エロゲーのモブ(♂)に転生した～スパダリたちにエロかわいいと熱愛されてます(泣)～

2 女神の祝福とエリクサーもどき

2ー2 優しくない世界

　２ー２　優しくない世界

　「緊張なんてしなくてもいいからな、カナエ」
　教会へと向かう馬車の中で青い顔をした父が俺に弱々しく微笑んだ。
　いや！
　あんたの方が緊張してるやん！
　俺は、ちょっと引きつつも笑顔を浮かべた。
　俺には、すでにテイムの力があることがわかっている。
　だから、義母などは、がちがちに緊張している父を冷めた目でみていた。
　まあ、確かに、１０歳で受ける神託は、人生を占う意味があるから緊張する気持ちはわかる。
　だが、俺には、自分の人生がわかっている。
　これから９年後に俺は、リリーに断罪されてこの国を追放されるのだ。
　とはいえ、今の俺とリリーの関係からすればそんなことはないかもしれないのだが、何がどうなるかは、蓋を開けてみるまでわからないもの。
　「さあ、ついたぞ！」
　青ざめてぷるぷるしている父が震える声で告げた。
　俺は、従者が馬車の扉を開くとすぐに下りてリリーと義母のことをエスコートする。
　「ありがとう、カナエ」
　義母がにっこりと微笑むのを見て、俺は、嬉しくて口許が緩んでしまう。
　いや。
　落ち着いて考えてみると義母は、とても若く見えるし、美人なのだ。
　俺がヘラヘラしているのを見て、リリーがぷぅっと頬を膨らませる。
　「お母様にばっかり優しくして！」
　「そんなこと、ないよ。リリー」
　俺は、リリーに礼をとると手を差し出した。
　「お手をどうぞ、お嬢様」
　一瞬、リリーの顔がぽぅっとピンクに染まった。
　いや。
　やっぱ、ヒロインは、かわいいな！
　リリーは、ぷぃっとそっぽを向きつつも俺の手をとる。
　「いつも、そうやってごまかすのだから！」
　すねているリリーに父も義母も微笑ましげにくすくすと笑う。
　幸せだ！
　俺、めっちゃ幸せだし！
　家族仲もいい。
　金にも困ってない。
　しかも、俺は、外見がいい！
　自分でいうのもなんだが、領地の女子たちからめっちゃモテている！
　何も不自由なことなどない。
　絵に描いたような幸福な少年。
　それが、俺だ！
　「それでは、いきましょうか。女神の御前に」
　俺は、ヒロインの手をとり教会へと向かって歩き出した。
　俺とリリーに続いて両親も歩き出す。
　春のそよ風が爽やかで。
　俺は、すっかり油断していた。
　この世界が自分にとってそんなに優しくはないということを忘れていたのだ。