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22 野良は、今日も元気です。

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     翌々年の春。
   刈谷は、めでたく高等部に進学し、俺は、学校をなんとか卒業した。
   本当なら、そのままエスカレーター式に大学へと進学できるところを俺は、断り、正式に刈谷家の家政夫におさめることになった。
    俺たちは、今では、ホテルを出て、広い庭付きの一軒家に移り住んでいる。
   そこは、本来、刈谷の家なんだが、なぜか、啓介さんと悠人の部屋もできてしまい、彼らも一緒に住み着いていた。
    信子と佑は、時々、遊びに来る。
   実は、信子には、若い秘書の恋人ができて、その彼と同居しているのだ。
    小学生になった佑は、今でも、かわいい盛りだ。
   時々、刈谷と喧嘩しているが、俺は、特に心配はしていない。
   ほら、よく言うだろ?
   仲がいいほど、喧嘩するって。   
   そういえば、悠人は、進学した先の大学で、恋人ができたらしい。
       ほんとは、筋肉フェチである悠人の恋人は、アメフトの選手なのだという。
   「へぇー」
    と俺は、特に興味もなく、その話を受け流していたんだが、信子が俺に、
   「悠人は、ネコとタチ、どっちだと思う?」
   とか、きかれて、ほんと、どうでもいい。
   「知らねぇよ」
    と俺は、答えたのだが、どうやら、意外なことに、悠人の方がネコらしいことが発覚した。
    マジで、意外性の男だな。
   以外と言えば、啓介さんだ。
    最近、啓介さんは、仕事帰りにネコカフェに通っているらしい。
   それも、お目当ては、猫だけじゃないのだという。
   俺は、たまに、お気に入りの店員さんへの差し入れの相談をされるのだ。
   どうやら、お酒好きの、甘いもの大好きな、元ヤンのお兄さんらしい。
   二人の恋が成就するように、俺は、祈っている。
   高校生になった刈谷は、いっそう男前に拍車がかかり、俺は、正直、きがきじゃない。
   だけど、刈谷は、相変わらず、俺のことが大好きで。
   前より、溺愛されて、少し、うっとしくなることもあるぐらいだ。
   ハチワレ猫のチーちゃんは、母猫になった。
   父猫は、近所のボス猫の黒ちゃんだ。
   三匹の子猫が生まれたんだが、二匹は、貰い手がついて、お嫁にいってしまった。
   残った一匹は、メスの黒猫で、少し、チーちゃんに似て、ブサカワ気味だ。
   まあ、家が広いので、もう一匹ぐらいは、余裕で飼えるだろう。
   そうそう。
   すみれさんの子供は、無事に産まれ、すくすくと育っている。
   名前は、誠。
   かわいい男の子だ。
   なんやかんや、あったけど、みんな、幸せに暮らしている。
   ところで、久しぶりに実家に帰ったとき、ついでに、散歩がてら刈谷と俺は、俺たちが初めて出会った川原に行ってみたんだ。
    そこで、俺たちは、めちゃくちゃかわいい野良を発見した。
   茶トラの、少し、鼻の低い女の子だ。
   俺が餌をやってたら、刈谷の奴が言ったんだよ。
   「野良は、拾っちゃだめだよ、雅人」
    お前が言うか!
    とにかく。
    うちの野良たちは、今日も、元気です。
   
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