異世界転生者は、花嫁の夢を見るか~僕が種付されそうです~

トモモト ヨシユキ

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16 死に逝く神と消えない思い

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   僕は、新崎に暗闇の中へと引きずり込まれた。
   真音を。
   この子だけは、逃がしたい。
   そう思ったが、その時間もなく、僕は、せめて、しっかりと真音を抱き締めて、固く目を閉じた。
   次に、目を開いたときには、僕は、全く見知らぬどこかにいた。
   そこは、森の中だった。
   周囲を巨大な木々に囲まれた鬱蒼とした森の中に、僕と、真音と、新崎は、いた。
   泣いている真音をあやしながら、回りを見渡している僕に新崎が言った。
   「ここは、誰も入れない。私の聖域内だ」
    「えっ・・」
    僕が、ぐずる真音を抱いているのを見て、新崎は、僕の手から真音を奪った。
  「何、するんだ!」
   「ここから、少し歩く。山道だから、この子は、私が抱いていく」
   真音は、見ず知らずの男に抱かれて、キョトンとしていたが、泣き止み、大人しくなった。僕が、真音を取り返そうとすると、新崎は、さっさと歩き出した。
   「ついて来い。この辺には、危険な獣がたくさんいる。日が暮れるまでに家へ辿り着きたい」
     歩を進めていく彼に、仕方なく、僕は、その後を追った。僕たちは、かなりの距離を歩き、日暮れ前に、小さな山小屋へと到着した。新崎は、その山小屋の扉を開けると中へと入っていった。真音を奪われている僕は、彼の後をついて小屋へと入った。
   小屋の中は、テーブルとイスが二脚、ベットが一つ。そして、薪ストーブが一つあるだけで、他には、何もなかった。部屋の中に入った僕にイスをすすめると、新崎は、僕に真音を返した。真音は、黙って僕にぎゅっとしがみついてきた。新崎は、僕たちに背を向けて、ストーブの火をおこした。
   「ここは、どこ?」
   僕は、ようやく、そう言った。新崎は、振り向くことなく、言った。
   「北半球にある小さな島、だ。誰も知るものもない、無人島だよ」
   「ぼ、僕たちを、元いた場所にかえして」
    新崎は、ケトルをストーブの上に置いてから、僕の方を向いた。
   「それは、できない」
       「どうして・・」
   「その子は、私の子か?」
    新崎にきかれて、僕は、びくっと体を強張らせた。新崎が言った。
   「希少種同士の子、か。この子も、希少種というわけだ」
   新崎は、そっと真音の肩まで伸びた髪に触れた。真音は、ぎゅっと僕にしがみついた。やめて、と言いかけて、僕は、言葉を飲んだ。新崎は、微笑みを浮かべて、優しい眼差しで真音を見つめていた。
   「これが、私の子」
   新崎がきいた。
   「名前は?」
   「・・真音。真実の真に、音と書いて、真音」
   僕が答えたのをきいて、新崎がふっと笑い声を漏らした。
   「私は、かつて、異世界で気の遠くなるような時間を生きたが、常に、一人だった。異世界の邪神として産まれた私は、唯一絶対の悪として、人々から憎まれていた。こんな風に、私の子を生んだ者は、お前が初めで最後だろう」
     「新崎さん・・」
   僕は、新崎の邪神としての生涯を思った。
  異世界グロウザーで、邪神として生きた彼の一生は、何千年の暗闇、何万年の孤独だったのだろうか。
   僕には、新崎がこの世界に呼ばれた理由が理解できてきた。
   滅び逝く寂しいこの世界が、最後の神として選んだ男。
   それが、新崎だった。
   そして、女神セナが征一郎たちを送り込んだ理由も。
   愛を知らない孤独な神には、この世界は、救えないのだ。
  この世界を救えるのは、人を愛する心を持った者だけだ。
  「新崎さん・・やっぱり、僕たちを、元の場所にかえしてもらうわけにはいかないかな」
   「田中  真弓」
   新崎が、僕の頬に手を伸ばして触れた。
   「お前は、不思議だ。私は、お前を利用してこの世界を救おうと思った。だが、できなかった。ただ、お前の肉体に、私は、溺れただけだ」
   「新崎、さん・・」
    「私の花嫁よ」
       新崎は、僕の前に立つと、来ていた上着を脱ぎ、シャツのボタンをはずして、上半身裸になった。僕は、服を脱いだ新崎の引き締まった肉体を見た。それは、僕が嫌というほど知っている体だった。新崎は、僕を見つめてうっすらと笑うと、僕に、その背を見せた。そこには、不気味な植物のようなものが取りついていた。
   「な、何?それは」
    僕は、動揺を隠せなかった。新崎は、脱いだシャツを羽織ながら、僕に言った。
   「これは、生命に寄生して咲く花、アンドロモア、だ。数ヵ月前に、お前の仲間たちと戦った時に、私の体に植え付けられたものだ」
   「征一郎たちが、これ、を?」
  僕は、以前理事長に植え付けられた触手の悪魔を思い出していた。
   新崎は、イスを引き寄せるとストーブの前に座って、ケトルの中のコーヒーをカップに入れて僕に渡すと、自分にも注いだ。僕たちは、黙って、コーヒーを飲んでいた。静寂が辺りを支配していた。
   「アンドロモアは、異世界グロウザーの魔界の花で、森に迷い込んだ生命体に寄生して咲く。宿主となった生命は、ゆっくりと植物と化していき、やがて、脳までも寄生され、ただの植物となりはてる。そして、そのまま、植物として生き続けることとなる」
   新崎が言った。
  「これに寄生されたことに気付いた時には、もう、体の深部にまで根をはられていた。取り除くことは、できなかった。もう、動くこともままならなくなりつつある。あと数週間で、私は、自我を失い、植物となる」
      僕は、新崎の話にショックを受けていた。
  征一郎たちが新崎にそんなことをしていたなんて、僕は、知らなかった。
   だが、世界神を生かしたまま、支配下におくには、これは、いい方法だったのかもしれない。
   でも。
   これでは、この世界は、救われない。
   ゆっくりと滅んでいくだけだ。
   女神セナが望んでいる結末は、こんな結末じゃない。
  「もう一度、背中を見せて」
   僕は、言った。
   「なんとか、その植物を取り除く方法を考えよう」
   「無駄だ」
   新崎は、言った。
   「この魔界の植物は、私の魂までも侵食している。もう、どうすることもできない。もはや、転生することも叶わない」
   「新崎さん・・」
    「ただ、完全に消滅するとわかったとき、私は、お前に会いたいと思った。なぜかは、わからないが、お前にもう一度、会いたいと思ってしまったんだ。まさか、お前が」
   新崎は、優しい笑みを浮かべていた。
  「この私の子を産んでいるとは、思いもしなかったが」
   僕は、黙り込んだ。
   この世界は、このままでは、新崎と共に死んでしまう。
   どうすれば、いいのだろうか。

        それから、数週間を僕と、真音と、新崎は、三人だけで過ごした。
  新崎は、僕たちをかえしてはくれなかったが、僕の嫌がることをすることもなかった。
   僕と真音と暮らす新崎は、穏やかで、いつも、満ち足りた笑顔を浮かべていた。
   真音は、最初から、新崎に心を許していたし、僕も、徐々に、新崎を受け入れていった。
   最後の一週間は、新崎は、ほとんど動くことができなくなっていた。僕は、寝たきりになった、新崎の世話をした。食事を与えて、排泄の面倒をみる僕に、新崎は、礼を言った。
   「ありがとう、真弓」
   僕は、この世界神である新崎をみすみす、殺してしまうことは、間違いだと思えてならなかった。
   新崎を救わなくては、この世界が救われることは、ないのだ。
    だけど、新崎の全身に根を張った寄生植物は、僕には、どうすることもできなかった。
   助けを呼ぶこともできない。
   僕は、なんとか、新崎を救う方法がないかと考えた。
  そんなある夜。
   僕は、夢を見た。
   女神セナの夢だった。
   美しい、黄金の神が僕の前に現れた。
   「もはや、トリストラムの肉体を救うことはできない。けれども、その魂を救うことは、まだ、可能です」
  セナは、僕に言った。
   「あなたの手で、トリストラムを抱き、魂までも深く、交わるのです。そうすれば、魂は、救われ、再び、転生を果たすでしょう」
    
        明け方、目覚めた時、僕の心は、決まっていた。
   新崎を抱く。
   彼の魂までも。
   深く、深く。
  僕は、真音が眠っているのを確かめると、そっと寝床を抜け出し新崎の眠っているベットへと歩み寄っていった。
   「新崎、さん・・」
   僕の呼びかけに新崎は、目を開いた。
   生きたまま寄生植物に喰らわれていくのは、堪えがたいほどの苦痛なのだと、新崎は、冗談めかして言ったことがあった。
   「苦しい?」
   「ああ」
    新崎が、答えた。
   「だが、それも、もう少しで終わる」
   僕は、黙って、着ていた服を脱いでいった。新崎は、僕をじっと見ていたが、何も言いはしなかった。全てを脱ぎ捨てて、裸で彼の前に立った僕を見て、新崎は、力なく微笑んだ。
   「ああ、お前は、やっぱり、美しい」
      僕は、彼の植物と化していく体を覆う毛布を剥ぐと、彼の足元にひざまづいて、彼の体を見た。彼の体は、もう、寄生植物の根に覆われて体温すらも感じられなかった。僕は、彼の両足の間に、体を入れると、彼に向かって言った。
   「これから、あなたを、抱くから」
   「真弓・・」
   「あなたに、拒否権は、ない」
   そういうと僕は、冷ややかな彼のものへと手を伸ばした。彼のものは、僕が擦ると少し硬度を持って、立ち上がってきた。僕は、彼のそこへと顔を埋めて、彼のものを口に含み、舐めしゃぶった。
   「ふっ・・」
    新崎が呼吸を乱すのがわかった。僕は、新崎の体を跨ぐと、屹立した新崎のものの上に自分の体を沈めていった。最後に新崎に抱かれてから、誰にも体を許してはいなかった僕にとって、新崎のものを迎え入れることは、かなり、きつかった。僕は、自分の指を舐めて湿らせると、自分自身の後孔に入れて、そこを拡げていった。
   「んっ・・あっ・・」
   指が2本入って、僕のそこが十分湿り気を帯びてきたのを確認すると、僕は、もう一度、新崎のそそり立ったものをそこに押しあて、体をゆっくりと下ろしていった。新崎のものは、徐々に僕の体の中へと収まっていった。ほぼ、全部が入った時、僕は、静かに吐息を漏らすと、完全に、新崎の上に腰を沈めて、彼のものを全部、中へと導いた。僕は、異物感に呻いた。そのとき、僕は、新崎と目があった。僕は新崎に言った。
    「動く、よ」
      「ああ・・」
    僕は、ゆっくりと新崎の上で腰を動かし始めた。上半身をのけ反らせて、僕は、彼のものを抽挿した。その深く、抉られている感覚に、僕は、自分のものが固くなるのを感じた。身動きをしない新崎の上で、僕は、激しく腰を揺らし、体をくねらせた。
   「あぁっ・・ふぁっ・・んっ・・」
   僕は、だんだん、上り詰めていった。ふと、新崎を見ると、新崎は、両目から涙を流しながら、僕の姿を見つめていた。僕は、なおも、腰を動かし続けた。僕たちは、同時に絶頂を迎えた。新崎は、僕の中へと精を吐き、僕は、新崎の腹へと迸りを散らせた。その瞬間、僕は、彼の魂を感じた。僕たちの魂が混じりあい融け合うのを感じて、僕は、喘いだ。彼の魂は、解き放たれ、この世界へと拡散していった。僕は、ぐったりと彼の体の上に倒れ込んだ。その僕の頬に、ふっと何かが触れた。耳元で、新崎が囁くのが聞こえた。
   「ありがとう」
   愛しているよ。
   私の。
   花嫁。
   優しい風が僕の中を吹き抜けていくのを感じながら、僕は、眠りに落ちていった。
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