魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ

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12 夢の中で

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   俺には、家族がいない。
  子供の頃、事故で両親は、俺一人を残して死んでしまった。
   それは、俺がうんと幼かった頃のことで、俺には、両親の思い出は、ほどんどない。
   俺を育ててくれたのは、叔母夫婦だった。
   叔母は、母の妹で優しい人だった。
   けれど、叔母の夫である人は、俺を嫌っていた。
   疫病神
    彼は、俺のことをそう呼んでいた。
   だから、叔母は、俺が10才になった頃、俺と二人で家を出た。
   俺たちは、両親が俺に残してくれた家に移り住んだ。
   思い出すのは、いつも、雪の中、叔母と2人で歩いていた日のこと。
   寒くって。
   凍えそうな俺の手をひいてくれた叔母の背中。
   俺は、ただ、叔母の手の温もりだけを信じて歩き続けた。
   真っ白な世界の中を俺たちは、歩いていた。
   世界に2人きりだった日の記憶。
   あの温もりだけが。俺の宝物だった。
   叔母が亡くなったのは、それから5年後のことだった。
   叔母は、俺の手を握って言った。
  「ごめんね、ハジメ」
   なんで?
   俺は、涙が止まらなかった。
   なんで、俺を一人にするの?
   そうして、俺は、また、一人ぼっちになった。
   一人ぼっちになった俺を引き取ったのは、叔母の夫だった人だった。
   彼は、俺が一人残された家にやってきた。
   あのときの冷たい瞳を俺は、忘れられない。
   凍えるような瞳だった。
   それから、その人との暮らしが始まった。
   その人は、俺にできるだけかかわらないようにしていた。
   俺は、一人で生きるようになった。
   誰も、もう、信じてはいけない。
   みんな、俺を捨てていってしまうのだから。
   誰も、もう、愛してはいけない。
   みんな、俺を、一人にするのだから。
   俺は。
   一人だ。

   誰かの泣いてる声が聞こえる。
   声を殺して泣いている。
   静かに。
  俺は、耳をふさいだ。
   聞こえない。
  そんな声は、聞こえない。
   そうやって、俺は堪えてきたんだから。
   ふと、誰かが、俺の頭を、髪をそっと撫でるのを感じたような気がした。
    暖かな手。
   鳴き声は、いつの間にか聞こえなくなった。
   俺は、深い深い眠りへと落ちていった。

   「・・メ・・ハジメ」
    「ん・・」
    「起きて、ハジメ。朝だよ」
     俺に触れる暖かい手。
    俺は、ゆっくりと目を覚ましていく。
   「ハジメ、おはよう」
    銀色の髪に、薄い氷のようなブルーの瞳の人が、俺に優しく微笑みかけている。
   俺は、その人に思わず魅入っていた。 
  なんて美しい人なんだろう。
  でも。
  俺は、その人が誰なのか思い出すことができない。
   これは、誰?
   「ああ」
    その人は、ふんわりとした笑みを浮かべた。
   「僕のこと、忘れちゃったの?ハジメ」
   その人は、俺に優しく触れながら囁く。
   「僕は、シェイル。君の兄で、恋人だよ、ハジメ」
   俺の、兄?
   俺は、まだ目覚めきらない頭で考えていた。
   しかも、恋人?
   うん。
   俺は、目を閉じて思っていた。
   まったく思い出せない。
   俺は、何か、訳のわからない焦燥感に駆られて体を起こそうとした。
   俺、こんなことしてる場合じゃないような気がする。
   だけど。
   シェイルが俺を組敷いていて起き上がることができなかった。
   シェイルは、俺を見つめて言った。
   「君のしなきゃいけないことは、僕を愛すること。そして、僕に愛されることだけ、だ、ハジメ」
    「はい?」
     俺は、まったく体に力が入らないのを感じた。
    どうしちゃったの、俺?
   あっ!
   睫毛、長い。
   そう思ったときには、俺は、シェイルに口づけされていた。
   「んぅっ・・」
    シェイルの舌が俺の中へ入ってくる。
    俺は、抵抗することもできずに、ただ、貪られていた。
   「ふっ・・んっ・・」
     激しいシェイルの口づけに、俺は、頭が沸騰してくる。
   シェイルが満足して体を離すと、銀色に輝く糸が俺たちを繋ぐ。
   「愛しているよ、ハジメ」
    「あっ・・」
     俺は、シェイルの手で体を暴かれていく。
   俺は、なんとか体を隠そうと身を捩るが、無駄だった。
   シェイルは、一糸まとわぬ俺の姿に目を細めた。
   「きれいだ、ハジメ。君は、美しい」
    シェイルの声は、不思議に俺の体を蝕んでいく。
   俺の体は、甘く痺れて、シェイルに抗うことができない。
   俺は、呼吸を乱して、ただ、されるままになっていた。
   シェイルは、そんな俺を見下ろして、優しく微笑んだ。
   「愛しているよ、ハジメ。君は、僕だけのもの、だ」
    ああ。
   俺は、いつの間にか、シェイルの言葉に酔っていた。
   もう、ずっと前からこんな風に、シェイルに愛されていたような気がしていた。
   「シェイル・・」
    俺は、シェイルの首に腕を回した。
   「・・シェイル・・」
   「ハジメ」
    シェイルは、俺の下半身へと手を伸ばしてそこに触れてきた。
    「あっ!」
    俺は、そこをシェイルに弄られてびくんっと体を跳ねさせた。俺は、涙目でシェイルを見上げた。
    「こわい・・」
    「大丈夫、だよ、ハジメ」
    シェイルが俺の耳元で囁いた。
   「ちゃんと気持ちよくしてあげるからね」
    「んぅっ・・」
    俺は、シェイルの手で擦られて達してしまった。
   「ご、ごめん、シェイル」
    シェイルの手を汚してしまったことに、俺は、恥ずかしさと申し訳なさに全身がかぁっと熱くなっていた。
    シェイルは、俺の精で汚れた手をペロッと舐めた。
   「ハジメの、おいしいよ」
    羞恥に、俺は、もう、シェイルのことが見れなかった。
   シェイルは、そっと俺の両足を開かせると奥のすぼまりへと指を沿わせた。
    「あぁっ!」
     俺は、体を強張らせてシェイルの手から逃れようとした。
   しかし、シェイルは、俺の腰を掴んで俺の体を引き寄せ、離そうとしなかった。
   「言っただろう?ハジメ。君は、もう、僕のものだって」
   シェイルは、囁く。
   「もう、離さない、ハジメ」
    「シェイル・・」
   俺が、涙を浮かべた目でシェイルを見つめたとき、不意に、騒々しい足音が聞こえて、部屋の扉が破られた。
   「ちょっと待った!!」
    「ええっ?」
     俺は、そっちに目をやった。
   赤い髪に赤い瞳の褐色の肌の男が息を切らせて、叫んだ。
   「それは、俺のもの、だ!離れろ!シェイル」
    「なんで?」
    シェイルが驚愕の表情を浮かべた。
   「ここは、僕の結界の中。僕のダンジョンの中なのに、なんでお前たちが、ここにいるんだ?」
   「こんなこともあろうかと、ハジメには、常に、居場所を教えてくれる超小型のスライムを服に忍ばせてあったんです」
    長い黒髪に青い瞳の麗人が言って、部屋へと踏み込んでくると、何もない空間から巨大な剣を引き抜くとシェイルの首元へと切っ先を突きつけた。
     「はやく、ハジメから離れろ。さもないと、あなたは、ここで死ぬことになる」
    えっ?
    俺は、突然のことに、声も出なかった。
   この人たちは?
   シェイルは、ごくりと喉を上下させて、ゆっくりと両手を上げると言った。
   「わかった。降参、だ。イグドール、ヴィスコンティ」
   シェイルが俺から体を離すと、2人が俺に駆け寄ってきた。
   「大丈夫だったか?ハジメ」
    赤い髪の男が俺を覗き込んで言った。
   「安心しろ。例え、処女じゃなくなっても私の気持ちは変わらん」
   はい?
   俺は、ベッドに体を起こすと、体を隠した。
   こいつも、危ない奴?
   「ハジメ」
    黒髪の男が、俺に脱いだ上着をかけてくれた。
   「もう、大丈夫。安心してください」
    俺は、目をパチクリさせていた。
   何が、起こってるの?

    「つまり」
    風呂に入って、服を着替えた俺は、その場にいる人々に向かって言った。
   「ここは、飢渇の魔王  シェイルのダンジョンで、俺は、シェイルに拐われてたってこと?」
    「そういうことです」
    ヴィスコンティが申し訳なさそうに頷いた。
   「この私の目を盗んで、ハジメに手を出していたとは、許しがたいことです」
    「本当に」
    イグドールがシェイルを睨み付けた。
   「言った筈だ。ハジメは、私の嫁だと」
    「いや、まだ、決まった訳じゃないよね?」
   俺は言ったが、俺の言葉なんて誰も聞いてはいなかった。
   2人は、飢渇の魔王  シェイルに積めよって言った。
   「この責任は、どう取ってくれるんだ?シェイル」
    「ハジメを傷つける者は、誰であろうと私が許しません」
    シェイルが困惑した表情を浮かべて俺を見つめた。
   「なんとかしてよ、ハジメ」
    「知るかっつうの!反省しろ、お前は!」
    俺は、シェイルを罵倒した。
   シェイルは、半泣きで俺をすがるように見つめた。
   「僕、ただ、ハジメの願いを叶えてあげようと思っただけなんだよ」
   「ああ?」
    2人が声を会わせて言った。
   「どんな願いだよ!」
    「いや、ハジメは、愛に飢えてるみたいだったから、俺が満たしてあげようかな、ってさ」
    「余計なお世話だ」
    ヴィスコンティが言った。
   「やっぱり、お前は、ここで殺す!」
    「待て」
    ヴィスコンティをイグドールが止めると、悪い顔でにやっと笑った。
   「こいつには、これから俺の奴隷として働いてもらう」
   「ええっ!」
    シェイルが抗議の声をあげた。
   「そんな横暴な!」
    「黙れ!」
     イグドールが何やら魔導具を取り出してシェイルに襲いかかるのをよそに、ヴィスコンティが俺をそっと抱き上げて言った。
   「帰りましょうか、ハジメ」
    「うん」
    俺は、頷いた。
   「ヴィスコンティ、下ろしてよ。俺、歩けるし」
    「却下です」
    ヴィスコンティが有無を言わさずに俺を抱いて歩き出した。
   「こうしていないと、また、あなたは、どこかに行ってしまいそうで私が不安なのです」
   マジか。
   俺は、顔が熱くなるのを感じていた。
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