も魔法に頼ってきた君達の国よりも様々な面で発展している。
門外不出なのは、現状では受け入れる側と相容れないからだ」
「だが····」
「君達はアリアチェリーナを知っているから僕の話をいくらか受け入れられている。
特に君は身内が亡くなるかもしれない切羽詰まる状況だった。
けれど治癒や回復の魔法に頼り切ったその他大勢の人々はどうかな?」
「····っ」
「それが僕とアリアチェリーナの答えだ。
僕の国にだって、迫害された先駆者達はたくさんいるよ?
君達がアリアチェリーナを真の意味で守れる補償はどこにもないよね」
「「····」」
2人の王族はとうとう押し黙った。
「それに僕は今後アリアチェリーナに呼び出される事は2度とない。
僕達との繋がりは今日を限りに断たれるからね」
「そんな!
アリー嬢は師匠を失うのか?!」
王子は何を心配してるのかな?
「うーん····君の思ってるのとは多分違うんだけど。
まあ元々どうやっても僕を呼び出すのは不可能だったのが、たまたまうっかり可能になって、それが本来の形に戻るだけだよ。
アリアチェリーナも納得しているし、特に悲しんでもない」
そもそも今の中年男性も僕なんだし。
あ、健康体なのは心残りかな。
生きてるってこんなに体が楽な事だったのかって改めて感じてるもの。
アリアチェリーナの体は本当に頑張って生きてるんだよね。
何だかしみじみしちゃうよ。
え、僕は残り時間までに目の前のデザート達を平らげる責務を全うしたいいんだけど?
「いや、半分はぼやきみたいな物だ。
食べながらでいいし、答えたくないなら別にいい。
グレインビル嬢からは詮索するなと言われているし、手術については答えてくれたのもわかっている。
感謝もしている」
そろそろ面倒になってきた僕の不穏な気配を感じたのか、国王はすぐさまそう続けた。
今度はバルトス義兄様がタルトを差し出すから、無意識的にパクリ。
フルーツの酸味とカスタードクリーム、タルト台のなんと素晴らしきハーモニーよ。
機嫌の良い僕はコクリと頭を振って了承してあげる。
「何故そなたはそこまでの知識や技術を持っている?
そなたが医術を学んだ国なら薬学ももっと発達しているし、あの心臓の発作を抑える薬もあるのだろう?」
モグモグ····ゴクン。
ふむ、当然の疑問ではあるか。
でも話すの面倒臭いから無視かな。
今度は紅茶のストレートをゴクンと飲む。
この組み合わせも好きなんだよね。
ああ、でも釘を刺すのも大事かと思い直す。
「そうだけど、僕のいた国の知識は門外不出だし、それについて答えるつもりはないよ。
手術の内容をさらっと話したけどさ、アリアチェリーナから手術をしたから命を落とす場合もあるって聞いた時、君はすぐに受け入れられたのかな?」
「いや····すぐには····」
「だよね?
逆にそうなった時、同意を得て行っても異端だ人殺しだとこちらが罪に問われる可能性だってある。
君達患者となる側のそういう危険についての受け入れって、出来ないでしょ?」
僕の世界でだって、そういうので迫害を受けた歴史はあるんだよ。
僕の生きた時代にだって、医療裁判てのがあるくらいにデリケートな問題でもある。
諸々が遅れているこの世界でこんな手術をしたなんて大々的に言えば、アリアチェリーナである僕はあちらの世界で起きた、ほぼ有罪確定の魔女裁判やら異端審問みたいな拷問でも受けて死刑一直線じゃないかな。
「その、通りだ」
苦い顔でそう答えたのはもちろん国王。
手術の話をした時にムササビの僕に食ってかかったの君なんだからね。
「例えば発作を抑える薬。
その薬は人を殺せる道具から生まれたと言っても、躊躇なく手を出せる?
その薬を1つ作るにしても、爆発しちゃう類いの物なんだけど、作れと言えば進んで作る人がどれくらいいる?」
「ば、爆発?!」
王子はギョッとした顔になる。
うん、普通はそうだよね。
狭心症のあの薬はダイナマイトの粉塵を吸った人の実体験が起源だったんじゃなかったかな?
「もちろん安全に作る方法もあるかもしれないけど、そういうのに対応した器具を作る技術や概念すら君達にはないよ?
僕の国は魔法には頼らず、人の本来の力だけで発展する方法を知恵を出し合って考えてきた」
そもそもあっちは魔法の無い世界なんだけどね。
向こうの世界ではもちろん安全に作られてるよ。
とか思いつつ、バルトス義兄様の無駄のないデザート運びに再びモグモグタイムへと集中する。
テンポよくパクパクとチョコレートとタルトを交互に食べ進めれば····タルトが目の前からいなくなっちゃった?!
これは事件?!
タルト誘拐事件ですか?!
「その、話を続けてもらえないだろうか?」
どことなく王子が遠慮がちに声をかけてきてハッとする。
「「チッ」」
「あ、いや、すまない」
義兄様達の舌打ちに王子が慌てたところで完全に我に返った。
何の話してたっけ?
あ、そうだそうだ。
「もちろんそこにはたくさんの犠牲や危険がつきまとったよ。
それでも諦めず、時には自らの危険を承知で医療の発展に貢献した人達がいた。
そんな人達のたゆまぬ努力が何十年、何百年と受け継がれて常に続いてきたから、医療を施す側も受け入れる側も魔法に頼ってきた君達の国よりも様々な面で発展している。
門外不出なのは、現状では受け入れる側と相容れないからだ」
「だが····」
「君達はアリアチェリーナを知っているから僕の話をいくらか受け入れられている。
特に君は身内が亡くなるかもしれない切羽詰まる状況だった。
けれど治癒や回復の魔法に頼り切ったその他大勢の人々はどうかな?」
「····っ」
「それが僕とアリアチェリーナの答えだ。
僕の国にだって、迫害された先駆者達はたくさんいるよ?
君達がアリアチェリーナを真の意味で守れる補償はどこにもないよね」
「「····」」
2人の王族はとうとう押し黙った。
「それに僕は今後アリアチェリーナに呼び出される事は2度とない。
僕達との繋がりは今日を限りに断たれるからね」
「そんな!
アリー嬢は師匠を失うのか?!」
王子は何を心配してるのかな?
「うーん····君の思ってるのとは多分違うんだけど。
まあ元々どうやっても僕を呼び出すのは不可能だったのが、たまたまうっかり可能になって、それが本来の形に戻るだけだよ。
アリアチェリーナも納得しているし、特に悲しんでもない」
そもそも今の中年男性も僕なんだし。
あ、健康体なのは心残りかな。
生きてるってこんなに体が楽な事だったのかって改めて感じてるもの。
アリアチェリーナの体は本当に頑張って生きてるんだよね。
何だかしみじみしちゃうよ。
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