婚約破棄から始まるとんでも異世界冒険譚~黒猫の騎士とポンコツ姫~

トモモト ヨシユキ

文字の大きさ
9 / 217
2 幼年期の終わる頃

2-1 蜜と木登り

しおりを挟む
                2ー1   蜜と木登り
 
     「待ってよ、メル!」
     アル兄は、もう肩で息をしながら懸命に俺の後についてきていた。俺は、アル兄を振り向いて言った。
     「もう少し、だよ!がんばって、アル兄」
     俺たちは、今、うちの村の近くの森にある1本のシギの巨木に登っていた。
     シギというのは、秋に白い花をつける常緑樹で、この世界では、よく建材に使われる木だ。
     シギの木は、わりと大きくなる木だったが、この木は、特に大きくて村のシンボルツリーのようなものだった。
     俺は、子供の頃から何度もこの木に登っていたが、アル兄は、いつもそんな俺のことを下から見守ってくれていた。
    そんなアル兄が、なぜ、今日は、俺と一緒に木登りをしているのかというと、それは、明日のパーティーのためだった。
     明日、クララ母様の誕生パーティーが開かれるのだが、俺は、そのときに母様のために美味しいケーキを作りたいと思ったのだ。
    クララ母様は、甘いものが大好きだった。
   だけど、この田舎では、お菓子など限られていた。
   かつて、王都で貴族につかえていたということが自慢の料理長のヒンデルさんは、時々、焼き菓子を作ってくれていたが、 彼が作る焼き菓子は、固くって甘ったるくって、あまり美味しくない。
    だから、俺は、クララ母様のために美味しいお菓子を作るつもりだった。
    といっても、この世界にないものをどうして俺が作れるのか?
    それは、俺のユニークスキルである空想辞典のおかげだった。
    俺は、辞典を持っていて、その辞典は、俺の空想するものについていろんなことを俺に教えてくれるのだ。
    例えば、クッキーのことを俺が思い浮かべたなら、この辞典は、その作り方やら、材料などを教えてくれるのだ。
    この辞典に従って、俺は、数日前からケーキの材料を集めていた。
    そして、最後の1つであるムートの蜜がこの木にあるのだった。
    この計画を話すと、アル兄は、一緒にムートの蜜をとりに行きたいといいだしたのだが、正直、アル兄には、厳しい話だった。
    なぜなら、アル兄は、木登りが苦手だったから。
    「アル兄は、木の下で待ってて。俺がとってくるから」
   俺は、そう言ったのだが、アル兄は、一緒に行くと言ってきかなかった。
   それで、今、彼は、青い顔をして必死に俺の後を追ってこのシギの木によじ登っているのだった。
    アル兄は、俺より4才年上の14才だったけど、背も低いし、剣でも魔法でも俺には及ばない。
    だが、勉強では、俺は、アル兄に敵わなかった。
    特に、商業や、政治についての勉強は、アル兄さんは、家庭教師のルイド先生にも負けていなかった。
    俺たちは、1年前に父様から金貨50枚を借りて、小さな商会を作った。
   これは、『アルとメル商会』と俺たちが名付けた、要するに会社のようなものだった。
    俺たちは、この会社で、いくつかの玩具を作って売り出した。
    それによって、俺たちは、商業ギルドからも認められる商人となっていた。
    俺がアイデアを思い付いたら、アル兄がそれを商品化して売り出す。
    俺たちは、最強のパートナーだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ
恋愛
 侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。  病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。  また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。 「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」  無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。  そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。  生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。  マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。 「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」  三度目の人生はどうなる⁈  まずはアンネマリー編から。 誤字脱字、お許しください。 素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?

mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。 乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか? 前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...