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479.200年前の魔眼〜ジルコミアside
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「まさか……」
「嘘……ヒッ……」
顔色を一瞬で青白くさせた教皇とマーガレット。
マーガレットはどこか呆然とした様子で女王の顔を凝視したかと思うと、暫しの間女王と見つめ合う。
やがて短い悲鳴を上げ、ガタガタと震えながら握っていた鉄格子を離すと、そのままフラフラと後退して無様に尻餅をついて座りこむ。
「あら、やっと気づいたの?」
女王は特に気にした様子もなく、愉しげに言うと、後退して距離を取ろうとしていた教皇の胸ぐらを、素早い動きで掴んだ。
「ベルヌ、この男を牢に。
そうね、あの女の隣にでも並べて座らせて」
女王は魔法で身体強化をしていたらしい。
教皇が抵抗する間もなく、指示を出しながらベルヌに向かってドンと教皇の体を突いた。
「ぐっ……は、放せ!
やめろ!
放してくれ!」
「チッ」
ベルヌとしては静観したかったんだろう。
だが教皇が後ろ向きで自分に突進してきてしまえば、無視も出来ない。
太く鍛えた腕が教皇の体を掴んだ途端、暴れて魔法で攻撃しようとした為、ベルヌは舌打ちしつつ、懐から魔法を使えなくする囚人用の首輪を出す。
慣れた手つきで教皇に首輪を嵌めると、そのまま女王の指示に従い、牢の中のマーガレットの隣に跪かせた。
「何だ?!
首輪……魔法が使えんだと?!
ひ、ひぃ!
放せ!
儂が悪かった!
頼むから放してくれ!」
牢の中の魔方陣には万が一を考え、魔法を使えなくする効果も付与してあると女王から聞いている。
それでも念の為、教皇とすれ違うまでは女王の前に立って背に庇う。
すれ違い様、教皇がビクッと体を跳ねて悲鳴を上げたから、必要なかったか。
だが牢に連れられて両膝をつかされた教皇は、隣で腰を抜かして座りこんだマーガレットとは違い、赦しを乞いながらも、力の限り暴れてしまう。
人属と鍛えた獣人属との力の差は歴然としていても、ベルヌが教皇の首輪を外す動きは取れないだろう。
「はあ、暴れるな」
「うぐっ……」
とはいえ、ベルヌがいつまでも教皇の無駄な抵抗に付き合う義理もない。
ゲンコツを教皇の頭に軽くお見舞いして黙らせた。
私はひとまず大人しくなった教皇を確認してから、女王の隣に移動する。
「ふふふ、2人共いい気味。
ベルヌはそのまま、話が終わるまで押さえておいてちょうだい」
「……チッ」
返事の代わりに舌打ちを返すベルヌに、しかし女王は微笑みかけてから、教皇に視線をやる。
「ねえ、教皇?
ベルヌに気を取られている場合かしら?
それとも現実を直視できなくて、あえてベルヌにからんでいるの?」
ベルヌに対して出す声音とは明らかに違う、威圧的な声音で女王が教皇に問う。
すると教皇はギクリと体を強張らせ、緩慢な動きで女王へと顔を向け、叫んだ。
「ううう嘘だ!
何故またお前が?!
お前はあの時、あの時ぃ……」
「あ……ああっ……ごめんなさい!
ごめんなさい!」
言葉を尻すぼみさせてガタガタ震え始める教皇と、同じく震えて赦しを乞うマーガレット。
私とベルヌはその異様な光景に、眉を顰めてしまう。
「200年ほど前だったわね。
あなた達2人は、当時聖女だった私を殺して魔眼を抉り出した。
せっかく聖女からやり直して、この国で女王としての地位を取り戻すつもりだったのに」
「ご、ごめんなさい!
ごめんなさい!
赦して!
聖女様!!」
マーガレットが土下座して泣き叫ぶ。
教皇はガクリと体の力を抜いて、項垂れてしまった。
200年前?
魔眼?
そういえば、魔眼が最後に確認されたのは、200年前……。
「200年前……魔眼?」
「ふふっ……あははっ」
私と同じ考えに至ったのか、ベルヌが小さく呟く。
そんなベルヌに、私の女王は歪んだ笑みを浮かべた。
「そうよ、ベルヌ。
200年前にオークションで出品された魔眼はね、私の前世のものなの。
そこの2人によって生きたまま、抉り出されたのよ」
「前世?
どういう意味だ?
何を言っている?」
訝しむベルヌ。
私も話の意味が解らない。
「そうねえ、あなた達にも関わる事だもの。
教えてあげるわ」
女王はベルヌを、そして私を見てから笑みを深めた。
「嘘……ヒッ……」
顔色を一瞬で青白くさせた教皇とマーガレット。
マーガレットはどこか呆然とした様子で女王の顔を凝視したかと思うと、暫しの間女王と見つめ合う。
やがて短い悲鳴を上げ、ガタガタと震えながら握っていた鉄格子を離すと、そのままフラフラと後退して無様に尻餅をついて座りこむ。
「あら、やっと気づいたの?」
女王は特に気にした様子もなく、愉しげに言うと、後退して距離を取ろうとしていた教皇の胸ぐらを、素早い動きで掴んだ。
「ベルヌ、この男を牢に。
そうね、あの女の隣にでも並べて座らせて」
女王は魔法で身体強化をしていたらしい。
教皇が抵抗する間もなく、指示を出しながらベルヌに向かってドンと教皇の体を突いた。
「ぐっ……は、放せ!
やめろ!
放してくれ!」
「チッ」
ベルヌとしては静観したかったんだろう。
だが教皇が後ろ向きで自分に突進してきてしまえば、無視も出来ない。
太く鍛えた腕が教皇の体を掴んだ途端、暴れて魔法で攻撃しようとした為、ベルヌは舌打ちしつつ、懐から魔法を使えなくする囚人用の首輪を出す。
慣れた手つきで教皇に首輪を嵌めると、そのまま女王の指示に従い、牢の中のマーガレットの隣に跪かせた。
「何だ?!
首輪……魔法が使えんだと?!
ひ、ひぃ!
放せ!
儂が悪かった!
頼むから放してくれ!」
牢の中の魔方陣には万が一を考え、魔法を使えなくする効果も付与してあると女王から聞いている。
それでも念の為、教皇とすれ違うまでは女王の前に立って背に庇う。
すれ違い様、教皇がビクッと体を跳ねて悲鳴を上げたから、必要なかったか。
だが牢に連れられて両膝をつかされた教皇は、隣で腰を抜かして座りこんだマーガレットとは違い、赦しを乞いながらも、力の限り暴れてしまう。
人属と鍛えた獣人属との力の差は歴然としていても、ベルヌが教皇の首輪を外す動きは取れないだろう。
「はあ、暴れるな」
「うぐっ……」
とはいえ、ベルヌがいつまでも教皇の無駄な抵抗に付き合う義理もない。
ゲンコツを教皇の頭に軽くお見舞いして黙らせた。
私はひとまず大人しくなった教皇を確認してから、女王の隣に移動する。
「ふふふ、2人共いい気味。
ベルヌはそのまま、話が終わるまで押さえておいてちょうだい」
「……チッ」
返事の代わりに舌打ちを返すベルヌに、しかし女王は微笑みかけてから、教皇に視線をやる。
「ねえ、教皇?
ベルヌに気を取られている場合かしら?
それとも現実を直視できなくて、あえてベルヌにからんでいるの?」
ベルヌに対して出す声音とは明らかに違う、威圧的な声音で女王が教皇に問う。
すると教皇はギクリと体を強張らせ、緩慢な動きで女王へと顔を向け、叫んだ。
「ううう嘘だ!
何故またお前が?!
お前はあの時、あの時ぃ……」
「あ……ああっ……ごめんなさい!
ごめんなさい!」
言葉を尻すぼみさせてガタガタ震え始める教皇と、同じく震えて赦しを乞うマーガレット。
私とベルヌはその異様な光景に、眉を顰めてしまう。
「200年ほど前だったわね。
あなた達2人は、当時聖女だった私を殺して魔眼を抉り出した。
せっかく聖女からやり直して、この国で女王としての地位を取り戻すつもりだったのに」
「ご、ごめんなさい!
ごめんなさい!
赦して!
聖女様!!」
マーガレットが土下座して泣き叫ぶ。
教皇はガクリと体の力を抜いて、項垂れてしまった。
200年前?
魔眼?
そういえば、魔眼が最後に確認されたのは、200年前……。
「200年前……魔眼?」
「ふふっ……あははっ」
私と同じ考えに至ったのか、ベルヌが小さく呟く。
そんなベルヌに、私の女王は歪んだ笑みを浮かべた。
「そうよ、ベルヌ。
200年前にオークションで出品された魔眼はね、私の前世のものなの。
そこの2人によって生きたまま、抉り出されたのよ」
「前世?
どういう意味だ?
何を言っている?」
訝しむベルヌ。
私も話の意味が解らない。
「そうねえ、あなた達にも関わる事だもの。
教えてあげるわ」
女王はベルヌを、そして私を見てから笑みを深めた。
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