453 / 491
9
452.美女と転移〜ニーアside
しおりを挟む
「ニーアさん……それでも、どうか……お願い……」
ガバッとジャガンダ国にあると聞いた、土下座とおぼしきスタイルで、オデコを床につけてうずくまる、ポンコツ聖女。
「そのような無駄な事をする合間に、婚約者とやらに会いに行けるのでは?」
見れば見るほど、ドス黒い感情が生まれていく。
お嬢様に目をかけてもらえるだけ、幸せだと思えと殴りつけたい。
「私が離殿に行くと、コッへ様の身が危険に曝されるのです!
ニーアさんしか頼る人が……」
顔を上げないまま、ボロボロ泣いているのだろう。
床に水滴が落ちていく。
「無駄ですよ。
私の主はお嬢様であり、私の力はお嬢様以外に使いません。
そもそもあなたはお嬢様の体調管理も全てやる、危険からも守ると仰りながら、約束は全て反故にしている」
「それは……」
「諦めるか、自らの手で守るかを選ぶべきです。
口先以外で行動を示さない者には、結局誰も守れないとは思いますが。
それに血を吐く程の努力もせずに、助けられないと泣き言だけは一人前。
それで婚約者が死んだ時、あなたは結局他人を悪者にして、自らを慰めるのでしょうね」
「そんな事!
……そんな……こと、は……」
「私は当初、治癒魔法や回復魔法が全く使えませんでした。
それでも死ぬ気でマスターした」
「それは……ニーアさんが竜人で、魔力量だって……」
「魔力量は確かに多い方でしたよ。
あなたのように」
「……え……」
「ご自分の魔力量もわからないくらい、手加減した練習をされていたのですね。
聖女は貴重で倒れて死んではいけないとでも習いましたか?」
「それは……」
「この教会の獣人差別から考えれば、違いますよね?
死ぬ気でやれ、と言われていた方でしょう。
私は毎日魔力を枯渇させ続けました。
そうすれば、少しずつ魔力を保持する量が増えますから」
「そんな……一歩間違えたら……」
「死ぬでしょうね。
しかしそんな私よりも、体が虚弱すぎてすぐに死に瀕するくせに、グレインビル領の為、ひいてはご家族の為に動くお嬢様の方が、よほど死に近い場所で生きていました。
もちろん、今も。
お嬢様は、動ける内は元気に見せます。
見えるのではなく、そう見せるのです。
あなたはお嬢様と出会ってから、1度でもお体を直接確かめましたか?
その程度の事もせず、大方、今もそのように切羽詰まった状況にあるとは、考えもしなかったのではありませんか」
「……あ」
図星らしい。
ポンコツ聖女は真っ青になって、カタカタと震える。
「そんな主なのですから、早急に、とにかく魔力量を増やして、回復や治癒の魔法を真っ先に覚えようとするのは当然のこと。
私の今の魔力も魔法も、お嬢様の為に研鑽したのに、何故、それ以外を助ける為に、その力を削らねばならないのです?
そもそもあなたは、お嬢様のお陰で婚約者とやらを取り戻してから、どれ程の努力をしたのですか?」
「そ、れは……」
上げた顔をひたりと見つめれば、言葉を詰まらせた。
「もうじきお嬢様は、高熱を出されます。
死に瀕する可能性が高いのに、あなたは私の主を犠牲にしても良いから、自分の惚れた男を救え。
そう言っているのと同義に聞こえます」
「そんな……つもり……」
「あなたは未だに他人を生かす為に最大限の努力をしていない。
無駄な悲壮感で自分の薄汚い精神をちょろまかすのはやめられては?」
更につっこんでいけば、突如ゾワリとした危機感が背中を走る。
本能的にポンコツ聖女に攻撃しかけて……なんとか思い止まった。
メキ、とおろし金から異音がするも、ギリギリで力を抜いた。
「そんなに婚約者が心配なら、婚約者の所で、一緒に死ねばいいんじゃない。
君、不愉快だ。
ニーアは僕の可愛いイタチに、ちゃんと栄養補給をさせてあげて」
不意に、よく知る魔力を纏った、見慣れない姿の女性が、ポンコツ聖女の後ろから発生して、共に消える。
転移か。
白金髪に赤目の絶世の美女には、大き目の三角耳とフワフワした尻尾がついていた。
お嬢様が以前、オムトロライスを作っていた時と同じ耳と尻尾。
「やはりフェネックとやらは、お嬢様にこそ似合う」
うっかりそんな事をぼやきつつ、野菜のすりおろしを再開した。
※※後書き※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
最近、更新ペースが落ちてしまい、申し訳ないm(_ _)m
忙しいのもあるのですが、これまでの伏線の回収に、過去回を読み返して確認してから書く事もあったりして、いつもより書く時間がかかっております。
さてさて、今回のフェネックですが、『150.食べさせ合いっこ』に登場するので、よろしければ振り返って読んでみて下さい(*^^*)
ガバッとジャガンダ国にあると聞いた、土下座とおぼしきスタイルで、オデコを床につけてうずくまる、ポンコツ聖女。
「そのような無駄な事をする合間に、婚約者とやらに会いに行けるのでは?」
見れば見るほど、ドス黒い感情が生まれていく。
お嬢様に目をかけてもらえるだけ、幸せだと思えと殴りつけたい。
「私が離殿に行くと、コッへ様の身が危険に曝されるのです!
ニーアさんしか頼る人が……」
顔を上げないまま、ボロボロ泣いているのだろう。
床に水滴が落ちていく。
「無駄ですよ。
私の主はお嬢様であり、私の力はお嬢様以外に使いません。
そもそもあなたはお嬢様の体調管理も全てやる、危険からも守ると仰りながら、約束は全て反故にしている」
「それは……」
「諦めるか、自らの手で守るかを選ぶべきです。
口先以外で行動を示さない者には、結局誰も守れないとは思いますが。
それに血を吐く程の努力もせずに、助けられないと泣き言だけは一人前。
それで婚約者が死んだ時、あなたは結局他人を悪者にして、自らを慰めるのでしょうね」
「そんな事!
……そんな……こと、は……」
「私は当初、治癒魔法や回復魔法が全く使えませんでした。
それでも死ぬ気でマスターした」
「それは……ニーアさんが竜人で、魔力量だって……」
「魔力量は確かに多い方でしたよ。
あなたのように」
「……え……」
「ご自分の魔力量もわからないくらい、手加減した練習をされていたのですね。
聖女は貴重で倒れて死んではいけないとでも習いましたか?」
「それは……」
「この教会の獣人差別から考えれば、違いますよね?
死ぬ気でやれ、と言われていた方でしょう。
私は毎日魔力を枯渇させ続けました。
そうすれば、少しずつ魔力を保持する量が増えますから」
「そんな……一歩間違えたら……」
「死ぬでしょうね。
しかしそんな私よりも、体が虚弱すぎてすぐに死に瀕するくせに、グレインビル領の為、ひいてはご家族の為に動くお嬢様の方が、よほど死に近い場所で生きていました。
もちろん、今も。
お嬢様は、動ける内は元気に見せます。
見えるのではなく、そう見せるのです。
あなたはお嬢様と出会ってから、1度でもお体を直接確かめましたか?
その程度の事もせず、大方、今もそのように切羽詰まった状況にあるとは、考えもしなかったのではありませんか」
「……あ」
図星らしい。
ポンコツ聖女は真っ青になって、カタカタと震える。
「そんな主なのですから、早急に、とにかく魔力量を増やして、回復や治癒の魔法を真っ先に覚えようとするのは当然のこと。
私の今の魔力も魔法も、お嬢様の為に研鑽したのに、何故、それ以外を助ける為に、その力を削らねばならないのです?
そもそもあなたは、お嬢様のお陰で婚約者とやらを取り戻してから、どれ程の努力をしたのですか?」
「そ、れは……」
上げた顔をひたりと見つめれば、言葉を詰まらせた。
「もうじきお嬢様は、高熱を出されます。
死に瀕する可能性が高いのに、あなたは私の主を犠牲にしても良いから、自分の惚れた男を救え。
そう言っているのと同義に聞こえます」
「そんな……つもり……」
「あなたは未だに他人を生かす為に最大限の努力をしていない。
無駄な悲壮感で自分の薄汚い精神をちょろまかすのはやめられては?」
更につっこんでいけば、突如ゾワリとした危機感が背中を走る。
本能的にポンコツ聖女に攻撃しかけて……なんとか思い止まった。
メキ、とおろし金から異音がするも、ギリギリで力を抜いた。
「そんなに婚約者が心配なら、婚約者の所で、一緒に死ねばいいんじゃない。
君、不愉快だ。
ニーアは僕の可愛いイタチに、ちゃんと栄養補給をさせてあげて」
不意に、よく知る魔力を纏った、見慣れない姿の女性が、ポンコツ聖女の後ろから発生して、共に消える。
転移か。
白金髪に赤目の絶世の美女には、大き目の三角耳とフワフワした尻尾がついていた。
お嬢様が以前、オムトロライスを作っていた時と同じ耳と尻尾。
「やはりフェネックとやらは、お嬢様にこそ似合う」
うっかりそんな事をぼやきつつ、野菜のすりおろしを再開した。
※※後書き※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
最近、更新ペースが落ちてしまい、申し訳ないm(_ _)m
忙しいのもあるのですが、これまでの伏線の回収に、過去回を読み返して確認してから書く事もあったりして、いつもより書く時間がかかっております。
さてさて、今回のフェネックですが、『150.食べさせ合いっこ』に登場するので、よろしければ振り返って読んでみて下さい(*^^*)
0
あなたにおすすめの小説
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~
季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」
建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。
しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった!
(激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!)
理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造!
隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。
辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。
さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。
「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」
冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!?
現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる!
爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる