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6 それぞれの選ぶ未来
6ー1 1年後のこと
しおりを挟むアウデミスとの出会いから約一年が過ぎた。
あれから、僕は、地下に潜り、表には、商業ギルドのアゼリアさんが出てくれている。
まあ、その辺は、今までと変わりないといえば変わりないのかも。
アリーには、今は、ストレージ内で主に事務仕事をしてもらっている。
彼女とナツキ兄さんは、アウデミスに面が割れてるからね。
だけど、カスケード王国には、特に、変わった動きはなかった。
アウデミス王は、『カンパニュラ』グループと通信の分野においての契約を結び、それを国軍において利用していたが、今のところ、僕たちへの介入はなかった。
「何をたくらんでいる?アウデミス」
ハヅキ兄さんは、ガン泣きしている赤ん坊をあやしながら言った。
うん。
ハヅキ兄さんは、最近、結婚したんだ。
相手は、エルフのメイドさん、フローラさんだ。
2人は、なんと出来ちゃった婚だった。
あの日、突然、『クローランス屋敷』へと逃げ込んだ僕らを受け入れ、世話をしてくれていたフローラさんだったけど、彼女は、男性恐怖症になっていた。
特に、大人の男が怖かったらしい。
無理もなかった。
彼女が、今までどんな目にあわされていたか考えたら、仕方のないことだった。
そういうわけで、彼女は、最初、ハヅキ兄さんや、ナツキ兄さんのことを怖がって、なかなか話をすることもできなかった。
そんな彼女に一目惚れをしたハヅキ兄さんは、時間をかけて、彼女に思いを伝えていった。
それは、なかなか大変なことだった。
ハヅキ兄さんは、何度も、泣かされていた。
2人のことを見ていた僕がいうのだから、間違いない。
そうして、この度無事に結ばれたというわけだった。
そうそう、2人の子供であり、僕の姪でもある赤ん坊の話をしようか。
その子は、フローラさんに似て、すごくかわいいんだけど、なんか、時々、目付きが兄さんに似ていて悪くなることがある。
彼女の名前は、アロアという。
紺色の髪に、菫色の瞳のアロアは、周囲のみんなに愛されて健やかに育っている。
今では、『クローランス屋敷』の主は、兄さんとフローラさんと、赤ん坊のアロアだった。
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