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第3章 ライバル宣言!

3ー11 ライバル

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 3ー11 ライバル

 騎士科の一年は、こうして始まった。
 この演習場での競争以来、セツ様がわたしをかばおうとすることはなくなった。
 他の生徒たちも、だ。
 わたしは、騎士科の一員として認められた。
 「悔しかったんだ」
 セツ様が後でわたしに話してくれた。
 「カイラが聖女様の騎士になったことが、私は信じられなかった。だから、カイラのことを私よりも劣っている、守らなくてはならない存在にしておきたかった」
 「セツ様・・」
 セツ様は、わたしを真ん前から見つめて話した。
 「聖女様が、アニノマス様が騎士を選ぶならそれは、きっと私だと信じていた

 「セツ様!」
 フレデリック様が呼び掛けたのにセツ様は、頷いた。
 「いいんだ、フレデリク。カイラには知っていてもらいたいんだ」
 それからセツ様は、わたしに彼の物語を話し始めた。
 「私は、この国の第2王子ということになっているが、本当は、違う。私は、現王アルカザロス王の実の子供ではない」
 わたしたちは、人払いの魔法をかけた学園の裏庭のベンチに座って話していた。
 フレデリク様は、不本意そうな顔をしているがセツ様は、わたしに全てを話したげな様子だ。
 わたしは、黙ってセツ様の話しに耳を傾けた。
 「私の父は、現王の王兄であるテオドールだ。そして、母は」
 セツ様が口を開いた。
 「聖女アニノマス様、だ」
 マジですか?
 いやいやいや!
 聖女様、どうみても子供いるとは思えないよ?
 わたしが驚いているのを見てセツ様がくすっと笑った。
 「私は、母によく似ていると言われているんだが」
 うん。 
 わたしは、こくこくと頷いた。
 確かに、二人は、よく似ていた。
 「かつて魔王と共に戦った母と父は、お互いに将来を誓い合っていた。だが、魔王との戦いで父は死んだ」
 残されたアニノマス様は、忘れ形見であるセツラウス様を産み落としたが、聖女の役割があるため手元において育てることは叶わなかった。
 そのため、セツ様は、叔父である現王の子として育てられたのだという。
 「だから、いつか、母の騎士となろうと思っていたのに、君に先を越されてしまったんだ」
 セツ様は、ははっと笑った。
 わたしは、セツ様を見つめた。
 「必ず、セツ様が納得できるような騎士になってみせます!」
 「ああ」
 セツ様がはにかむように微笑んだ。
 「私も、まだ完全に諦めたわけではないからな」
 わたしたちは、にっと笑いあった。
 
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