異世界から嫁に来ました~すったもんだがありましたが、すっかり溺愛されてます~

トモモト ヨシユキ

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4 俺の秘密と悪魔の囁き

4ー10 アイ以外

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 4ー10 アイ以外

 「嘘、だ!」
 俺は、叫んだ。
 呼吸を荒げている俺を見下ろして『秤の悪魔』が微笑んだ。
 「目覚めた?ミコト」
 俺は、見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。
 「ここ、は?」
 俺は、ゆっくりと体を起こした。
 白を基調にしたその部屋は、妙に少女ぽくて。
 悪魔は、俺の頬に顔を寄せるとキスをした。
 「ここは、新しいお前の離宮だ」
 「俺の、離宮?」
 俺は、ベッドから出ると大きな窓へと歩み寄った。
 外は、もう、明るくなっていて。
 早く、帰らなくては。
 俺がそう思ったときに、ずきん、と頭に痛みが走った。
 どこに?
 どこに帰る場所があるっていうんだ?
 俺は、自分を嘲る。
 俺には、もう、帰る場所なんてない。
 だって、妹、は。
 俺の妹は・・
 「大丈夫、だ、ミコト」
 悪魔が背後から囁く。
 「お前が望むなら、俺が生き返らせてやろう」
 俺は、ぶんぶん、と頭を振った。
 いらない!
 そんなもの、いらない!
 俺は、窓を背に悪魔を振り返った。
 「なぜ?そんな嘘で俺を騙そうとする?」
 悪魔は、醜い微笑みを浮かべた。
 「望んだのは、お前、だ」
 「俺が望んだ?」
 「そうだ」
 悪魔は、俺の肩を抱き寄せ、俺の耳元に口を寄せた。
 「だから、この離宮を与えた」
 この離宮を?
 俺は、はっと気づいた。
 「あの子たち、は?」
 あの美しい亜麻色の髪の双子。
 彼女らは、どこへ行った?
 「どこへも」
 悪魔がしれっとして答えた。
 「彼女らなら、そこにいるだろう?」
 俺は、悪魔の指す方を見て悲鳴を飲み込んだ。
 そこには、隣り合った椅子に腰かけた少女たちの姿があった。
 目から血を流している少女たち。
 すでに息絶えている2人を見て俺は、堪えきれずに嘔吐していた。
 『秤の悪魔』は、高らかに笑い声をあげた。
 「お前が2人を殺した!お前がいらない、といったんだ!」
 「俺、が?」
 「そうだ」
 悪魔が俺をそっと包み込むように抱き締める。
 「満足したか?ミコト」
 悪魔は、俺の耳元で告げた。
 「この2人は、俺の契約者だった。だが、今となっては昔の話だ」
 悪魔は、俺の心に直接話しかけるように囁く。
 「さあ、俺と契約しよう、ミコト。そうすれば、お前の望みをなんでも叶えてやる。この世の地位も名誉も、金も、何もかも、お前が望むものを与えてやる」
 悪魔が甘美な言葉を送り込んでくる。
 「アイ以外は。アイ以外の全てをお前に与えよう、ミコト」 
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