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2 ダンジョンで修行ですか?

2ー11 世間話ですか?

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 2ー11 世間話ですか?
 
 「あれは、夷狄だ」
 その日の晩飯の後で、俺は、リビングにいる近衛を問い詰めていた。
 昼間の化け物についてだ。
 それに対するおっさんの答えがこれだった。
 夷狄?
 なんじゃ、そりゃ。
 俺がきくとおっさんは、答えた。
 「そりゃ、異世界の神だろうよ」
 はい?
 俺は、キョトンとしていた。
 異世界の神ですと?
 「いいか?バカなお前にもよくわかるように教えてやる。あれには、近寄るな。あれは、人の力では滅することができん化け物だ。そして、気まぐれでこの世界を攻撃する人類の天敵だ」
 人類の天敵?
 俺は、おっさんに訊ねた。
 「なんで神が人類の天敵なんだよ?」
 「それをお前がきくか?」
 近衛のおっさんがふん、と鼻をならした。
 「仮にも魔王を復活させようとしているお前が」
 どういうことだよ?
 俺は、近衛のおっさんを問い詰めようとした。
 だが、それはできなかった。
 ロリババアが俺たちの間に割り込んできたのだ。
 「二人とも、なんのお話をしてるの?」
 「梓さん」
 近衛のおっさんは、ぎっくり感を隠せずに挙動不審になっていた。
 「大丈夫!僕は、薫くんとちょっとした世間話をしてただけだよ」
 「世間話?」
 ロリババアがにっこりと微笑んだ。
 「まあ。ぜひ、私も聞きたいわ。近衛さんの世間話」
 「いや、あの」
 しどろもどろになっているおっさんに俺は、さっさと席を立って自分の部屋へと戻ろうとした。
 「薫くん」
 ロリババアが俺の背中に呼び掛けた。
 「薫くんは、何も心配しなくってもいいんだからね」
 俺は、ロリババアの言葉を無視してリビングを後にした。
 大人たちは、何かを隠している。
 それは、たぶんおぞましいものだ。
 俺は、そんなもの、知りたくはない。
 俺が考えることは、異世界で魔王を復活させることだけ。
 それだけだ。
 この世界で何が行われていようとも俺には関係ないし。
 俺は、魔王の復活のために造られた人造人間だ。
 それ以上でもそれ以下でもない。
 だけど。
 俺は、昼間の化け物を思い出して身震いしていた。
 あんなものがこの世界に存在しているとは。
 おっさんとロリババアが何を隠しているのかは知らんけど、俺は、興味ないし。
 俺が興味あるのは、将来に待っている異世界スローライフだけ。
 それ以外は、全部クソだ。
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